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鋼部材の腐食・さびや疲労、コンクリートのASRが主要損傷

阪神高速 大規模更新は湊町、湊川で施工が進む

阪神高速道路株式会社
保全交通部長

渡辺 尚夫

公開日:2021.11.22

阪神高速全体の交通量は日平均64万台 大混率は10%強
 鋼桁が約8割 そのうち鋼床版は1,001径間 トンネルは3分の2がNATM工法

 ――次に通常の保全について管理延長と交通量、大型車混入率から教えてください
 渡辺 当社は大阪府、兵庫県内に全体で258.1kmの都市高速道路を管理しています。そのうち大阪地区は156.8km、兵庫地区が101.3kmとなっています。交通量は日平均64万台(2020年度)であり、大型車混入率は10.1%(2020年10月平日)です。
 ――次に構造物ごとの延長とその特徴を教えてください
 渡辺 橋梁は202.1kmでそのうち鋼桁が約8割、コンクリート桁が約2割を占めます。コンクリート桁は、そのほとんどがPC桁です。そのほか、トンネルは32.4km、土工は23.6kmです。40年以上経過している区間は43%に達しており(50年以上は29%)、10年後は約6割強が供用から40年以上となります。
 ――鋼桁が約8割を占めていますが、そのうち鋼床版が占める割合はいかほどですか
 渡辺 本線部で1001径間です。
 ――次に現在の管内橋梁、トンネルの内訳について詳細を教えてください。まず全体数と構造種別からお願いします
 渡辺 橋梁は202.1kmのうち、鋼桁が160.9kmと8割を占めます。コンクリート桁は41.1kmですがそのほとんどがPC桁です。トンネルは37チューブあり、NATMが23チューブ(39.5km)、開削が5チューブ(6.9km)、在来矢板工法が8チューブ(3.4km)、シールドが1チューブ(4.9km)です。

橋梁は50年以上経過が73.1km 40年以上経過は100km超える
 Aランク損傷は毎年2,000件発見、対策区分T1は同200件

 ――供用年次別は
 渡辺 橋梁から申しますと、50年以上経過が73.1km、40年以上50年未満が28.9km、30年以上40年未満が36.1km、20年以上30年未満が60.3km、10年以上20年未満が2.6km、10年未満が1.1kmとなっています。トンネルは40年以上50年未満が7.8km、30年以上40年未満が0.6km、20年以上30年未満が5.2km、10年以上20年未満が6.8km、10年未満が12kmです。
 ――20年以上30年未満が突出して多いですね
 渡辺 湾岸線が該当します。
 ――路線別は
 渡辺 大阪管内が1号環状線、11号池田線(中之島JCT~池田)、12号守口線、15号堺線、17号西大阪線で供用後40年以上経過しています。また、2号淀川左岸線、4号湾岸線、11号池田線(蛍池JCT~池田木部)を除き、他の路線は殆どが供用後30年を経過しています。
一方、神戸管内は、3号神戸線(神戸西宮線)が、供用後40年以上を経過しています。また、新神戸トンネルおよび北神戸線(伊川谷JCT~布施畑JCT)が供用後30年以上経過しています。

 ――次に管内の構造物の管理状況について点検を進めてみての劣化状況について教えてください。橋種や部位ごとなどの損傷傾向やその理由についてもお答えください
 渡辺 補修が必要なAランクについては、毎年約2,000件発見されています。これらについては、さらに対策区分(T1(5年以内の要補修)~T3(要経過観察))を付与しており、対策区分ごとに優先度の高いものから補修しています。T1は毎年約200件となっています。また、構造物の安全性もしくは第三者への影響の観点から緊急に対策が講じられるSランクは毎年発見されるものの、その数は20件ほどとごく僅かです。

損傷最上位は鋼桁の腐食・錆、次いで鋼床版の亀裂
 東大阪線や松原線の橋脚でASR損傷が多発

 ――部位別の要補修損傷について損傷の傾向を教えてください
 渡辺 当社では、桁、床版、高欄・水切り、はり上、橋脚の5部位に損傷を分類しています。Aランクの損傷で最も多いのは鋼桁の錆・腐食で、特に桁端部で多発しています。次いで多いのが鋼床版の亀裂です。桁の損傷は湾岸線・神戸線など供用年次の古い路線で多く発生しています。

鋼桁の腐食

鋼桁・鋼床版など鋼部材の疲労亀裂

鋼床版補強状況

鋼床版補修状況②/トルシア形高力スタッドボルトを支承した鋼床版補修

 ――床版は湾岸線、堺線、環状線で多く発生していますね
 渡辺 湾岸線は鋼床版の疲労亀裂やRC床版の劣化ですが、堺線と環状線はRC床版で鋼板接着したものの再劣化が生じているケースが多く見受けられている状況です。

