道路構造物ジャーナルNET

2023年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑨JFEエンジニアリング

リニューアル需要が増加 海外非ODA案件も視野に

JFEエンジニアリング株式会社
専務執行役員 社会インフラ本部長

三井田 洋介

公開日:2023.10.16

 当NETの姉妹メディアである「週刊鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。最終回は、JFEエンジニアリングの三井田洋介専務執行役員と、日立造船の鎌屋明執行役員の記事を掲載する。

 ――業界を取り巻く需要環境・業界の動向は
 三井田 22年度の国内新設鋼道路橋の発注量は約15万tとなった。23年度も前年度並みにとどまる可能性もあるとみている。ただ、更新事業は高速道路を中心にリニューアル需要が増加しており、今後も長期にわたって大規模、複合工種が高い水準で継続することが見込まれている。
 橋梁整備事業を円滑に進めていくためには、何よりも安定した発注量の確保が重要。安定的で平準化された発注があってこそ、企業として計画的に人材の採用や高度技術者の育成、製造設備の合理化などの投資が可能になると考えている。
 ――今期の状況は
 三井田 今年度の目標は、受注高約890億円で橋梁約780億円、その他約110億円。売上高は約780億円で橋梁約600億円、その他約180億円。
 今回、高速道路の有料期間を最長で2115年まで50年延長することを柱とした改正道路整備特別措置法が成立した。更新費用や4車線化に向けた財源が確保される見通しとなり、今後も大規模更新工事の継続した発注が見込まれる。また、阪神高速湾岸線西伸部を中心としたECI方式の大型プロジェクトにも期待を寄せている。
 上半期では、「東海環状自動車道 養老インターチェンジ本線橋他3橋(鋼上部工)工事」(NEXCO中日本)、「令和5年度 東海環状志津第1高架橋鋼上部工事」(中部地方整備局)、「令和5年度鹿児島港(鴨池中央港区)臨港道路橋梁上部工(P3‐P6)工事(九州地方整備局)などを受注した。
 ――海外事業については
 三井田 コロナ禍から脱却し、正常化しつつある。インドやバングラデシュの南アジアやアフリカなどの地域で旺盛な道路・鉄道交通網などの整備需要を精査しながら積極的に取り組んでいきたい。22年度は複数の大型案件の入札があったものの、23年度は一服感があり、まずは応札済案件の受注確保に努めていく。ミャンマーのJ&M社では、政変以降も駐在員や現地社員の安全に対して最大限配慮しつつ、事業を継続している。海外事業部で受注するODAの本邦技術活用案件や高難度案件の製作工場として貢献していく。
 一方、昨今のODA案件は入札から開札、また契約協議などに時間を要する。今後は市場規模が大きく、スピーディーな非ODA案件についても取り組んでいく。


高速貨物鉄道橋CTP3A(R)(インド)

 ――働き方改革について
 三井田 全社的にリモートワーク勤務制度やフレックスタイム制度、RPA、ペーパ-レス、決裁システムの簡易化等を展開している。橋梁現場でもこれらの制度・ツールの活用に加え、DXによる現場労働生産性向上、さらなる効率化を進めており、女性・外国人を含めた誰もが働きやすい職場づくりに取り組んでいる。さらに、現場の事務処理業務を本社などで代行する体制を構築し、現場技術者の業務量の低減を図っている。
 ――DXの推進について
 三井田 近年、生成AIを使ったさまざまなユースケースが生まれているが、特に技術伝承やナレッジマネジメントへの活用に注力していく。過去の橋梁工事で得られた膨大な技術情報をAIに学習させることで必要な情報へのアクセスが容易となり、若手エンジニアでもベテランの知識を自由自在に扱うことが期待される。なお、生成AIの利用基準やセキュリティーなどを整備の上、全社ですでに運用を開始している。


北陸自動車道(特定更新等)新手取川橋(上部工)工事(撮影:井手迫瑞樹)

 ――新技術開発について
 三井田 ステンレス鋼の橋梁への適用を進める。現在、NEXCO中日本で施工中の「北陸自動車道(特定更新等)新手取川橋(上部工)工事」では、建設から50年経過したコンクリート橋を、表面に耐海水性ステンレス鋼を使ったクラッド鋼橋梁に架け替える工事を行っている。これにより、塩害対策だけでなく、飛砂による摩耗劣化に対する耐久性も向上する。今後、同様の環境にある橋梁の更新工法の選択肢となるよう進めていきたい。
(聞き手・佐藤岳彦、文中敬称略)

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