道路構造物ジャーナルNET

川田琢哉社長インタビュー

川田建設 創立50周年を機に「那須トレーニングセンター(NTC)」を建設

川田建設株式会社
代表取締役社長

川田 琢哉

公開日:2021.11.30

  川田建設は本日(2021年11月30日)、会社創立50周年を迎える。川田工業の橋梁架設工事部門から始まり、ごく初期からのPC橋の建設、PC工場の稼働、耐震補強など保全分野への参入、そして大規模更新工事へのいち早い参入など常に時代をリードしてきた。同社が今までどのように歩みを進めてきたのか、そして今後どのように進もうとしているのか、「那須トレーニングセンター(NTC)」の建設など教育分野への投資、新技術の開発なども含め、川田琢哉社長にビジョンを聞いた。(井手迫瑞樹)

新し物好きの社風
 川田工業の工事部門が独立する形で誕生

 ――この50年を振り返ってみると川田建設は、川田工業の橋梁工事会社として育ってきたように沿革からは見受けられます。川田建設は、そこからどのようにPC桁の製作に携わり、また保全にまでウィングを伸ばしていったのでしょうか
 川田社長 川田グループにおいてPC分野への参入は、実は意外と古く、川田工業が初めてPCの堀切橋(富山県)を架設した1957年のことです。それからも川田工業では鋼橋とともにPC橋も架設しており、のちに川田建設の母体となる工事部隊も自然、両橋種ともに技術に親しんでいました。
 ――1957年に既にPC分野へ参入していたのですか、驚くべき速さですね。日本初のPC橋が1952年の長生橋ですから、その5年後には参入していたわけですね
 川田社長 何せ新しい物好きの社風なもので、当時から海外の橋梁市場を見るとPCが日本でも絶対出てくると踏んで、飛びついたんですね。
 ――川田建設が誕生したのは
 川田 1971年11月30日に川田工業の工事部門が独立する形で誕生しました(当時の社名は玖洋建設、73年に現在の社名に変更)。独立したのちもフレシネーやP&Z工法など様々な架設工法にチャレンジし、実績を積み上げていきました。
(例:https://www.kawada.co.jp/technology/gihou/pdf/vol09/09_gijyutu13-1.pdf

50周年記念事業のテーマを教育に選定
 「那須トレーニングセンター(NTC)」を建設

 ――さて、50周年を記念して行っていることは
 川田 川田建設は、今年度に50周年を迎えます。その記念事業のため5年前から構想を練ってきました。その頃は、橋梁の建設現場で相次いで大きな事故が起きていて、業界のイメージが悪化していました。そのため入職者が減り、担い手が不足し、安全が手薄になって事故が多発して、さらなるイメージ悪化を招く悪循環が生じていると報道されていました。我々はそれを変えたいと考えました。
 同年(2016年)はi-Constructionも始まりましたので、新しい分野の研究も含めて、50周年記念事業のテーマを教育に選定しました。私自ら教育に関連する文献や、他社事例の情報を収集し、展示会などへの積極的な視察を行いました。
 一方、4年前の2017年には、弊社でも死亡事故を起こしてしまいました。それを猛省し、教育の力点を安全に置くことにしました。新たに建設する研修所を活用して、業界のイメージを向上させて入職者を増やし、教育訓練により技術力や生産性を向上させるとともに事故を減らして新3Kを達成し、さらにイメージを向上させる、という好循環を起こしたいと構想しました。
 さらに2年前からは、残業削減のためにICT環境の向上とCIM教育に傾注しつつ、昨年の新入社員の入社に向けて研修カリキュラムを準備しました。また、現場の安全指導にウエブ会議システムを導入していたことが、昨年のコロナ禍での新人教育において、大きく威力を発揮しました。


那須トレーニングセンター(NTC)全景(川田建設提供)

 そして昨年から研修所「那須トレーニングセンター(NTC)」の建設を始め、この4月には完成し、今年度の新人研修(4月)を、NTCで対面開催することができました。建物は間取りを広く造っているものですから、グループ各社の新入社員およそ80人が集まりましたが、ソーシャルディスタンスを確保して研修を行うことができました。
 そして、先月NTCにドローンスクールの認可が下りました。
 ――ドローンを川田建設がどのように教育し、使っていくのですか
 川田 ドローンの動かし方を単に社員へ教育することが目的ではなく、生産性革命のためにこれを使って調査や点検、現場パトロール、ドローン物輸などの研究もしたい。教育だけでなく、ドローンを使った各種の技術開発も行っていきます。
 ――ドローンスクールの教育対象はグループ会社や協力会社などが対象ですか
 川田 現在は講師が少なく、対象は限られていますが、将来的には近隣住民や他社、異業種の方々にも門戸を開いていこうと考えています。

NTC 120人収容可能な大研修室
 社外の人にも活用してほしい 

 ――NTCの規模やこだわりは
 川田 敷地面積は13,000㎡におよびます。また、研修棟は延べ床面積が900㎡あり、1階の研修室は2部屋60人ずつ収容でき、可動仕切り板を外せば最大120人収容が可能になっています。2階には30人収容できるOA研修室を用意し、さらに別棟で750㎡の室内実習エリアも用意しています。

最大120人収容が可能な研修室(井手迫瑞樹撮影)


研修者が見やすいように大型のディスプレイを導入している(井手迫瑞樹撮影)

 NTCには社外からもなるべく多くの人に活用してほしいと考えています。NTCの名称に当社の名前を入れなかったのも外部の方が使う際に、敷居を低くしたいという考えからです。
 当社やグループ各社、協力会社など関係者の活用はもちろん、近隣住民の方々にも、NTCや隣接する那須工場、機材センターを気軽に見学してもらい、さらにドローンなどにも触れてもらって、特に若い方々に将来の担い手になっていただきたいと考えています。
 教育者や学生にも使ってもらいたいと考えています。4月に稼働しましたが、インターンや共同研究なども呼びかけています。また同業他社やコンサルタント各社、自治体など発注者の方々、さらには異業種の各種研修にも使っていただきたいと考えています。さらに各種の安全体感装置を備えていることから、労働基準監督署の方々にも署内研修として使いたいという依頼をいただいています。
 ――今、ドローンや安全体感装置の話がありましたが、どのような設備を置いているのですか
 川田 建設現場を反映した安全体感装置やVR、床版や桁、足場などの実物大見本に加え、コンクリートの不具合サンプルを陳列しています。また、実習エリアも設けており、つい最近は、当社の2年目の社員にRCの地覆高欄を配筋から打設までさせる実習も行いました。

各種安全体感装置も導入(井手迫瑞樹撮影)

実習エリア(井手迫瑞樹撮影)

コンクリートの不具合サンプルの展示(井手迫瑞樹撮影)

実物大製品(井手迫瑞樹撮影)

 最新技術としてはOA研修室においてBIM/CIMを体験できるほか、先ほど話したドローンの研修、各種ロボットや新商品の展示を見ることができます。
 また、広い天井、逍遥(散歩)できる屋外エリアや様々な展示物があることから豊かな発想の喚起も期待できると考えています。独学やオンラインでは経験できない、NTCならではの感動的な学習体験を提供できます。

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