2021年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ①巴コーポレーション
高付加価値の営業と併わせコストダウンPJを展開中
株式会社巴コーポレーション
代表取締役社長
深沢 隆 氏
当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。1回目は、巴コーポレーションの深沢隆社長と、日本ファブテックの野上勇社長の記事を掲載する。
――昨年度の業績は
深沢 昨年度は売上高232億円、営業利益20.5億円(利益率8.8%)となった。当社は昨年度まで完工基準を適用しており、操業度を維持できているものの、想定外の新型コロナウイルスの影響で工期がズレ込んだことが、決算に大きく響いた。ちなみに、重要視している利益率は目標値をなんとか確保できたものの、完工高は前年比26%減、営業利益は28%減となった。
――今年度の見通しは
深沢 今年度上期生産案件は、主に昨年度に受注しており、採算的には見通しが立っている。しかしながら、下期以降の生産案件は、受注段階での営利確保苦戦に加えて、鋼材費等高騰の影響が重畳され、利益確保面において厳しい展開が想定される。
令和4年度を最終年度とする中期経営三ヵ年計画『KEEP ON 3』で設定している売上高290億円には届かないものの、営業利益は設定値22億円を上回る社外発表値26億円(10.8%)は何とかクリアしたい。
ちなみに、この間は建設端境期にあり、『次のステージに繋ぐ架け橋の三年』と位置付けており、利益確保もさることながら、基盤整備、SDGs対応に注力することとしている。
問題は令和4年度であり、下期事業計画の見直しでは、次年度の展開を主眼に検討する。
――鉄構事業の現状と対応は
深沢 当社が得意とする大空間構造、特殊構造分野においても、同様に厳しい状況にあるが、実績と保有技術力を前面に、提案力などで優位受注を狙いたい。また、さらに厳しい一般鉄骨は、むやみに量目を追わず、選別受注に徹する。
東北地区の送電用鉄塔大型PJについては、激しい価格競争が展開されているが、競争力、生産能力に見合った対応を採ることとし、建築用鉄塔等で補填を図る。
橋梁は国交省、地方自治体を中心に営業を展開しているが、残念ながら大苦戦中である。しかしながら、関東地整局長表彰などの実績を活用した分任官案件、もう一歩のレベルまできている技術提案力にさらに一工夫加えることによるWTO案件の受注に向け、飽くなき挑戦を継続していく。
岐阜市新庁舎
――鉄構事業の今年度の重点取り組み項目は
深沢 高付加価値の案件を中心に営業を展開するという基本路線の踏襲に際しては、技術開発の継続強化を図り、必要とされる技術のブラッシュアップや新製品、新技術を順次市場に投入していく必要がある。
一方、メーカーとして生き残りをかけた、事業継続が可能なレベルをターゲットとした、従来のただ単に加工時間、変動費等の削減とは次元の異なる幾つかのコストダウンPJを展開中である。具体的には、大型設備投資、抜本的なマテハン見直し、システム化・DX推進等、大ナタを振うことになる。
――経営全般としては
深沢 当社グループは、既存の建設、鉄構の両事業に加え、電磁環境、風環境、油圧駆動制御装置、建設ソリューション事業等を展開しており、これらの経営資源を有効活用し、有機的に結びつけた形での新規事業創出、事業領域拡張が最大課題であると考えている。
また、経営基盤を下支えしている不動産事業においても、勝どき東地区大型再開発をはじめとする新しい局面を迎えており、さらなる展開拡大を図っていく。
――ほかには
深沢 事業継続には、「技術継承」を踏まえた計画的な若返りが急務と考えている。東京オリンピックを手本に、若手の創造力を活かした形で、グループとして抱えている100名を優に超えるエンジニアの『総合エンジニア』への脱皮に向けた支援体制の構築・整備を図っていきたい。
(聞き手=大熊稔、文中敬称略)