道路構造物ジャーナルNET

シールド発進・到達立坑の総打設量は約13,000㎥に達する

NEXCO西日本新名神大阪東事務所 枚方トンネルと淀川橋では周辺環境に配慮して事業を進める

西日本高速道路株式会社
関西支社
新名神大阪東事務所
所長

岩村 裕輔

公開日:2023.03.30

(都)山手幹線の下の躯体構築はボックス推進工法を採用
 水平部のパイプルーフは鋼管のなかに人が入って人力で掘削

 ――八幡京田辺JCT・ICからトンネル東側坑口までの掘割構造の施工状況は
 岩村 延長約1kmの掘割造成を美濃山中工事と美濃山西工事の2工事で行っています。坑口の東側約200mで都市計画道路山手幹線と交差しており、主に山手幹線の東側が美濃山中工事、西側が美濃山西工事の担当です。


枚方トンネル東側坑口までの掘割区間。掘割を横断しているのが(都)山手幹線

 ――掘割造成の進捗率は
 岩村 掘割部の施工は進めていますが、美濃山中工事では山手幹線の下をボックス推進工法で本線を通す計画となっていますので、その施工を先に行っています。推進ボックスは延長約56m、幅約49m、高さ約13mとなっています。


山手幹線下のボックス推進工の施工状況(左:八幡京田辺JCT・IC側/右:枚方トンネル側)

 ――具体的にどのような施工をしているのですか
 岩村 ボックス推進の準備段階として、山手幹線の沈下を抑えるための水平部のパイプルーフの施工が2022年の年末に完了しました。次に鉛直部のパイプルーフを施工し、八幡京田辺JCT・IC側(東側)でコンクリートの躯体を現場打ちにて構築し、枚方トンネル東側坑口方向へ移動させてボックスを完成させる予定です。
 パイプルーフとなる鋼管の直径はφ1mで、水平部では46本を施工しています。山手幹線の下には各種の重要インフラ設備が敷設されていますので、丁寧に掘削していかなければならず、鋼管のなかに人が入って人力で掘削しました。


パイプルーフとなる鋼管(左)/水平部のパイプルーフ施工(中央・右)

水平部のパイプルーフ施工では人力での掘削を行った

 ――人力での掘削は大変ですね。1日あたりどのくらい掘削したのですか
 岩村 1日に約3mです。3班体制で1カ月に6本(ダブル管×3セット)を施工しています。
 ――鋼管単体の長さと継手構造は
 岩村 6mの鋼管を現場溶接で接合しています。

発進・到達立坑の総打設量は約13,000m3に達する
 シールドマシンは断面17.6m、機長約14.2m、重量約4,200tで世界最大級

 ――美濃山西工事は
 岩村 枚方トンネルの掘進に必要となる発進・到達立坑の躯体構築を担当しており、コンクリート打設が2022年12月に完了したところです。躯体のサイズは高さ約27m×幅約48m×奥行約26mで、躯体構造物のコンクリート量は約13,000m3に達しています。
 3箇所の生コンプラントを使用して1日あたり約1,000m3の打設を月1回、合計13回実施しました。打設ボリュームが非常に大きいため、打設には丸1日を要しています。打設完了後は躯体構造物の背面を埋め戻し、トンネル工事に引き渡します。


枚方トンネル東坑口部 発進・到達立坑構築概要図と打設状況

 ――枚方トンネルの状況は
 岩村 セグメントや内部構造、換気所、排水・避難立坑、防災・非常用設備などの各種詳細設計を進めています。同時に、詳細な仕様を定めるために必要な試験なども行っています。
 トンネルの掘削工法は泥土圧シールド工法で、シールドマシンは断面17.6m、機長約14.2m、重量約4,200tで世界最大級のものとなり、川崎重工業播磨工場での製作です。
 発進・到達立坑引き渡し後に、シールドマシン組立て時から必要となる防音壁や坑外設備について準備をしていきます。道路、河川、公園などのトンネル交差施設の管理者と交差協議も実施しています。掘削工以外では、2021年7月から長尾換気所の施工に着手しています。

