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八幡浜や佐田岬半島にも「高速道路」の恩恵もたらす

愛媛県 大洲・八幡浜自動車道「八幡浜道路」が2022年度末に開通

愛媛県
南予地方局 八幡浜土木事務所
所長(建設技術監)

篠原 真司 氏

公開日:2022.09.16

松柏トンネルの膨張性地山で変状 インバートに追加や補強を追加
 郷高架橋(仮称) 設計変更で下部工を密実断面 上部工はPCから鋼桁へ

 ――さて、建設中の主要構造物の形式について
 篠原 八幡浜道路の2トンネルはいずれもNATM工法で建設しています。
 松柏トンネルについては、一部の地盤で膨張性を有する地山がありまして、一度吹付やロックボルト、H鋼を施工してから変状が生じたため、手戻りになりますが一旦これらを取り壊して、H鋼等のサイズアップや本数を増やすことで増強した支保工を施工、さらにインバート追加等の対策を講じて、膨張性地山の区間を施工しました。


施工時の松柏トンネル

 千丈トンネルはそうした脆弱な地山はありませんでしたが、ヒ素などの自然由来の重金属が出ましたのでその処理を慎重に行いつつ施工しました。また、起点側坑口のところは、地滑りの懸念がありましたので、集水井を4基ほど構築し、坑口の上をアンカーで補強し、安全性を確保しています。


千丈トンネル。舗装や照明工などを残すのみ(井手迫瑞樹撮影)

 郷高架橋(仮称)は、橋台は両方とも基礎が深礎杭で構造形式は逆T式を採用しています。橋脚は特殊な経緯があります。深礎杭を採用していますが、もともと八幡浜道路を事業化した時点では、郷高架橋(仮称)が終点であった(先線は現道の197号を利用する計画)ため、そのまま工事を進めていました。しかし夜昼道路を事業化することとし、施工済みの橋脚を活用して事業を進めるという方向になった際に、張り出し式の中空橋脚であったのを中詰めコンクリートを打設することで補強して、片側に少し不均衡に梁を伸ばした修正設計を施した上で施工を進めています。


A1橋台施工状況

P1橋脚の施工状況

 ――これは本線桁だけでなく、ランプ部に行く桁も同じ橋脚に支持させたという事ですね
 篠原 そうです。しかし、このままでは基礎の支持力が足りなくなる可能性があったため、上部構造をPCから鋼構造に変え、PC3径間連続ラーメン箱桁から鋼2径間連続鋼床版箱桁にすることで死荷重を大きく減らすことで基礎の補強まではせず、構造として持たせることが出来るようにしました。

上部工をPCから鋼へ変更した

郷高架橋(仮称)の架設 桁の幅員変化、線形や勾配対応など難易度高し
  A1~P1間125mは送出し架設 ジャッキダウン量は7m

 ――架設も難しそうですね
 篠原 同橋のA1~P1間(支間長135m)は、JR予讃線を跨ぐため、JR四国に委託しているのですが、そこで言われていることは、A2からA1側に向かうにしたがってランプが本線の両側に伸びていくため、桁の幅員が変わっていき、G1桁とG2桁の桁高も当然変わっていきます。さらに左右で桁高が違い、曲線(R=900m)も入っており、加えてA1(大洲)側からA2(八幡浜)側に上りの縦断勾配を有しています。


幅員が変化し、さらに曲線が入っている(井手迫瑞樹撮影)

 ――上り勾配の送出しというのは中々ないですね
 篠原 完成形は上り勾配ですが、送出し架設の際は、A1側のヤードを調整し、P1と同じ高さになるようにして送出します。何せ約2,000tの鋼重ですから上り勾配の送出しは難易度が高すぎます。その代償として送出し後のジャッキダウンの高さが7mまで必要になります。
 また同橋はJR予讃線を跨ぐため、終電通過後から始発までの短時間しか架設に使える時間がありません。このように技術的に非常に困難な現場といえます。


国道197号やJR予讃線を跨ぐなど架設条件は難しい(井手迫瑞樹撮影)

 

