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WJの普及を図るべく独自の施工歩掛や施工計画書、ブレーカー斫りとの比較表などを確立

ウォータージェット・ファルヒ東日本施工協会 マイクロクラックの発生抑制に優れたコンクリート劣化部除去技術

ウォータージェット・ファルヒ東日本施工協会
事務局長

大河原 芳博

公開日:2023.06.20

 ウォータージェット・ファルヒ東日本施工協会は、ドイツ連邦共和国のWJメーカー『FALCH(ファルヒ)』のWJ施工機械を導入している施工業者が集まってできた会である。同会ではNEXCOだけでなく、国交省や自治体へのWJの普及を図るべく独自の施工歩掛や施工計画書、ブレーカー斫りとの比較表などを確立し、行政やコンサルタントに提供している。同協会の事務局長を務める大河原芳博氏(置賜建設(株)コンクリート診断室長兼営業部長)に話を聞いた。(井手迫瑞樹)

マイクロクラックの発生抑制が、早期におけるインフラ再劣化防止に寄与
 協会加盟会社は20社

 ――まず協会の成り立ちについて教えて下さい
 大河原事務局長 置賜建設は2003年に橋脚補強や床版下面補強を行う工法としてSto乾式吹付工法(乾式ポリマーセメントモルタルを高速、高圧で吹き付けて構造物を補修補強する工法)を導入しました。WJはその断面修復の前の表面処理工法として必須でした。その後橋脚の耐震補強巻き立て工事の発注で、既設橋脚の母材表面の処理を行うことになりますが、WJマシーンの圧力も上がりWJマシーンを保有している施工業者が少なく、WJ業者の都合で、工程が左右されていました。これでは工程管理にならないということで、自社でWJを自社購入することにしました。すると短期間の間にWJは表面処理だけでなく、脆弱部の斫り工法やアスベスト除去工法としても用いられるようになり、需要は増加していきました。しかし当社だけでは、管理できる機械にも限界があったため、交友のある業者さんにファルヒの機械の保有を働き掛け、幸いなことに購入する会社が増えていきました。


ファルヒ製WJ

 一方、高度成長期時に約100億m3のコンクリート構造物が造られた我が国では、現在多くの構造物に経年劣化が発現し全国各地で補修工事が行われています。一般的に劣化部除去にはコンクリートブレーカーによるはつりが施されてきましたが、マイクロクラックの発生による早期での再劣化が課題として顕在化しています。ウォータージェットによるコンクリート劣化部除去は、コンクリート母材に対してマイクロクラックの発生抑制に優れたコンクリート劣化部除去技術であります。このマイクロクラックの発生抑制が、早期におけるインフラ再劣化防止、コンクリート構造物の長寿命化等に資するものと期待されます。

 ドイツファルヒ社のウォータージェットマシーンは軽量化され施工性に優れた機械であります。さらに電子制御されているため緊急時の自動停止、事故防止等の安全機能が充実したコンパクトで機動性が高い機械です。また、半自動ロボット等のアクセサリーが数多く開発されており、多種多様なコンクリート劣化部の除去等に対応しています。このファルヒ社のウォータージェットマシーンが普及することにより、ライフサイクルコストの低減と劣化部撤去の施工品質の平準化が実現するものと考えています。


ハンドガンタイプと半自動タイプのWJ

 しかしながら、現在行われている公共工事に鑑みると、NEXCO東日本等の高速道路では、ウォータージェットはつりは100%採用されていますが、国土交通省では、橋梁上部工にのみ採用が始まったばかりであり、さらに他行政になると、ほぼ未採用の状況にあります。採用が進まない原因としては、施工経験の少なさ、高い施工費と価格が平準化されていないことが挙げられます。ウォータージェットはつりを普及させ、国民の貴重な資産であるインフラを長期にわたり供用させることは、建設産業界の使命であり責務と考えます。
こうした状況を踏まえ昨年4月に『ウォータージェット・ファルヒ東日本施工協会』を設立しました。現在、協会加盟会社は20社に至っています。現在のところメーカー国内代理店と施工業者です。

会員会社一覧

ハンドガンタイプと半自動タイプのWJを展開
 電子制御式に特徴 施工実績は300件を優に超える

 ――WJはどのようなタイプを保有しているのでしょうか。またファルヒのWJの特長はどのようなものでしょうか
 大河原 基本的にはハンドガンタイプ(最大水量毎分20l、最大水圧が250MPa)もしくは人に反動の無く施工数量の多い半自動タイプ(最大水量は毎分20~50l、250MPa)のWJ斫りおよび表面処理機械を用いています。また、30Mpa、50MpaマシーンによるWJサンドブラスト鉄筋錆落としを、錆を完全に除去するということで多くの依頼をいただいています。


ハンドガンタイプ

半自動タイプ

30Mpa、50MpaマシーンによるWJサンドブラスト鉄筋錆落とし

 ファルヒのハンドガンタイプのWJの特長は、電子制御であるという点です。国内では、WJは機械式が主流であり、ハンドガンタイプのWJを施工する際、トリガーの握りが重く、握力が必要で、水を出し続けるためにトリガーを固定していたこともあり、これが大きな事故につながっていたようです。ファルヒ社はパルス信号でありトリガーを軽く握るだけで噴射、停止が行えるため施工従事者の負担が少なく、安全性も大きく向上しています。また、ホースはメイン部材を硬質ゴム及びプラスチック及び金属で覆う2重構造となっています。上部構造のホース端部には小さな孔が設けられており、もし、下部のメインホースが損傷しても、その小径孔から水を出して圧力を抜くことで、ホースが暴れて生じる致命的な事故を防止できるようになっています。
 こうしたハンドガンタイプおよび半自動タイプにより、橋脚の下地処理や床版の脆弱部斫り、表面処理、最近では伸縮装置交換の際の現場打コンクリート部の斫りや表面処理、アスベスト除去、建築物塗膜除去などを行っています。ファルヒ社のWJによる建築、土木構造物への施工実績は優に300件を超えています。


