道路構造物ジャーナルNET

2022年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑦宮地エンジニアリンググループ

経営資源の選択と集中による事業拡大へのポートフォリオ確立

宮地エンジニアリンググループ株式会社
代表取締役社長

青田 重利

公開日:2022.10.17

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。4回目は、宮地エンジニアリンググループの青田重利社長と駒井ハルテックの中村貴任社長の記事を掲載する。

 ――業界を取り巻く環境・現状について
 青田 ロシアによるウクライナ侵攻を契機としたエネルギーや資材の高騰は建設市場を直撃している。政府はスライド適用による設計変更の適正化を指導しているが、上昇のスピードに設計変更が追い付かず、資材高騰分をすべて吸収できずに確実に経営を圧迫する危惧を抱えている。
 鋼橋市場は国土交通省の新設橋梁が漸減傾向にあるため、受注競争は熾烈を極めている。一方、NEXCO東・中・西、首都高速、阪神高速の高速道路会社では5兆円を超える大規模更新工事が順調に発注されており、経営資源の質と量を求められる市場に積極的に投入している。
 夢のあるビッグプロジェクト「大阪湾岸線の世界的な斜張橋」は多少発注が遅れているようだが、宮地グループの施工技術を活かせるECI方式での早期発注を期待している。さらに、下関北九州道路で計画されている吊り橋は経済効果のほかに、技術継承の重要なプロジェクトと考え、期待している。
 ――今年度の需要環境見通しは
 青田 今年度の国交省の新設橋梁の発注量は7万t程度と昨年度より1万t以上減ると予測。阪神高速関連の大阪湾岸線西伸部など世界的斜張橋を含むビッグプロジェクトを除く発注量は20万t弱の昨年度並みと見込んでいる。大規模更新工事はここ2年間、順調に発注されている。
 ――設備投資計画は
 青田 「新中期経営計画」が今年度を初年度とした5カ年がスタートした。経営計画では5年間で合計180億~200億円の投資により、働き方改革、人材投資、巨大地震への備えとして60億円。そして設備投資関係では工場と機材センターにおいて「生産能力の効率化・適正化」を目指す投資として90億円。「事業ポートフォリオの拡大・適正化」と「総合エンジニアリングの機能強化」を目指し、新規事業開発、技術開発、M&Aへ取り組む投資として30億~50億円を予定している。今年度では大型クレーン、新型ブラスト設備、機材センターのリニューアル工事に取り組む。
 ――DXへの取り組みについては
 青田 DXの一環として、JIPテクノサイエンスと共同開発した「鋼橋出来形管理システム」を九州地方整備局の工事で採用、計測から帳票作成までの自動化を実現した。
 さらに、通常のドローンでは計測が困難な橋梁の桁間の狭あい部を360度の全方向カメラとAI解析でGPSを使用せずに調査できるドローンを適用するなど、DXの導入に積極的に取り組んでいる。


高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事

 ――原材料・副資材やエネルギー価格上昇に対する対応策は
 青田 昨年も価格上昇の影響を検討したが、今年度も収支への影響をすべての工事で検討している。スライド適用による回収も検討しているが、上昇分を完全に回収するには多くのハードルがあり難しい。
 固定費の削減策としては、社員一人ひとりの業務改善で残業を30%減らす活動を進めており、一定の成果を確認している。そのほか、出張・外出・面談のミニマム化や会議、打ち合わせでのTV会議、ウェブ会議、リモート検査など、関係先の了解を得ながら積極的に推進している。
 ――新分野・新技術開発などについては
 青田 新中期経営計画では、グループとして「大規模更新工事」への戦略的取り組みを議論し、計画に織り込んだ。今後10年間はこの分野を成長戦略の1つと考えている。
 新技術開発では、トルシア型高力ボルトのチップの削減とチップ切断面のサンダー(グラインダー)仕上げ作業を省略する「環境配慮型の高力ボルト」や「FRP防音壁」などを開発した。また、沿岸構造物の事業ではケーソンの建造工程の効率化を図る特許を取得した。
 ――最後に
 青田 東証プライム市場上場と21年度に続き22年度も「JPX200社」に選定され、機関投資家をはじめ多くの方から注目されるようになった。当社のガバナンスをさらに強化し、事業会社のコラボレーションによるシナジーの創出を加速化するとともに、協力業者と「共に歩み、共に成長する」をコンセプトとして、1000億円企業を目指していく。
(聞き手・佐藤岳彦、文中敬称略)

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