道路構造物ジャーナルNET

橋梁、トンネルの更新だけでなく、耐震や巨大岩塊の除去も担う

NEXCO東日本長野工事 上信越・長野道のリニューアル専門事務所

東日本高速道路株式会社
関東支社
長野工事事務所
所長

小暮 英雄 氏

公開日:2022.10.06

まず、一本松トンネルと高岩山トンネルで一部箇所にインバートを設置
 盤膨れが生じている個所およびそれと同一土質箇所を優先施工

 ――トンネルのインバート設置工事について進捗状況は
 小暮 上信越道や長野道はフォッサマグナ地帯を通過していることから、泥岩や凝灰岩が卓越しています。湧水がない時は非常に安定した切羽ですが、1990年代ぐらいから水を含むと膨張劣化する地質であることが分かってきました。当管内でもいくつかのトンネルで延長4kmぐらいの盤膨れが発生しています。現在は、盤膨れの影響が大きく、路面の隆起が発生している一本松トンネルと高岩山トンネルについて一部の箇所にインバートを設置する工事を進めています。


電気ケーブルなどを上面に移設し、施工を進めている/飛散防止ネットで囲いながらはつる(両写真とも井手迫瑞樹撮影)

 インバート設置を行う優先対象は、まずインバートがなく盤膨れが起こっている個所と、盤膨れは現状では起こっていないが、起こっている個所と同一土質の個所です。その方針に従うと、一本松トンネルはほぼ全区間で行うことになります。劣化が予測される土質は凝灰岩や泥岩ですので、同一土質は対策予定です。差し当って隆起が現に生じている個所を先行して直していこうと考えおり、インバート設置を進めています。
 高岩山トンネルは一本松トンネルと比べると対象は限定されており、トンネル全体の約半分が対象となっています。同トンネルも現に隆起が起きている個所について、先行してインバート設置工を進めています。


高岩山トンネルの施工状況

インバート設置 交通に配慮して半割施工で実施
 それでも車線にかなり近接して施工せざるを得ない

 ――施工にあたっての留意点は
 小暮 同箇所は交通量が3万台ほどあって、この工事は非常に時間がかかります。ケーブル類を移動させたり、円形の排水路や監視員通路、舗装などを撤去してインバートを構築するわけですが、通行止めは最小にしたいため、一車線規制にて半割施工にするしかありません。


工事範囲(一本松トンネル)

 一般的にはインバートの作り方は、暫定2車線のところは暫定2車線側の工事を先行してできた後に、もう逆側を施工する手順を採ります。完成4車線で供用されている区間ですので、対面通行が出来ればいいのですが、非常駐車帯もなく、路線によっては路線が上下線がセパレートしていて渡り線が設置出来ないということもあり、車線規制しながら半割施工で撤去・施工せざるを得ず、施工効率も上がらない状況になっています。


インバート設置工の完成標準断面図

インバート設置施工フロー図

土留工施工状況

 インバートは深さ2m近く掘るので、車線の中でもかなりの段差が付いてしまいます。そのため土留めを作ります。上の写真は土留めの基礎を掘削しているものですが、ご覧の通り車線にかなり近接して掘削しています。
 インバートの土台を作るため、トンネルの足付けを切って整形しする必要もあります。

 ――高岩山トンネルも一本松トンネルも上下線の半割施工を行っているのですね
 小暮 そうです。上下線とも走行車線か追い越し車線の切替を繰り返し、半割で施工しています。一本松トンネルは下り車線の一部分だけを発注し、半割で施工していきます。
 ――インバートは現場打ちですか? プレキャスト化はできないのですか
 小暮 現状は現場打ちですが、プレキャスト化の技術開発は進めたいと思っています。但し既設トンネルにおけるインバート設置工は、プレキャスト化を行うには作業環境が厳しいといえます。クレーンの荷下ろしをするのも大変です。ヤードが狭すぎ、クリアランスも低いことからブームが伸ばせません。また、単純にプレキャスト化することが効率の向上につながるとは限りません。


