道路構造物ジャーナルNET

多角的な人材育成と“オールIHI”で事業環境変化に対応

IHIインフラシステム 上田和哉新社長インタビュー

株式会社IHIインフラシステム
代表取締役社長

上田 和哉 氏

公開日:2022.06.02

 IHIインフラシステムの新社長に上田和哉氏が就任した。長らく橋梁の架設現場に従事してきた同氏が、事業環境が変化するなかで新設事業や更新・保全事業、働き方改革などでどのような取組みを進めていくのかを聞いた。

「それで満足するな」の言葉を肝に銘じ仕事に臨む

 ――まず社長の経歴から教えてください
 上田社長 1994年に岡山大学大学院工学研究科修了後、石川島播磨重工業(現IHI)に入社しました。入社後は、一部の本社勤務を除き、継続して橋梁の架設現場に従事してきました。店社時代も建設部が多く、一時、技術提案も担当させてもらっています。2017年には建設部長、2019年に理事・建設部長に就任し、2020年から今年3月までは海外プロジェクト室プロジェクト部バンガバンドゥPJグループ担当部長を務めていました。
 当社の人間はもちろん、現場で知り合った同業他社や発注者の方々とは現在でもつながりがあり、私の財産だと思っています。


(左)バンガバンドゥPJグループ担当部長時代の上田社長(安全大会にて)(IHIインフラシステム提供。注釈なき場合は以下、同)
(右)バンガバンドゥ橋完成予想図(出典:OC GLOBAL -長大-DDC Joint Venture)

 ――印象に残っている仕事は
 上田 架設計画をメインで担当した安芸灘大橋(広島県道路公社)や、最後に現場代理人を務めた山王JCT(名古屋高速道路公社)などがあります。


安芸灘大橋(左)と山王JCT(右)

 30歳前後の時には、難工事といわれる現場で架設計画を担当しました。複数回にわたる架設ステップがあり、ひとつの難しい架設が計画どおりにうまく完了した時に、関係者と一緒にお祝いをして、私も盛り上がっていました。しかし、ある下請会社の役員の方から「みんなは喜んでいいけど、上田君だけは満足するな。この程度で満足していたら、これからこの工事はもっと難しくなって、ここで満足していたら失敗するよ」と言われました。この言葉には衝撃を受けました。それからは、どのような架設計画でも常に満足しないように、工事が無事に完了するまで細心の姿勢で臨むようになりました。この時に言われた「それで満足するな」は現在も大切にしている言葉です。

変化に柔軟に対応できる会社を目指す
 海外事業で培った経験を国内事業で生かして社会貢献を

 ――社長としての抱負は
 上田 IHIグループとして2020年11月に「プロジェクトChange」を策定して、今年度はその最終年度であり、かつ次期事業計画につながる年度なので、まずはそれに確実に取り組んでいかなければならないと考えています。具体的には、先輩方から引き継いだ当社の強みを最大限に発揮し、それを提供することで社会に貢献できる会社にしていきます。また、事業環境が変化していますので、10年後などといった大きなスパンで見据えて、変化に柔軟に対応できる会社を目指します。
 ――御社の強みとは
 上田 海外事業に継続して取り組んでいることが強みとなっています。理由はふたつあると考えていて、ひとつは日本の技術を発展途上国などに提供することでIHIや日本をアピールしながら、その国のインフラに貢献していることです。もうひとつは、海外と日本の工事がまったく違うことです。上下部一体工事は当たり前ですし、デザインビルドの超大型工事も当たり前のように行っていますので、語学だけでなく、リスク管理を含めた管理能力などが求められます。
 海外で多角的な人材を育てて、国内工事でもさまざまな経験をさせることで、最終的には日本の社会に貢献できると考えています。大阪湾岸道路西伸部などは、我々が培った経験を発揮できるチャンスだと思います。


第2ボスポラス橋

 ――変化に柔軟に対応できる会社にするためには
 上田 少子高齢化による担い手不足、頻発・激甚化する災害でのさまざまなリスクに加えて、事業構造が急激に変わる可能性が増えてきています。それらに対応していくためには、ICTやDXの推進は必須ですし、経営の舵を切る時にスムーズに対応できる人材を育てていくことが重要です。

受注量は国内が好調で順調に推移
 工場とすべての現場が情報共有できる全社的なシステム構築を目指す

 ――国内橋梁の需要見通しは
 上田 今後、数年間の新設工事の発注量は20万tを超えると見込んでいます。4車線化事業や大阪湾岸道路西伸部などの大きなプロジェクトがあるので、それに期待しています。中長期的には新設工事は若干減少し、保全分野では年間5,000億円程度の発注量が続くと考えています。そのなかで、新設工事をしっかりと行いながら、防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策において当社が貢献できるような取り組みを進めていきたいと考えています。
 ――御社の業績推移は
 上田 2021年度は海外事業で新型コロナウイルス感染症の影響を受けましたが、国内での受注量が好調で、比較的順調に推移しています。
 ――2022年度の設備投資計画や重点施策について
 上田 堺工場で整備を進めていた塗装移動屋根設備が今年度に完成予定です。全天候での塗装が可能になりますので、生産リードタイムの短縮を図ることができます。この数年、取り組んでいた堺工場での製造効率化も塗装移動屋根設備の完成で、かなり進みます。


堺工場の塗装移動屋根設備

 また、ICT関連でのBIMの高度化や、橋梁の維持管理を支援する統括マネジメントシステム「BMSS(Bridge Management Support System)」の機能向上には重点的に投資を行っていきます。
 ――BIMの高度化ではどのようなことをお考えですか
 上田 将来的には設計から現場までの適用を考えていますが、まずは設計や製造分野でできるところから取り組んでいきます。
 ――現場でのICT活用の状況は
 上田 海外では好むと好まざるとにかかわらずプロジェクト管理などでICTを活用しています。国内でもいくつかの現場でICTを活用していますが、それが業務の効率化に寄与しているかというと、個々の現場のみでは難しい状況です。工場との納期調整にしても、すべての現場が工程を含めて情報共有できる全社的なシステムが構築できて初めて本当の効率化につながると考えていますので、今年度はそのシステム構築に向けて取り組んでいきます。
 また、現場で働く人の意識を変えていくことも必要です。海外ではプロジェクト管理のソフトを使える人間を雇うことができますが、国内では現場責任者が対応しなければなりません。ソフトやツールの扱い方を学んでもらい、業務効率化につながる仕事のやり方に変えていきたいと考えています。

BMSSで地方自治体などの維持管理業務を手助けしたい

 ――BMSSの展開については
 上田 橋梁の維持管理で地方自治体などのお客様が困っていることを具現化したものがBMSSです。IHI、IHIインフラ建設(IIK)、当社で開発し、橋梁諸元、定期点検、補修設計、補修工事の各データを連動させ一括管理でき、さらに直営点検や補修工法選定、概算工費算出を支援するツールも搭載した橋梁の維持管理を統括支援するシステムとなっています。


BMSSの概要

 機能向上は図っていきたいと考えていきますが、それによりお客様の手間が増えては意味がありませんので、バランスを保ちながら進化をさせていかなければならないと考えています。また、完璧なシステムにして販売するというよりは、お客様の意見を聞きながら必要とされるものを取り入れて、実際の維持管理業務で使ってもらえるシステムにして、喜んでいただくことをゴールとしています。現時点でも完成度は高くなっていますので、実際にお客様に使ってもらってフィードバックをいただきながら、さらなる付加価値をつけていくことを次のステップとしています。

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