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新社屋も完成し、営業拠点も拡大、5年後は社員を5割増しに

中井商工50周年記念インタビュー 今後5年で年間売上50億円を目指す

中井商工株式会社
代表取締役社長

宮崎 正治

公開日:2022.07.21

 中井商工は今年5月に創業50周年を迎えた。1972年5月に創業した同社は、伸縮装置の止水用途として、当時の画期的な伸縮性のシール材であるハヤシールNSを開発し、阪神高速道路で初採用されて以来、大きく適用を拡大、その技術を皮切りに伸縮装置周りの補修補強商品の開発および設計・施工を行う総合橋梁補修会社として成長を遂げてきた。阪神淡路大震災の発生からは、耐震補強工事関連にも分野を広げ、現在は、社員100人、年売上35億円にまで達している。50周年を迎える今年は、5階建ての新社屋も完成させ九州・東北にも営業拠点を拡大した。同社の宮崎正治社長(冒頭写真、中井商工提供、以下注釈なきは同)に今後の展望を聞いた。(井手迫瑞樹)

橋梁補修補強工事分野にも力を入れる
 フィンガージョイントの止水材『ハヤシールNS』が最初の一歩

 ――今年5月に創業50周年を迎えました。創業当初の中井商工はどのような会社だったのでしょうか
 宮崎社長 1972年5月に某ゴムメーカーに勤めていた中井治一が独立して創業した会社です。中井は止水技術に長けた技術者であり、その知見を活かして防水材やゴムパッキンの販売などを当初行っていました。その中で当時伸縮装置(フィンガージョイント)の止水材として使われていたウレタンタール系の充填材が脱落を起こすなど不具合が生じていたことに着目し、液状ポリブタジエンを主剤とした無溶剤二液反応型シール材『ハヤシールNS』を開発しました。当時の建設省やJH、阪神高速道路公団などの技術上の叱咤や助言を受けつつ、そのすべてに対応して粘り強く改良を重ねた結果、1977年に阪神高速道路で初採用され、以来、様々な現場で適用を重ね、今なお使われています。同製品を皮切りに様々な伸縮装置周りの技術を開発し、現在では伸縮装置のみならず、橋梁補修全体に寄与する商品開発や施工を行っています。


ハヤシールNSの実際の施工状況と概要図

 また、橋梁補修工事や耐震補強工事分野にも力を入れています。その画期となったのは、やはり阪神淡路大震災です。現在は伸縮装置周りの補修工事を始め、橋脚の耐震補強や落橋防止装置の設置工事など、自社の製品も提案しながら受注案件を増やしています。

実験用機械をさらに1台拡充し、商品開発のペースを上げる
 新設社屋で社員の士気向上 九州・東北に新たに営業拠点を設置

 ――創業50周年の記念として社屋も一新しましたね
 宮崎 2年前から50周年記念と、従業員の士気向上、新卒を含めた採用を効果的に行えるようにするため、新社屋の建設を計画しました。老朽化した旧社屋を取り壊し、同地に5階建ての新社屋を建設するものです。建屋の総面積は約1,500㎡に達します。1階は実験室や各種応接室、2、3階は大阪営業所や本社の技術、管理部門、4階は役員室や会議室、5階は社員が心地よく過ごせるリフレッシュルームという構成になっています。


新社屋外観/エントランスの壁にはN文字状の棚に製品見本が置かれている(右写真は井手迫瑞樹撮影)

リフレッシュルームとオフィス(井手迫瑞樹撮影)

 加えて営業拠点も大阪、名古屋、東京という従来の拠点に加え、九州(福岡市)、東北(宮城県名取市)の2拠点を新たに設け、各発注機関に対する即応性をさらに強化しています。
 ――実験設備の拡充なども行われましたか
 宮崎 大型伸縮装置の挙動を再現できる実験用機械は従来から1台保有していましたが、古くなっていたこともあり、さらに1台同規模のものを導入しました。古くなった機械も引き続いて使用しており、併用することで、シール材や止水材などを条件を変えて同時に試験できるようになり、開発のペースを上げることが出来るようになりました。


新たに導入した実験設備

摩擦素子コート工法が全国に広がる
 気仙沼湾横断橋では『隙間付き緩衝材』などが採用

 ――さて、現在の売上額と中期的な目標は
 宮崎 2021年度の年度売上額は約35億円です。当社の主力商品であるジョイントの止水、漏水対策および工事が19億円と半分以上を占めています。他、ジョイント周りの各種補修材、すべり止め対策(摩擦素子コート)、各種橋梁補修用附属品、斜張橋ケーブルの保護用製品(制振材・防水材など)の販売及び工事が10億円強で、今後、強化していきたい元請としての橋梁補修・耐震補強工事の売上は2億円程度となっています。
商品販売と材工一括工事(元請・下請)の割合は1対9と圧倒的に工事も含めた売上が多くなっています。
中期的には、5年後をめどに売上50億円を達成したいと考えています。
 ――斜張橋ケーブルの関連商品としては、東北地方整備局の復興道路中、最大級の橋梁である気仙沼湾横断橋(かなえおおはし)で採用されていましたね
 宮崎 同橋に使われているケーブルの変位時衝突対策として、平時は他社制振装置の機能に干渉せず、地震などにより過大なケーブル変位が発生したときにクッション材としてケーブルと制振装置の両方を保護するポリブタジエン系緩衝材『隙間付き緩衝材』や、ケーブル定着点への浸水防止対策として、ゴムカバーに加えて水切りハットを段階的に付けて、より水が切れ易い形を作るといった対策を提案させていただき、当社の製品として取り入れていただきました。


隙間付き緩衝材設置状況と概要図


ケーブルゴムカバー・ケーブルハット写真_(気仙沼湾横断橋)(左)と概要図

 ――ジョイントのすべり止め対策としては、旭化工、川金コアテック、ニッタと共同開発した摩擦素子コート工法も全国に広がっていますね
 宮崎 阪神高速道路やNEXCO中日本、NEXCO東日本、国土交通省といった大口事業者での採用実績が着実に増えています。最近では川崎市のキングスカイフロントと羽田空港を結ぶ多摩川渡河部最下流に架けられた多摩川スカイブリッジでも、伸縮装置のすべり止め工法として採用されました。かなり前から同工法のシートタイプの開発も進めており、何とか共同開発している会社と協力して製品化にこぎつけたいと考えております。


多摩川スカイブリッジの摩擦素子コートの施工(井手迫瑞樹撮影)

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