 ――橋脚の損傷についての傾向は
 渡辺 東大阪線や松原線など供用延長が比較的古い路線が上位にあるのはASRによる損傷が多発しているからです。ASRによる損傷については、表面被覆などを施し、水の浸入を抑止します。また、外観劣化度Ⅲ以上での損傷個所については、残存膨張率を測り、500μm以上であれば、亜硝酸リチウム圧入工法による骨材の膨張抑制を行います。
 ――供用年次が比較的若くても損傷が多く発生している区間もありますね
 渡辺 そのほとんどは鋼床版の疲労亀裂によるものとなっています。
 ――同様にトンネルについては
 渡辺 大きな損傷は発生しておらず、損傷に関する分析は今後の課題と認識しています。

橋脚耐震補強完了率は93% 上部工耐震の不調不落対策が重要
 ジョイント取替は137レーン、ジョイントレス化は16レーンで施工

 ――橋梁など耐震補強の進捗状況は
 渡辺 まず橋脚から申し上げますと、耐震補強完了率は93%に達しています。とりわけ兵庫県南部地震で大きな被害が集中した昭和55年道示より前の設計で建設された橋梁の落橋防止・倒壊対策(耐震性能3)は2011年度までに完了しました。長大特殊橋でも耐震性能3は全て完了しています。今後は耐震性能3の2への引き上げを行うべく上部工耐震の拡充を図っていきます。なお熊本地震で被災した並柳橋で用いられていた1本ローラー支承は兵庫県南部地震でも被害が大きかったことから優先的に支承取替を実施しています。
 ――耐震補強の面での課題は
 渡辺 技術的なことはともかく、発注工事の不調不落が続いていることがきついところです。ただし、品質や安全面から指名の範囲を緩和することは考えておりません。発注額や規模を工夫することで、何とか受注していただけるよう努力していきます。
 ――支承取替やノージョイント化について今年度の施工予定箇所数と取替える際の工法は
 渡辺 支承取替を予定しているのは今年度1基のみです。ジョイント補修・取替は今秋の環状線北行リニューアル工事で実施します。ジョイント取替が137レーンで、主にゴムジョイントから簡易鋼製ジョイントに交換します。ジョイントレス化は16レーンで予定しており、床版連結工法を採用します。ジョイントの撤去はそのほとんどをSJS工法で施工し、騒音を抑制しつつ切断・撤去していきます。

塩害対策はリフリート工法を採用
 鋼桁の塗替えは69径間14万㎡弱の施工が進捗中

 ――塩害やASRの有無とその損傷状況、対策工法について
 渡辺 塩害については、外来塩分による劣化は、北神戸線など凍結防止剤散布量が多い箇所で確認されています。また、一部では内在塩分による劣化も見られます。損傷の特徴は鉄筋の著しい断面減少などがあげられます。塩害の疑いがある構造物には塩分量調査を実施し、対策の必要がある場合は、リフリート工法(DS仕様)などによる断面修復を実施します。

ASRによる損傷①
 ASRは1982年に確認されて以来、追跡点検を実施しつつ、表面保護工などで対策しています。鉄筋損傷を確認した橋脚では、鋼板補強や炭素繊維シート巻立て補強を実施しています。
 外観劣化度の高いASRが生じている橋脚の一部には、鉄筋曲げ加工部および圧接部で鉄筋損傷が確認されています。それは特に松原線、東大阪線、堺線で顕著です。著しい損傷個所では、ひび割れ密度が5m/㎡を超える箇所もあります。そのため外観劣化度Ⅲ・Ⅳを対象に大規模修繕事業において、再構築や補強・抑制対策を実施し、現在までに東大阪線(西船場JCT)では4基の梁部の再構築を行っています。今後は堺線をはじめとするその他の路線で、亜硝酸リチウム圧入および表面保護などの対策を実施する予定です。

ASRによる損傷②
 ――床版についてですが、床版防水の敷設率と、今年度の床版防水の施工計画(場所(路線)、面積、工法)を教えてください
 渡辺 高性能床版防水の施工対象は、昭和48年より前の基準の床版と、昭和48年以降基準の床版のうち漏水系の損傷が見られた床版を対象にしていますので、全体ボリュームは正確には把握できていません。基本的にリニューアル工事での舗装打替え時に施工していますので、堺線、神戸線(京橋~湊川)と環状線(南行)の舗装表基層打替え部が高性能床版防水の施工完了箇所となります。今年度は、環状線(北行)のリニューアル工事で約5万㎡の高性能床版防水を施工する予定です。工法は、高浸透型防水と塗膜防水の複合防水です。

高性能床版防水の施工状況

 ――2020年度の鋼橋塗替え実績と21年度の予定を教えてください
 渡辺 2020年度は、33径間61,557㎡の塗替え工事が竣工しました。21年度は現在69径間139,265㎡の工事が進捗しています。


塗装塗替え状況

塗装塗替え前後状況

水性無機塗料の暴露試験に着手
 塗膜除去 塗膜剥離剤基本もサンドブラストなども選択肢に

 ――新しい重防食の採用について
 渡辺 鋼桁塗替えの際は原則として、ブラストなどにより既存の塗膜を下地まで除去し、有機ジンクリッチペイントとふっ素樹脂塗装を組み合わせた重防食塗装を実施しています。
溶射の実績は塗替え時においてはありませんが、守口、松原JCT改築事業では、現場の条件から足場の設置が難しい箇所でしたので、溶射を採用しています。
 新材料としては、現在、セラマックスなど水性無機塗料の暴露試験に着手しています。4年程度暴露して、その性能を確かめた上で、環境負荷が少なく、長期耐久性が期待できる材料として用いていきたいと考えています。

塗膜剥離剤施工状況

 ――PCBや鉛など有害物を含有する既存塗膜の除去方法については、どのような方法を使っていますか
 渡辺 PCBについては塗装の履歴調査を行った結果、全て処理済みとなっています。
 鉛などを含む既存塗膜の掻き落としについては、現状は塗膜剥離剤を適用しています。狭隘な箇所ではブリストルブラスターを用いてケレンしています。しかし、令和2年10月の厚生労働省通知により、サンドブラストの使用も再度可能になったことから、今後は施工条件などを考慮して、掻き落とし方法を選定していきます。

耐候性鋼材 堀越橋や西堀越橋で損傷
 ブラストや塗装したケースも

 ――耐候性鋼材を採用した橋梁の損傷状況は
 渡辺 耐候性鋼材の採用径間数は169径間です。耐候性鋼材の損傷は、外観変色(層状剥離さび、1㎡以上の変色)がほとんどで、一部部材で腐食が見受けられます。損傷は特に北神戸線(凍結防止剤の散布量が多い)で多く、Aランク損傷は全体の約1/4に達します。とりわけ、堀越橋、西堀越橋で顕著な損傷が生じています。堀越橋はブラストをかけて、錆を除去して様子を見ています。西堀越橋は上下線のセパレート桁が非常に近づいている個所にあり、なおかつ、路面上から水が供給されるため、高欄天端の隙間をウレアウレタンで防水して、鋼桁の方は狭隘な箇所でもなんとかケレンを行い、塗装しました。

堀越橋(左)と西堀越橋の損傷状況

堀越橋の対策前後の状況(左)と西堀越橋の中塗り塗装状況

点検や維持管理の高度化に様々な技術を導入
 損傷制御型耐震ストッパー『DCストッパー』を日本鋳造と共同開発

 ――点検技術や補修補強分野の新工法・新材料・コスト縮減策の採用について
 渡辺 グループとして取り組んでいるのは、照明柱アンカーボルト劣化診断システム(阪神高速技術)、画像・点群や3Dモデル等の活用による点検・維持管理の高度化(同)、構造物総合診断車両の活用(同)、DCストッパー(Damage Control Stopper)(阪神高速道路と日本鋳造の共同開発)、渦流探傷による鋼床版検査装置「みつけるくんK」(阪神高速技術)、浸透型床版防水材(阪神高速道路とアイゾールテクニカの共同開発)などがあります。

照明柱アンカーボルト劣化診断システム/画像・点群や3Dモデル等の活用による点検・維持管理の高度化

ドクターパト2 イーグル

みつけるくんK

HI-SPECシール

 ――DCストッパーは初めて聞きます。どのような工法ですか
 渡辺 2016年に起こった熊本地震では、支承の損傷により路面に段差が生じた結果、道路復旧に時間を要し、緊急物資の輸送などに支障をきたしました。そうした地震の教訓を踏まえ、大規模な地震が起きても既存の支承を守るべく、支承が壊れにくく、また仮に壊れたとしても粘り強く壊れていく高じん性鋳鋼を用いた損傷制御型のストッパー(損傷制御型変位抑制装置)を共同開発したものです。
 既設支承の近傍、例えば横桁に追加設置していくことで既存支承を護り、大規模な地震が発生しても、大きな段差を生じさせず、速やかに交通を開放することが可能になります。7月に日本鋳造と共同で特許も取得しました。

DCストッパー

 ――グラウト充填不良の非破壊検査手法の開発は考えていませんか
 渡辺 インパクトエコーを採用していますが、それはスクリーニング手段であり、そこで異常が見つかった個所については別途微破壊検査を行い、慎重に診断していきます。インパクトエコーそのものは確かに人為的な判断となりますが、現在はそれを別の非破壊検査手段に切り替えていくことは考えていません。
 ――床版の点検などにおける非破壊、微破壊技術の採用は
 渡辺 微破壊分野でSingle-i工法を採用しています。
 ――ありがとうございました

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