ヤードが狭いため1台のバックホウのアタッチメントを変えながら各種施工する(井手迫瑞樹撮影)/ロックボルトの打設状況

撤去工および受台の施工状況

 ――小ブロックに分割し過ぎて継手だらけになってもしょうがないという事ですね
 小暮 建設時においては、インバートは不要と判断した掘削パターンのインバートですから鉄筋も入っていませんしね。形状もまちまちですから、そのまま打設したほうが結果的に早いという事もあります。しかし施工時間の短縮につながるプレキャスト施工の実現は検討に値するとは思っています。
 ――現在の、両トンネルのインバート設置工はどういう状況ですか
 小暮 両トンネルとも下り線を発注しており、各種設備の移動工や撤去工および土台設置工事、土留杭打設工事を進めています。本体工は来年度に行う状況です。
 ――施工会社は
 小暮 一本松トンネルが西松建設、高岩山トンネルが奥村組です。

中曽根川橋 長野道の橋梁で凍結防止剤により早期に損傷
 床版の一部が土砂化して鉄筋が露出 防水工は未設置

 ――次に床版取替を伴う橋梁のリニューアル事業の進捗状況を教えてください。
 小暮 長野道の中曽根川橋で行っています。長野道は供用後30年ぐらいですが、凍結防止剤による塩害の影響で損傷が早期に出ており、床版取替に至る橋梁が増加している状況です。

 ――中曽根川橋の床版取替について
 小暮 同橋は、更埴IC~麻績IC間の中曽根川渡河部に位置する鋼2径間連続非合成鈑桁橋です。上り線が57m、下り線が56mです。設計示方書は平成2年(1990年)道路橋示方書で、1993年3月に供用を開始しました。対象橋梁上の1日交通量は22,300台であり、大型車混入率は約29%となっています。更新前の床版は230mm厚のRC床版で、床版を支える主桁は4本、桁間隔は上り線で2,480mm、下り線で2,540mmとなっています。
 ――斜角や勾配の影響は
 小暮 ほぼ直橋であり、縦横断勾配の面で問題になるようなところはありませんでした。
 ――床版の損傷状況は
 小暮 全区間に渡って、塩害と凍結融解を主要因としたエフロレッセンスが見られ、鉄筋腐食に伴うクラックや浮きが多発していました。床版上面の舗装を切削して調査を実施した結果、床版の一部が土砂化して鉄筋が露出している状況が確認されました。そのため床版の更新を行うものです。


床版の損傷状況

 ――主な補修履歴は
 小暮 大きな補修履歴はありません。防水工も設置していませんでした。

通に配慮してL型の半割床版で分割施工 門型架設機を採用
 防護柵と飛散防止ネットが一体化したタイプの防護柵

 ――新しい床版の形式と施工手順は
 小暮 他の現場と同様にプレキャストPC床版を採用しています。壁高欄と一体化したL型の半割床版を採用することで、現場打ちあるいはプレキャスト化された壁高欄設置などの手間を減らしています。

 ――現在の進捗状況は
 小暮 上り線の床版の取替が完了した状態です。同橋は交通量が多く上下線が分離しており、トンネルを出口にある橋で、渡り線がないということで、施工中も1車線を供用する形で、追越→走行の順に車線分割で施工しています。架設に際しては、一般のクレーンだとアウトリガーの関係で据え付け箇所が限定されて、施工スペースを確保できないため、門型架設機を採用しています。
 ――継手方法は
 小暮 橋軸方向は受注者である川田建設が有するKK合理化継手を採用し、橋軸直角方向の継手部はNEXCO総研とNEXCO3社・ピーエス三菱が特許を有する、突合せ構造の接合面と接合キーを有する縦目地構造を採用しています。
 ――規制の面で気を配ったことは
 小暮 延長が短い橋梁ですので、防護柵と飛散防止ネットが一体化したタイプの防護柵を現地合わせで特注して採用しました。また、突発的な渋滞に備えて渋滞検知のLED標識を採用してお客様に注意喚起することを行っています。
 ――施工効率は
 小暮 門型架設機を使って吊り上げて撤去・架設する工法を採用しており、トレーラーが門型架設機の中に突っ込んで既設床版の搬出、新設プレキャストPC床版の架設を行っています。撤去および架設する床版1パネルのサイズは橋軸方向2m×橋軸直角方向5mです。これを1日3パネルずつ撤去・架設しました。


