道路構造物ジャーナルNET

「重点化」、「効率化」、「連携・協働」を推進姿勢として道路整備進める

愛媛県「3つのミッシングリンク」の早期解消が最重要施策

愛媛県土木部
道路都市局
道路建設課長

曽我部 知正

公開日:2022.12.19

 愛媛県は東西に160kmと長い県土を有しており、松山地区などを中心とする平野は僅かで、約7割は林野が占めている。また、離島も多く、本四架橋を中心に離島同士の交通を円滑化するため、県独自でも離島架橋を進めており、ごく最近では岩城島と生名島を結ぶ岩城橋が供用された。一方で、県内では西南部の宇和島、八幡浜などで未だ高速道路のミッシングリンクを有しており、とりわけ八幡浜地域は現行の高速道路計画が完成しても、高速道路ネットワークに直結していないため、県独自の地域高規格道路として、八幡浜地域と高速道路ネットワークを結ぶ大洲・八幡浜自動車道の建設が進められている。その他、肱川の氾濫からの復興を果たした大成橋や、肱川の河川改修計画に伴う架け替えの話題なども含め、同県土木部道路都市局道路建設課の曽我部知正課長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

地質 3本の構造線により4地区に区分され、5つの地質帯で構成
 風化剥離性の高い脆弱な地質、台風や豪雨などによる災害を受けやすい

 ――県内の地勢的特徴と道路網の現状について
 曽我部 本県は、東西約160kmと細長い地形で構成されており、総面積は5,676km2で、全国26位の広さを有し、県土の約70%が林野となっています。
 県土の長軸方向をほぼ平行に縦走する中央構造線を境に北側はなだらかで沿岸部には平野が多く、南側は西日本一の高さを誇る石鎚山(1,982m)や雄大な四国カルストなど急峻な四国山地が連なり、山地や盆地の多い地形となっています。
 多くの離島があることも特徴として挙げられます。本県には、離島振興法に基づいて、指定を受けた離島振興対策実施地域が9地域(うち31の有人島)あります。
 地質は、中央構造線をはじめ、3本の構造線により4地区に区分され、5つの地質帯で構成されています。いずれも風化剥離性の高い脆弱な地質であり、台風や豪雨などによる災害を受けやすくなっています。
 気候については、瀬戸内海沿岸部は季節風の影響で年間を通じて降水量が少なく、比較的温暖な瀬戸内海型気候となっています。一方、南西部の宇和海沿岸部や山間部は、降水量も比較的多い地域となっています。
 県内の道路整備の状況についてみると、国・県道の道路改良率は、2020年4月1日現在で75.6%と全国水準(85.5%)を大きく下回っています(全国41位)。
 このような中、本県では、道路の整備方針を示した「愛媛道ビジョン2016」において、「愛媛の道をつくる・まもる・つかう」という視点の下、限られた予算で最大限の効果を発揮するため「重点化」、「効率化」、「連携・協働」を推進姿勢として道路整備を進めています。
 特に南海トラフ地震などの大規模災害に備える「防災・減災」、交流人口の拡大や産業振興などの「地方創生」に加え、ポストコロナの「新しい日常」への対応などの観点から、「3つのミッシングリンク」(四国8の字ネットワーク、今治小松自動車道、大洲・八幡浜自動車道の整備)の早期解消を最重要施策として、取り組んでいるところです。
 また、老朽化が急激に進行している橋梁などの予防保全による長寿命化に積極的に取り組んでいるほか、ナショナルサイクルルートに指定された「しまなみ海道サイクリングロード」を中心に「サイクリングパラダイス愛媛」の実現に向け、自転車走行環境の整備にも取り組んでいます。