 送出しは、2021年7月12日の日中(8~17時)に行った縦送りを皮切りに、21年の9月から今年の5月にかけていずれも午前0~5時の夜間に、6回に分けて施工しました。ジャッキダウンは、6 月中旬から7 月末までに6 夜間に分けて行っています。桁はただ水平に卸すのではなく、完成形の縦断勾配を考慮して施工しなくてはいけないため、応力管理に細心の注意を払いながら施工しています。


夜間架設状況(井手迫瑞樹撮影)


送出し進捗状況

P1~A2はトラッククレーン+ベントで架設
 耐候性鋼材(裸仕様)を使用 排水処理を工夫

 ――A1~P1の施工完了後の工程は
 篠原 8月からP1~A2間(支間長67.5m)のトラッククレーン+ベントで架設していく予定です。これが終わるのが12月ごろで、それから高欄以降の施工に入ります。
 ――高欄や地覆、舗装はどのように施工するのですか
 篠原 地覆・高欄はアルミ製の外型枠だけが付いた形で送出しています。架設後に現場打をする際、埋殺型枠として使用されます。舗装は、鋼床版上をショットブラストで研掃した後、基層としてグースアスファルト、アスファルト表層を舗設していきます。
 ――鋼桁は耐候性鋼材を使用していますが、裸仕様ですか
 篠原 そうです。保護剤(錆安定化処理剤)を使用することなどは考えていません。
 ――凍結防止剤は散布しないのですか
 篠原 鋼床版ですので冬季は散布することがあろうかと思います。ただし、排水を起点側の端部から補強土壁の際を管で這わし、排水の流末となる水路までもっていっており、塩害などが生じないようにしています。
 ――八幡浜東ICの八幡浜ON、OFFランプおよび夜昼ON、OFFランプの形式は。橋梁形式も一部であるようですが、その橋長と基礎、下部、上部工形式を教えてください。また、施工上の課題についても教えて下さい
 篠原 橋梁は1橋、前記の大洲側オフランプのみです。
 ――加えて、郷高架橋(仮称)のA1背面は、かなり切土や法面の防護に手を加えていますが、その地盤的理由と、どのような補強を行っているのか、工法名も含めて教えてください
 篠原 また、名坂道路の八幡浜ICでも相当の対応を行ったのですが、この八幡浜東ICでも、山切部を安定させるために、集水井、排水ボーリング、アンカーを施工しています。八幡浜地域の特徴として、海沿い、川沿いまで山地が迫り、少ない平地をフル活用して施設や住居を設けられている、という点があります。この道路を計画する際にも、これらの住居等を極力避け、平地に近い山沿いを通るルートとしておりますため、必要な対策工事であったと考えています。

新千丈川橋(仮称)は下部工が進捗 同橋を新夜昼トンネルの工事道路として使う

 ――夜昼道路区間の接点にある新千丈川橋(仮称)の形式は
 篠原 橋長151mの鋼3径間連続鈑桁橋(RC床版)で、ここも裸仕様の耐候性鋼材を使用する予定です。現在は下部工を施工している状況です。同橋に続く新夜昼トンネル(2,690m)は、新千丈川橋(仮称)を掘進のための工事用道路として使う予定ですので、これが出来て初めてトンネルに着工できる状況となります。


新千丈川橋A1橋台の深礎(左2枚)、躯体(右2枚)施工状況

新千丈川橋P2橋脚の深礎(左2枚)、躯体(右2枚)施工状況

新千丈川橋P1橋脚の施工状況

 ――その他、付言して
 篠原 高速道路の南予延伸が進んでいますが、大洲・八幡浜自動車道は、その空白地域を埋める地域高規格道路といえます。国からもかなりの補助を頂き、事業を進めていますが、それでもコスト縮減のためには、本線橋梁を使ってトンネルを施工するなど工夫していく必要があります。逆を言えば、工事のほとんどがクリティカルパスとなり、一つ何かがあれば、後工程が全てずれていく危険性があります。それでも何とか頑張って、まずは八幡浜道路3.8kmの今年度末開通を成し遂げたいと考えています。


舗装も急ピッチで進めなくてはいけない(写真は八幡浜IC接続部、井手迫瑞樹撮影)

 それ以降も、国に何とかお願いして、現在工事を進めている夜昼道路だけでなく大洲平野IC~大洲北只JCT間に至る大洲西道路(3.3km)を並行して順調に事業を進めることができる補助を頂ければと考えています。
 ――ありがとうございました

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