門型架設機を使った既設床版の撤去


門型架設機を使った新設床版の架設

 ――現状は
 小暮 上り線は完了しており、現在は下り線の施工中です。
 ――施工会社は
 小暮 川田建設です。

耐震補強 まず鏑川橋で着手
 上田ローマン橋などでも照査を進める

 ――耐震補強の進捗状況はいかがですか
 小暮 おしなべて調査設計を行っている状況です。下仁田IC近くの鏑川橋について、まず着手する予定です。さらなる耐震という事で、落橋防止だけを目的としたものではなく、地震時においても段差復旧がしやすくするため、支承取替などを行います。


鏑川橋 (上)3径間連続PC箱桁橋(L=203.0m・壁式橋脚)、(下)3径間連続PC箱桁橋(L=203.0m・壁式橋脚)

 特徴的な橋でRCアーチを有する上田ローマン橋などについても照査を進めています。橋梁形式が通常のRCアーチとモジュラーチのような形式が入り混じっている橋なので一筋縄ではいかないところがあります。真ん中のところは橋構造ですが、両端部は土が詰まっている土工構造というハイブリッド的な構造物になっているので、慎重に照査する必要があります。


上田ローマン橋

SIC 筑北、若穂の2箇所で事業が進む 
 今後3年で9橋、11チューブのリニューアル工事に着手

 ――スマートIC(SIC)の設置事業は
 小暮 長野自動車道において、筑北村に位置する筑北SICの工事を進めています。構造は殆ど土構造で、一部現道を通過する箇所に比較的大きなカルバートを設置する予定です。本線直結型のランドアバウト構造で、同構造は長野県で2例目です。



筑北SICの施工状況(上段:上り線、下段:下り線)

 もう一つは若穂SICがあります。これは長野ICと須坂長野東IC間にSICを作るための調査設計を進めており、今後工事に着手していきたいと考えています。


工事着手前の若穂SIC

 ――今後、長野工事事務所では、どれくらいのリニューアル工事を見込んでいるのですか
 小暮 橋梁は管内に175橋(橋梁上下線で分けると340橋)ありますが、個別に精査中で、規模間についてはっきりとしたことは言えません。しかし、今後3年でそれなりの数にはなると思います。現在リニューアル工事が決まっている橋は、現在施工中の中曽根橋上下線などを加えて香坂川橋床版取替工事など6橋ですが、今後3年で3橋程度を新たに着手していきたいと考えています。また土工改良は2箇所(北野牧と蓬平)、トンネルは11チューブのインバート設置工を予定しています。耐震補強も今後3年で32橋に着手したいと考えています。
 耐震補強は、至近では遠入川橋(鋼アーチ)、滝ノ沢橋(鋼トラス橋)、先ほどお話しした鏑川橋(PC桁、支承高が高い橋梁)などで予定しています。


遠入川橋 (上)鋼2径間連続トラス橋(L=183.0m・壁式橋脚)、(下)鋼2径間連続トラス橋(L=170.0m・壁式橋脚)


滝ノ沢橋(上)鋼3径間連続箱桁橋(L=144.1m・壁式橋脚)、(下)鋼2径間連続箱桁橋(L=104.1m・壁式橋脚)
(上下共通)鋼上路式アーチ橋(L=179.8m・壁式中空橋脚)+鋼3径間連続箱桁橋(L=153.1m・壁式橋脚)

 今後高速道路リニューアルの本格化に伴い、管内の道路において通行止めや対面通行、交通規制など大規模かつ長期に渡り交通規制を伴う工事が増加していきます。
 各工事間の交通規制重複の回避や工事内容に基づき工事従事者やお客様の安全を十分に確保すること、渋滞等交通負荷を最小限するような交通規制形態や工事の効率性を考えた工事計画を立案して工事を進めるとともに、更なる広報に努めリニューアル事業の必要性を正確かつわかりやすくお客さまにご理解いただけるよう進めて参ります。
 ――ありがとうございました

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム