道路構造物ジャーナルNET

2023年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ①巴コーポレーション

今年度から新五カ年計画をスタート 『要員確保』が最大の課題に

株式会社巴コーポレーション
代表取締役社長

深沢 隆

公開日:2023.09.18

 当NETの姉妹メディアである「週刊鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。1回目は、巴コーポレーションの深沢隆社長と、横河ブリッジの吉田昭仁社長の記事を掲載する。

 ――業績は
 深沢 昨年度は、売上高は360億円、営業利益は38億円(利益率10.5%)、増収増益となった。
 今年度は、昨年度のような大型案件の生産が見込めないこと、また本社移転費用が発生することから、売上高、営業利益ともに昨年度実績を若干下回るものと予想している。
 ――新中期経営計画は
 深沢 「看板である『技術立社』を更に昇華させる」のコンセプトの下、新五カ年計画『ビルトアップ5』をスタートさせた。事業領域における改善化、周辺事業領域の拡大、グループ会社保有資源の有効活用等、『攻めへの転換』を図り、利益率(目標10%)重視の基本方針は堅持しつつ、売上高400億円を目指す。
 ――現事業領域における体質改善強化策は
 深沢 工場生産設備増強に向けた大型投資、情報共有化を目的としたプラットホーム構築等の有効活用により、ややもすれば劣化傾向にある生産管理力、生産性の向上を図る。
 ――周辺事業領域拡大は
 深沢 鉄構においては、エンジニアリング事業の深耕を、総合建設においては電磁環境事業の深耕、M&Aを含めた新生産拠点の構築を、不動産においては、保有案件の高度利用を考えている。
 ――グループ会社保有資源の有効活用は
 深沢 グループ間で重複する事業の再構築、およびシェアードサービスの推進を図る。
 ――鉄構分野別の方針は
 深沢 一般鉄骨業界においては、相変わらずの図面の決まりの悪さに加えて人手不足が影響し、生産のピークがずれ込む傾向にある。当社においても、工程の遅れが生じ、計画通りの生産ができていない。この現状に加えて、働き方改革対応を重ね合わせると、一般鉄骨分野においては、無理ができないと考えている。
 当社の得意とする大空間構造、特殊鉄骨分野においては、新製品の市場投入等、積極的な営業展開を図っていく。
 新橋の発注量が少ない見通しとなっている橋梁分野においては、工事陣容の関係から保全への対応は抑え、あくまでも新橋で必要生産量の確保を図っていく。
 送電鉄塔分野においては、送電網強化、老朽化対応のトレンドから、一定量の新設、建て替え需要が見込めることから、設計、試験研究、環境調査等のエンジニアリング事業と併せ、堅実な事業展開を図っていく。


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 ――事業推進の課題は
 深沢 『要員確保』が最大課題と認識している。特に、当社の場合は地方に長期滞在することになる現場管理技術者の確保は、困難を極めている。
 また、鉄構においては、特に、客先と円滑な打合せができる生産設計技術者が不足している状況下、設計変更等で業務負荷が更に増す傾向にあり、要員確保は頭の痛い課題となっている。
 当社に限った話ではないが、昨今の若手は、お金より、休日が確保できるか、好きな仕事ができるかが企業選定の優先事項となっている。事業推進・継続を考えた場合、若手の求めている働き方やライフスタイルに合わせた事業環境作りが必要となる。
 当社としては、①都内に単身寮を購入②諸手当の拡充等、を進めている。さらには、今年度から③『人材開発』、特に人材確保に向けた強化策を打ち出しているが、残念ながら、思うような展開とはなっていない。
 ――企業経営課題は
 深沢 もちろん、必要利益の確保が最優先課題であるが、①人材開発に向けた社員待遇改善、②事業拡大に向けた投資、③大きな企業テーマとなっている株主還元(目標:DOE2%)のバランスを取ることが重要と考えている。課題山積と言えるが、真の意味での『エクセレント・カンパニー』を目指したい。
(聞き手・大熊稔、文中敬称略)

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