道路構造物ジャーナルNET

持続可能な橋梁の維持管理とは

2023新年インタビュー① 知見に基づいた絞込みが重要 西川和廣氏インタビュー

国立研究開発法人土木研究所
前 理事長

西川 和廣

公開日:2023.01.01

対象を絞り込むことによって維持管理の負担を軽減
 材料・設計・施工技術が改善された新しい橋の点検は簡略化が可能

 ――電磁波レーダーによるスクリーニングによる漏水の点検を推奨されていますね
 西川 人が足りなくなる現状では、5年に1度行っている定期点検のやり方も見直す必要があります。例を挙げると、何度も設計法が改訂されたRC床版、とくに平成以降のRC床版には疲労損傷は発生していないので、床版下面のひびわれの近傍目視は不要ではないか、むしろ損傷の主役は土砂化や塩害など上面から発生するので、電磁波レーダーによるスクリーニングで漏水の探査を義務付けたほうがいいと考えています。予防保全につながる近道だと思います。


様々な絞り込みによる負担軽減が必要

 ――今後の床版防水について
 西川 床版防水工の設置を提唱してから30年が経ちます。様々な技術開発がなされてきましたが、それでも信頼性についての課題が残るようです。個人的には、今後の床版防水は舗装の基層にその機能を持たせること、具体的には改質グースアスファルトを基層に用いることが主流になっていくと思います。それで損傷が出ないとわかれば、これも簡単な点検でOKとみなすことが出来るようになると思います。
 ――グース防水はクッカー車の導入が課題です
 西川 需要があれば、皆持つようになるのではないでしょうか。防水層施工の工程が省略できるので、舗装会社には好都合だと思うのですが。それよりも、基層としての改質グースアスファルトをいかに長く持たせることができるかの研究開発が求められると思います。
 ――経験を踏まえて設計法や使用材料が改善された新しいPC橋には、基本的には塩害は起きないし、起きても局部的でしかない。古い橋、対策が追い付いていない橋に、点検・診断の人的資源を振り分けるべきだという考えです
 西川 先日、私が酒田工事事務所の所長時代に架け替えに携わった暮坪陸橋の新橋を見に行ってきました。30年前の架替えではさまざまなことを提案しました。コンクリートを密にするW/C、テキスタイルフォームの試用やエポ鉄筋、塩ビ管のシース、塗装ケーブルなどです。残念なことに、コールドジョイントやジャンカなど、コンクリートの施工は芳しくなかったようなのですが。25年経過した現在でも、橋としての性能は問題なく保たれています。旧暮坪陸橋は10年ほどで塩害が顕在化し、26年で架替えの判断を行ったのですが、新橋では複数の対策がフェイルセーフになっているようです。90年代以降のポステンPC橋の大半は、そのような形になっているので、塩害は発生するはずがないし、発生したとしても局部的のはずです。むしろプレテンや下部構造のほうが心配なくらいです。
 このように設計、施工、使用材料の進歩や点検を通じた知見などにより、近接で細かく見なければならない橋が絞り込めます。それ以外は、性能が格段に向上したドローンを活用して、比較的大きな異常だけを確認する形がとれると考えています。


暮坪橋(新橋)と暮坪陸橋(旧橋)

暮坪陸橋の損傷状況

 ――全体的なケースではそのとおりだと思いますが、レアケースがあるからできないという意見もあります
 西川 レアケースと頻度の高い損傷を同じ注意力で見ないとならないのですか?その結果担い手不足で手が回らなくなり、予防保全ができずに日本中の橋がすべて手遅れになったら、どうしますか? どんなことにも、レアケースはあります。だから、5年に1度、点検するのです。だから、それを見逃さなければ事故が起きない程度の点検でいいと思います。レアケースという言葉で思考停止するのは、むしろ責任回避です。
 ――ありがとうございました

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