防塵ボックスを用いて壁高欄外面や橋脚梁部をはつっている状況


床版上面のWJ施工状況

WJを用いた炭素繊維シートの除去(左、中左)/カルバートボックス下面のはつり状況


PC桁のはつり状況

既に基本歩掛(案)、施工計画書(案)は確立
 ㎥当たりの施工単価は300万円~

 ――協会のWJを普及するための活動はどのようなものを行っていますか
 大河原 ファルヒ社のウォータージェットマシーンを用いたはつり技術の向上やマシーンメンテナンス、ファルヒマシーンの性能規定を基準とした標準施工価格の確立を目指しています。とりわけ当協会が策定するまでは、WJに関しては定まった基本歩掛がない状態でした。当協会では、既に基本歩掛(案)、施工計画書(案)は確立しています。但し、基本歩掛は現場環境、WJを上面または下面どちらの側を施工するか、通常コンクリートか高強度コンクリートなのかなどを考慮し、都道府県の労務単価などを反映し、提案する必要があります。また、講演会への参加を行い詳細な内容を発表もしています。
 m3当たりの施工単価は300万円~ 程度を基本にしています。

安全マニュアルの策定も開始

 ――安全マニュアルの作成は
 大河原 安全マニュアルは今年度から策定作業を開始しました。先ほど申し上げた特徴から従来の機械式ハンドガンに比べて、安全性は高いと考えています。安全マニュアルは日本WJ施工協会が作成したものやドイツ連邦共和国の基準を参考にして、さらに国内ファルヒのWJに合わせたマニュアルにカスタマイズしたものを策定したいと考えています。

ファルヒのWJとStoの技術を用いてコンクリート構造物を長寿命化
 強度が低くてもむやみにはつらない『エンジニアリングジャッジ』も学ぶ

 ――新たな技術開発の方向性は
 大河原 今年度からドイツのファルヒ社は日本における販売体制を拡大するために、日本全国にサービスの充実を図っていきます。ドイツにおける技術開発がこれまで以上に波及できるようになるために、今までのファルヒジャパン株式会社もグーテックプロ株式会社と社名を変更してファルヒジャパンエリアの一員として活動して行きます。
また、NEXCO各社で用いられている大型の床版斫り機械の導入も行う可能性があります。
 また母材との付着性能を現在の付着強度試験以外の簡易な確認試験を作れないかと要望されており、そうした技術開発も進めていく方針です。
 当社(置賜建設(株))としても補修工事の確実性を求めるため新たにコンクリート試験室を設け、多くの非破壊試験器等を揃え、コンクリート劣化診断にも力を注ぎより品質の高い補修工事を目指しています。その中で、最新の調査では、既設構造物のコア37箇所から圧縮強度試験を実施しました。結果から、古いコンクリートは現場で練って打設していたため、強度には大きなばらつきがあることが再確認されました。一つの橋で14N/mm2の箇所もあれば70N/mm2のところがある構造物も実際に存在しています。しかし14N/mm2のコアを確認してみても、ひび割れや鉄筋腐食が生じているかといえば必ずしもそうではありません。そんな中、70N/mm2の部分と14N/mm2の部分の混在する箇所の脆弱部を除去するには、現在WJはつりが最適かと考えます。WJはブレーカーと異なりマイクロクラックを生じさせず、母材に悪影響を与えないという点でも非常に効果が高い工法ですから、低強度部の振動等による破損が避けられると考えます。反面、WJはつりは、同量を施工しようとすれば導入コストや施工コストは高くなりますが、強度が低くても50年以上損傷が起きてないのですから、そうした箇所はむやみに斫る必要はありません。当協会ではそうした斫る前の「エンジニアリングジャッジ」もできるようにしてければ最小数量で対応することが可能となり、健全部の残存とコストの低減も実現できるものと考えています。


コンクリート試験室と試験設備

撤去床版を用いた床版診断など様々な取組みも行っている/『エンジニアリングジャッジ』も学ぶ

 また、当協会の加盟各社は、Sto工法を扱っている会社が多く存在しています。同工法は乾式のPCMを高速高圧かつ高密度に吹き付ける工法であり、ノンプライマーでありながら非常に高い付着強度(4N:実績)を有しています。今まで20年の実績と追跡点検、調査を毎年行ってきており確信を持っています。ファルヒのWJの下地調整の確かさと共に、こうした優れた工法とカップリングすることで、コンクリート構造物の長寿命化と安全安心に寄与していきたいと考えています。

まずは東日本をベースに地歩を固める

 ――最後に協会の発展・拡大について
 大河原 より早く全国化するようなことは望ましいでしょうが、しっかりとした実績と品質の確認を行ったうえで、東日本をベースに地歩を固め確実なものを作り上げ、高品質なコンクリート補修に貢献したいと考えています。
 ――ありがとうございました

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