道路構造物ジャーナルNET

「重点化」、「効率化」、「連携・協働」を推進姿勢として道路整備進める

愛媛県「3つのミッシングリンク」の早期解消が最重要施策

愛媛県土木部
道路都市局
道路建設課長

曽我部 知正

公開日:2022.12.19

八幡浜道路 郷高架橋(仮称)が終盤、今年度の供用目指す
 郷高架橋(仮称) 施工難易度高し、耐候性鋼材を採用

 ――進捗中の新設各事業中路線の目的と概要、現況を教えてください
 曽我部 県の最重要施策に掲げ、県が事業主体となって整備を進めている一般国道197号大洲・八幡浜自動車道については、大洲市北只~八幡浜市保内町喜木に至る延長約14kmの地域高規格道路で、名坂道路、八幡浜道路、夜昼道路、大洲西道路の4つの工区から構成されています。
 当道路は、四国縦貫・横断自動車道に直結し、フェリー航路を介して四国経由で本州と九州を結ぶ「新たな国土軸」の一翼を担うとともに、地域産業の活性化、観光振興などを支援する「地方創生の道」であるほか、南海トラフ地震などの大規模災害発生時の緊急輸送や万が一の原発事故発生時の広域避難・救援の軸となる県民の安全・安心を確保する「命の道」となります。
 まず、名坂道路ですが、1997年度に最初の工区として事業化し、2013年3月17日に開通しました。
 次に、八幡浜道路は、05年に事業化し、これまでに千丈・松柏の2つのトンネル工事や八幡浜IC部の橋梁工事を終え、現在、八幡浜東ICで郷高架橋(仮称)の橋面工事や国道197号の現道へ接続する道路の工事を、八幡浜ICで安全施設や舗装工事を行っているなど、今年度末の開通を目指し、整備を進めています。


千丈トンネル(左、中左、いずれも井手迫瑞樹撮影)、施工時の松柏トンネル(中右、右)

郷高架橋(仮称)P1橋脚施工時の写真

郷高架橋(仮称)上部工架設時写真(井手迫瑞樹撮影)

郷高架橋(仮称)(橋面(鋼床版)から大洲市側を望む)

八幡浜東IC

八幡浜IC八幡浜道路オンランプ舗装状況

 続く夜昼道路は、13年度に事業化し、現在、大洲平野と八幡浜東の両IC周辺から切土・法面工事や橋梁下部工事を進めています。
 最後の区間となる大洲西道路は、17年度に事業化し、現在、地質調査や構造物設計、用地買収に向けた測量を行っています。

 ――大洲・八幡浜自動車道の構造物比率は
 曽我部 名坂道路は延長2.3kmのうち、トンネルが1,865mと約81%、橋梁は430mと約19%を占めます。
 八幡浜道路は、延長3.8kmのうち、トンネルが2,899mと約76%を占めます。橋梁は404mと約11%となっています。
 夜昼道路は、延長4.2kmのうち、トンネルが2,690mと約64%を占め、橋梁は248mと約6%です。
 大洲西道路については現在設計中です。

 ――施工中の橋梁上部工工事は
 曽我部 八幡浜東ICにおいて郷高架橋(仮称)の上部工が施工中で、今年の10月に橋桁の架設を終え、現在、橋面工事を進めています。同橋は橋長200mの2径間連続鋼床版箱桁橋で、A1~P1(支間長135.5m)はJR予讃線を跨ぐことから架設をJR四国に委託し、P1~A2(支間長62.5m)の架設と橋面工を県が施工しています。鋼材は耐候性鋼材を使用しています。

夜昼道路 新千丈川橋(仮称)と新夜昼トンネルなど構造物多し
 国道440号 久万高原町で小村トンネル(仮称)を建設予定

 ――来年度以降着工を予定している橋梁上部工は
 曽我部 夜昼道路において、来年度、新千丈川橋(仮称)と大洲平野ICのONランプ橋の上部工工事の着手を目指しています。
 新千丈川橋(仮称)は橋長150.5mの鋼3径間連続鈑桁橋で、現在、下部工を施工中です。
大洲平野ICのONランプ橋は橋長167mの鋼4径間連続少数鈑桁橋で、こちらも下部工を施工中です。


新千丈川橋(仮称)下部工

 ――設計中、設計済みおよび今後建設予定の橋梁・高架橋・トンネルは
 曽我部 夜昼道路において、他に橋長97mで形式が鋼2径間連続非合成少数鈑桁橋の夜昼橋と、延長2,960mの新夜昼トンネルを計画しておりますが、現在は未着手です。
 ――松山外環状道路については
 曽我部 空港に向かう道路としては、新松山空港線と旧空港通りがありますが、現在は旧空港通りと外環状道路がタッチする箇所について国が高架橋、県が側道の建設を進めています。
 ――国道440号の小村トンネル(仮称)については
 曽我部 国道440号については、国土交通省が久万高原町と高知県梼原町の地芳峠に地芳トンネルを建設し、両県境の道路環境を向上させました。
 本県では、その愛媛県側手前において本路線に残る唯一の未改良箇所に、延長422mの小村トンネル(仮称)を建設する予定で、現在工事の発注準備を進めています。この小村トンネル(仮称)は、区間の一部に破砕帯の存在が想定されており、地山の安定に十分な配慮をした施工が必要となります。
 ――山鳥坂ダム建設に伴う付替道路については
 曽我部 一部県が担当しており、県道小田河辺大洲線の新鹿野川橋の建設を進めています。橋長は90mでA1-P1間が桁長15.5mの単純プレテンホロー桁、P1-A2間が桁長74.3mの2径間連結PCコンポ橋を採用しています。現在、下部工や上部工架設も完了しており、今後は、残る舗装工等に着手する予定です。


新鹿野川橋橋梁一般図

新鹿野川橋は上部工まで終え、舗装工の段階

 ――JR松山駅連続立体交差事業の事業延長、完了延長、進捗等について教えてください
 曽我部 同事業は、JR松山駅付近の道路と鉄道を連続的に立体交差化し、今まで鉄道により分断されていた東西市街地の分断を解消し、円滑な交通や安全性を確保するための事業です。高架区間延長は約2.4kmで、進捗率は約79%(令和2年度末時点)に達しています。

岩城橋 Al-Mg合金溶射、FRP製点検設備など塩害環境に配慮
 コンクリート部材ではエポキシ樹脂塗装鉄筋採用

 ――特徴ある形式あるいは工法を適用した橋梁についてお答えください
 曽我部 塩害対策や維持管理に特に配慮した橋梁としては、2022年3月に完成供用した岩城橋(越智郡上島町)があります。同橋は岩城島と生名島をつなぐ海峡架橋であり、橋長916m、海峡部は中央支間長475mの5径間連続鋼・コンクリート混合斜張橋です。海峡部という厳しい塩害環境に位置するため、鋼桁外面の防錆、防食には、Al-Mg合金溶射を、屋外点検設備には鋼製でなくFRP製を採用することで、耐久性の向上と塗装補修頻度の低減によるLCCの最適化を図りました。


下部工には塩害対策のためエポキシ樹脂塗装鉄筋を採用している(井手迫瑞樹撮影)


架設時の岩城橋

供用された岩城橋(大柴功治撮影)

 コンクリート部材では、塩害対策として海岸線からの距離に応じて、エポキシ樹脂塗装鉄筋を使用しています。加えて、維持管理性の向上のため、橋桁や主塔内部の空間を十分確保し、点検・補修が容易な構造としています。

 ――ありがとうございました

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