道路構造物ジャーナルNET

2023年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑤日本ファブテック

鉄骨は大型・高難度中心の展開に 年度後半から稼働率100%超

日本ファブテック株式会社
代表取締役社長

鎌倉 孝光

公開日:2023.10.02

 当NETの姉妹メディアである「週刊鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。3回目は、日本ファブテックの鎌倉孝光社長と、駒井ハルテックの中村貴任社長の記事を掲載する。

 ――前年度の業績は
 鎌倉 売上高356億円、経常利益17億4,000万円、受注高368億円だった。部門別の構成比率は、売上げが鉄骨と橋梁がほぼ半々、受注が鉄骨59%、橋梁41%となった。経常利益は前年比で約16%増加。現場都合で止まっていた土木工事が再開し、保管していた製品の出荷が進んだことなども増益に寄与した。なお、橋梁リニューアル部門は売上髙35億円に対し、受注は12億円にとどまった。これは長期にわたる工事に技術者を取られ、新たな工事を受注したくてもできない状況だったことなどが要因だ。
 ――工場の稼働状況は
 鎌倉 7~9月は山がやや低い状態が続いたが、今後持ち直して年度後半には稼働率が100%を超える見通しだ。来年度についても山はほぼ埋まっている。とくに鉄骨は大型再開発案件がいよいよ本格的に動き出し、Sグレードは各社とも繁忙期を迎える。そのため本来であれば先行製作などで山を崩して工場稼働の平準化を図りたいところだが、図面が決まってこないのでそれもままならない。
 ――23年度の業績目標は
 鎌倉 今年度の目標は売上高410億円、受注高390億円。部門別の重量ベースでは、売上げで鉄骨4万7,000t、橋梁1万2,000t、受注で鉄骨5万t、橋梁1万2,000tを目指す。鉄骨はわれわれSグレードファブしか対応できない大型・高難度物件を中心に受注活動を展開していく。予定されている案件が順調に発注されれば目標の達成は可能とみる。
 ――設備投資の状況は
 鎌倉 いざというときに物が造れないという事態に陥らないよう、適切な時期に適切な設備を導入・更新していくことが肝要だ。特に近年は各種加工機の納期が長期化していることもあり、計画に基づいた設備投資がより重要になる。近年の具体例を挙げると、防府工場の500t級プレス機を1,000t級にリプレースし、熊谷工場は新たなヤードを整備した。取手工場ではヤードの20~30t吊り門型クレーンを毎年1基ずつ更新している。今後については防府工場事務所棟の建て替えを計画中だ。
 ――材料、エネルギー等の価格上昇の対応策
 鎌倉 鋼材価格の上昇分はほぼ転嫁できた状況にあるが、労務費を含むその他の価格高騰分の転嫁がなかなか進まない。引き続き発注者に理解を求めていくほかないが、ゼネコン側も顧客の理解がなかなか得られないと聞く。見積もりの中でそれぞれの価格を細かく分けて積み上げるなど、ゼネコンが顧客に説明しやすい対応を取ることも考えていかなければならない。また、エネルギー価格の上昇に対しては再生可能エネルギー設備を自社で整備する向きがあるが、将来も見据えた当社の試算では費用対効果が見合わない。


西日本高速道路 城陽第三高架橋

 ――新技術の取り組みは
 鎌倉 技術で確立してきたのが、鋼構造物の部材接合や腐食・疲労損傷の当て板補強に適用可能な『高力スタッドボルト』。阪神高速でも採用されるなど、一定の評価を得ていると自負している。リニューアルを中心とした橋梁の受注機会につながることを期待している。また新商品ではないが、鉄骨梁貫通孔補強工法『EGリング』は改良を重ねており、その性能・利便性の周知を図っていく。
 ――今後の課題と戦略
 鎌倉 全社的な課題は人材の確保と技術の伝承に尽きる。現在の従業員数は約680人で、近年は新卒、中途を問わず採用人数を増やしているが、毎年ほぼ同数の離職者がでるので総数が一向に増えない。また技術は機械の導入など、お金でカバーできるところも一部あろうが、基本的には上の人たちから若い人たちへ時間をかけて伝承していくもの。その仕組みに対する理解をあらゆる年齢層の人たちに促し、課題解決につなげていく必要がある。
(聞き手・田中貴士、文中敬称略)

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム