道路構造物ジャーナルNET

2023年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑦高田機工

工程管理などでデジタル化推進 カーボン・ニュートラル対応へ

高田機工株式会社
代表取締役社長

中村 達郎

公開日:2023.10.09

 当NETの姉妹メディアである「週刊鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。4回目は、高田機工の中村達郎社長と、瀧上工業の瀧上晶義社長の記事を掲載する。

 ――2022年度業績は
 中村 昨年度の新設鋼橋の発注量は15万t台と、想定していた発注量より少なかった。こうしたなかではあったが、受注高は橋梁事業が178億円、鉄構事業が42億円で、橋梁事業、鉄構事業ともに前期を上回った。売上高も前期比2%増の159億円となったが、鋼材費の高止まり、電気料金や副資材コストの上昇、工期ずれに伴うコスト増などもあって、経常利益は前期を下回った。
 ――今年度の見通しは
 中村 橋梁事業においては、今年度は昨年度よりもやや低い水準となるのではないかと想定している。需要がないわけではないが、人手不足の影響などで発注に至るまでに時間がかかる見通しだ。このため、新設橋梁の受注とともに、保全事業に一層力を入れていきたい。
 鉄構事業においては、首都圏の大型再開発工事を中心とした建築需要が引き続き堅調であると見込んでいるが、来春以降、ドライバーの残業規制適用が本格化することによるコスト増加などを想定し、受注を進めていく必要があるだろう。
 ――今年度の重点目標と取り組みについて
 中村 「デジタル化の推進による生産性の向上」をはじめとする3つの重点目標を挙げている。
 デジタル化推進による生産性の向上では、橋梁の3Dモデルと工程表(バーチャート)をリンクさせた「4D工程管理システム」を導入、橋梁架設現場の工程管理に活用している。
 レーザースキャナで取り込んだ現場地形の点群データに橋梁の3Dモデルを合成し、実際の施工現場のイメージを作成。このデータに時間軸として工程情報をリンクさせ、手順やスケジュールなどの施工工程を管理するものだ。
 昨年同システムを採用した国土交通省東北地方整備局の国道4号箱堤高架橋上部工工事では、架設開始から完成までの施工状況をビジュアルで見やすくし、時間軸データとのリンクで進捗をすぐ把握できるようにした。
 また、MR(複合現実)技術で桁の送り出し作業、架設作業などの4Dアニメーションを現実の風景に投影することにより、図面ではわからなかった現地工事の問題点をシミュレーションで洗い出し、対策できるようになった。事前に対策を検討できるようになることで、現場負担を大きく削減できるうえ、思わぬトラブルによる工程遅延を防げるなど、コスト削減の効果も見込める。今後もデジタル化推進による生産性向上、効率化を進めたい。
 今年は第6次中期経営計画の最終年度であり、その目標達成を目指すとともに、第7次中期経営計画の策定に向けた検討も進めていく必要がある。
 橋梁・鉄構事業に続く新たな事業の柱を構築するべく、昨年には「デバイス推進室」を設置し、橋梁の高力ボルト腐食を抑えるボルトキャップ「SHELLPONS」(シェルポンズ)など、新製品の開発・販売事業を本格化している。
 今年はすでに開発済みの製品のリニューアルも含めて、各種デバイス製品の開発・販売事業の強化にも取り組みたい。


野洲川の橋梁

 ――設備投資について
 中村 昨年は全天候型塗装工場が完成し、品質と工程管理の精度向上が進んだ。今後は工場稼働以来、長期間使用している設備の更新を進めるとともに、カーボン・ニュートラルに向けた取り組みを本格化するため、和歌山工場に太陽光発電設備の導入を視野に入れている。
 具体的には事業継続計画(BCP)の一環として、屋根付きの駐車場を設置し、災害時の避難場所としたうえで、その屋根部分に太陽光発電パネルを設置することを検討中だ。発電した電力は事務所、工場内で活用する。今年度中に計画を固めていきたい。
(聞き手・八木香織、文中敬称略)

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