平成30年7月豪雨 県下1,164箇所が被災し、現在99.8%の復旧状況
 6月に新しい大成橋が開通

 ――西日本豪雨における道路や河川などへの被災とその復興について
 曽我部 平成30年7月豪雨により、西日本を中心に広範囲で記録的な大雨が観測されました。本県においても、河川の増水やがけ崩れなどに伴い、南予地域や東予地域の島嶼部などを中心に、県管理施設の道路や河川などで路肩や法面が崩壊するなどの被害が発生しました。
 県の公共土木施設災害においては、県下1,164箇所が被災し、現在99.8%の復旧状況です。
 特に甚大な被害となった一級河川肱川では、被災した橋梁の復旧のほか、激特事業により計画を10年前倒した河川堤防の整備や、市のまちづくりと一体となった河川改修など、再度災害防止対策に国県市が一体となって取り組んでいます。
 県管理道路では18市町86路線で、橋梁2箇所を含む224箇所が被災しましたが、2022年4月1日までに全て復旧工事が完了し、総工事費は約44億円となりました。
 ――橋梁災害で被害が大きかった大成橋について
 曽我部 被災した大成橋(橋長117.7m、3径間連続非合成鈑桁橋)は、肱川に架かる大洲市管理の橋梁であり、地域住民の日常生活に欠かせない重要な橋梁でしたが、肱川の急激な水位上昇により、橋脚2基が根元付近で折れて倒壊するとともに、全ての橋桁が流失する被害を受けました。同橋の復旧に当たっては、早期復旧を目指し、県が大洲市から委託を受けて災害復旧事業を実施し、2022年6月に復旧工事が完了し、新しい大成橋(橋長198.7m、鋼4径間連続非合成鈑桁橋)が開通を迎えました。


架設中の大成橋(愛媛県提供、以下注釈なきは同)

供用された大成橋 洪水時に被災しないよう旧橋より桁下のクリアランスを高くし、
橋台は河川流下断面外の堤内側に設置、橋脚は直接基礎から場所打ち杭に変更

 ――特に水害に強くするため施した工夫などはありますか
 曽我部 新たな大成橋は、洪水時に被災しないよう旧橋より桁下のクリアランスを高くしています。また、橋台は河川流下断面外の堤内側に設置するとともに、橋脚は直接基礎から場所打ち杭に変更し、根入れも深くするなど洗堀対策に努めています。
 ――肱川の他の橋梁で被災はありませんでしたか
 曽我部 南予地域では多くの河川で被害が広がりましたが、橋梁の大きな被害は大成橋の1橋のみでした。
 なお、肱川の河川改修の影響を受ける橋梁については、現在、架け替え工事等に取り組んでいるところです。

国道441号野村大橋 2径間連結ポステンコンポ橋に架け替え
 逆なげ橋は橋長200m、父橋は橋長133mの鈑桁を採用

 ――具体的には
 曽我部 県管理で2橋(逆なげ橋、野村大橋)、大洲市管理で1橋(父橋)、西予市管理で1橋(石久保橋)の計4橋が該当します。管理者は県・市に分かれますが、市管理の2橋については実際の事業実施を県が担います。

 県管理橋梁のうち、県道菅田五郎停車場線の逆なげ橋は、橋長200.2mの鋼5径間連続非合成鈑桁橋に架け替えを進めており、現在、下部工が全て完了し、上部工の架設作業に着手しています。


逆なげ橋橋梁一般図

上部工架設中の逆なげ橋(左は2022年4月、右は同11月撮影)

 国道441号の野村大橋は、橋長66mのポストテンション方式2径間連結コンポ橋に架け替えることとし、現在、用地買収等に取り組んでいるところです。


野村大橋橋梁一般図

 大洲市から県が架け替えを受託している父橋は、橋長133mの鋼3径間連続合成少数鈑桁橋で、床版は合成床版を用いる予定です。現在は、下部工(橋台、橋脚)を施工中です。下部工の形式は逆T式橋台と壁式橋脚とし、河川内の橋脚基礎は場所打ち杭を採用しています。


父橋橋梁一般図と下部工施工状況

 また、西予市が管理している石久保橋は、現在、設計業務を進めています。

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