掘削土の塑性流動性確保のために添加材の綿密な配合試験を実施

 ――施工上の課題は
 岩村 東坑口である発進・到達立坑の周辺は、住宅が密集、近接しています。そのため、トンネル工事の影響を可能な限り生じさせないような対応が必要であると考えています。具体的には、工事範囲外周の防音壁やトンネル掘削の設備に対する防音ハウスの設置などです。また、土被りが最大でも35m程度と比較的浅いため、工事中の振動や騒音には細心の注意を払う必要があります。
 世界的にも大規模なシールドトンネルの掘削作業となりますので、シールドマシンのチャンバー内における掘削土の塑性流動性の確保が重要です。きめ細かな添加材の配合試験などを行い、現地地盤に合う添加材を選定していきます。その他、工事中の課題が生じないように、2021年12月に国から出された「シールドトンネル工事の安全・安心な施工に関するガイドライン」に基づいた検討も実施しています。
 ――掘削は上下線のどちらから
 岩村 上り線から掘削して、西坑口の回転立坑で回転して下り線を施工していく予定です。
 ――掘進スピードはどのくらいを予定していますか
 岩村 地質が大阪層群と呼ばれるもので、粘土層と砂礫層が互層になっています。そのため、断面の粘度が比較的高い箇所や低い箇所があり、塑性流動性を確保するために添加材を一様にするのではなくて、粘度に応じたきめ細やかな配合にしていきます。添加材を多く使用すれば排土量も多くなりますので、シールドマシンの能力というよりも排土対応がクリティカルになると考えています。
 ――具体的に掘削土はどのように搬出しますか
 岩村 東側坑口側の切土区間に仮置きヤードがあります。そこに一旦仮置きをして、ダンプで搬出していきます。
 ――シールドマシンの特徴は
 岩村 延長約3kmを掘進できるように地盤をふまえたビット配置としていますが、一部はシールドマシンの内側からビットの取替が可能な仕様としました。想定外のことが発生した時などに対応するためです。


シールドマシンの組立状況(左:カッター起立/右:カッター駆動部)

シールドマシンの組立状況(左:本体前胴/右:本体後胴)

 ――セグメントについては
 岩村 基本はRCセグメントで、換気所の接続部など断面が変化する箇所は鋼製セグメントとなります。また、上部の建物荷重などの現地条件に応じて、鋼殻でコンクリートを強化した合成セグメントを使用する予定です。
 ――騒音対策として防音ハウスを設置するとのことですが、その場所はどこになりますか。また、振動に対しては
 岩村 ベルトコンベヤー周辺や資材の積み替え場所、セグメント移動箇所などに設置します。振動はモニタリングを行いながら施工していきます。

掘割部の工事では仮桟橋を架設して施工スペースを確保
 枚方工事では下部工20基の構築も担当 橋脚13基が完成

 ――回転立坑の進捗状況は
 岩村 枚方工事として施工しています。同工事は、枚方トンネル西坑口から淀川東高架橋の京阪本線交差箇所までの担当です。その区間において、回転立坑、ボックスカルバート、換気所、U型擁壁、逆T式擁壁、下部工、調整池を構築する工事で、さまざまなコンクリート構造物を構築するのが特徴です。
 回転立坑とボックスカルバート区間のトンネル区間および U型擁壁の掘割区間は、地中連続壁工の施工が完了して、掘削を進めています。ただ、掘削するスペースが少ないため仮桟橋を架設して、その上から掘削作業を行っています。


枚方工事の全景

 ――掘削するスペースが少ないというのは
 岩村 掘割部は両側が住宅となっています。そのため、バックホウなどを設置するヤードが確保できず、掘削をしていくとともに、その部分に仮桟橋を架設して覆工板の上から施工する形にしています。


仮桟橋の架設状況と架設後

掘削作業

 掘割区間に続いて盛土区間があり、その先が高架構造となっているとのことですが、盛土区間の施工状況と枚方工事が下部工を担当している高架橋の概要について教えてください
 岩村 盛土区間は逆T式擁壁を施工していて、延長261mのうち約6割が完了しました。


逆T式擁壁の施工

 同工事で2橋の下部工を施工します。市道楠葉中宮線交差部から京阪本線の手前に利根川という川がありますが、その川を渡河したところまでが樟葉高架橋で、上り線橋長257.5m、下り線同262.5mのPRC8径間連続(箱桁+4主版桁)混合桁橋です。
 利根川から淀川河川内の管理用道路までが淀川東高架橋で、橋長459mの鋼4径間連続非合成鈑桁+鋼3径間連続非合成箱桁(混合桁橋)です。
 樟葉高架橋は橋台2基(上下線、以下同)と橋脚14基(P1~P7)、淀川東高架橋は京阪電気鉄道交差部までの橋脚4基(P1・P2)、合計で20基となります。
 ――下部工の進捗状況は
 岩村 樟葉高架橋は橋台(逆T式橋台、場所打ち杭)が施工中で、橋脚9基が完成、淀川東高架橋は橋脚全4基が完成しています。


樟葉高架橋の下部工施工状況

 なお、京阪本線交差部から西側の淀川東高架橋の上下線一体の橋脚6基(P3~P8)は、淀川東高架橋(下部工)工事として施工し、竣工済みとなっています。
 ――樟葉高架橋の上部工については
 岩村 詳細設計中で、2024年4月から現場着手を予定しています。架設は、固定式支保工を構築して行っていきます。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム