道路構造物ジャーナルNET

2021年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ④高田機工

効率化と人材育成に注力 ブラスト工場を更新

高田機工株式会社
代表取締役社長

髙橋 裕

公開日:2021.09.27

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。2回目は、高田機工の髙橋裕社長と、瀧上工業の瀧上晶義社長の記事を掲載する。

 ――2020年度業績は
 髙橋 20年度の鋼道路橋の発注は前年度の13万tに比べて増えたものの、当初予想の20万tを割る18万t強と期待を下回るとともに、新設工事が減る中で保全工事は発注金額では全体の47%、前年度の3倍と大幅増となり、工場を抱えるファブとしては厳しい状況が続いている。国土強靭化5カ年計画もあり、潜在的な需要はあるものの、コロナ禍の影響などで発注が遅れているとみている。
 当社の業績は減収減益となったが、受注高は橋梁、鉄構ともに伸びており、特に鉄構部門の受注高は前年度が少なかったこともあり大幅増となった。
 20年度は橋梁保全工事の受注強化を目的に立ち上げた「保全工事検討委員会」の取り組みにより、阪神高速道路から上部耐震補強工事(2020-1-神・西宮)を受注した。同工事は施工数量を一定規模有する区間の工事を包括して契約する「維持修繕工事包括契約方式」の試行工事。当初発注工事に加え、後発工事については施工者が現場条件・調査結果などを踏まえた設計・施工計画を基に参考見積書を作成し、協議の上で契約する。こうした包括的な保全工事の受注は今後増えていくと思われるため、今回の受注を機に、鋼橋新設とともに保全工事に対応できる体制の構築に力を入れていきたい。
 ――今年度の見通しは
 髙橋 今年度の新設鋼橋発注量は、コロナ禍の影響などで発注に至っていなかった潜在的需要をベースとした回復を期待している。また、鉄構部門では再開発事業などを中心に動きが出てきた。ただ、鋼材の急騰と納期の長期化が来年度以降製作分の受注に影響を及ぼしており、先行きに不安材料がある。また、溶接材料など副資材の価格も上昇しており、製作作業においても経費負担が増加する見込みの上、納期の長期化により製作工程が遅れるなどの影響を懸念している。
 ――設備投資計画は
 髙橋 ブラスト工場の更新が今年度中に完了し、22年4月に稼働する。また、この工場に隣接して全天候型塗装工場を新設する計画を進めており、22年8月に完成する予定だ。こうした設備の完成により、品質の安定化に加え、天候の影響を受けずに塗装作業を含む日程を組むことができる。鋼材納期の長期化などにより製作期間が圧縮された場合にも対応がしやすくなる。
 設備投資としてはこのほか、30年近く稼働している設備の更新などを進めている。


阿賀ICランプ橋第2現場写真

 ――課題への対処法は
 髙橋 製作から施工までの生産性向上を一層進める必要がある。このため、橋梁製造部の生産技術課を生産技術部として独立させた。工場設備の保守点検や更新のみではなく、DX活用推進をこれまで以上に進めていく。DX活用の例としては、橋梁保全工事の測量におけるIT機器の活用などのほか、MR(複合現実)技術を使って3D実寸モデルを施工現場に投影し、施工計画の確認や地域への工事説明に利用する取り組みを実施している。こうした技術を製作部門にも活用し、作業の効率化、安全と品質の向上につなげることなどを検討したい。
 加えて、技術者の高齢化が進む中、人材の育成も重要な観点となる。新入社員のみではなく、契約社員の正社員化や中途採用の拡充を進めており、この1年間で多くの20~30代の社員が増えた。
 また、コロナ禍を機に、働き方の多様化への対応とペーパーレス化が進んだ。ウェブ会議を活用する機会も増え、個々の事情を踏まえた多様な働き方に対応できる環境が整いつつある。
 社員がやりがいを感じ、長期間にわたって働き続けることは、会社全体の技術力向上の観点からも重要である。さらなる働きやすい環境づくりや人材の充実と技術力の向上に取り組みたい。
(聞き手=八木香織、文中敬称略)

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