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価格競争から脱却、鋼橋が持つメリットをアピール

橋建協 髙田和彦新会長インタビュー「DXを積極的に推進」

一般社団法人日本橋梁建設協会
会長

髙田 和彦

公開日:2021.07.26

大規模更新WGで課題を抽出
 工種ははっきりと区別して欲しい

 ――受注金額に占める保全事業の割合が増加傾向にあるなかで、大規模更新事業などで工事の大型化にともない異工種との協業、競業が増えています。課題を含めたお考えをお聞かせください
 髙田 今年度、保全委員会のなかに大規模更新WGを立ち上げて、大規模更新事業の課題も抽出していきます。異工種との施工についても議論をしてもらいたいとの声があがってきていますので、その課題もこれから出てくると思います。
 個人的な意見となりますが、鋼橋上部工という仕事ははっきり区別してもらいたいと考えています。昔から上部工と下部工は区別して欲しいという活動をしていますが、大規模更新事業の大型工事ではさまざまな工種が一緒に出てくるので、区別をしておかないといつの間にか他業界の仕事となってしまう恐れがあります。また、発注形式も甲型(共同施工方式)で出てくることが多いですが、乙型(分担施工方式)であるとありがたいです。
 また、鋼橋業界は会社も少なく、言うべきことをしっかりと言えますので、協会でフォローできることもあると思います。

架替えは短期施工、長支間化の鋼橋にメリットあり
 自治体からの被災橋梁の復旧相談に対応

 ――異常気象によって橋梁の被災が相次いでいます。既存不適格の橋梁も含めて架替えの際の技術的な取り組みで発信することがありましたら
 髙田 先ほど、協会として価格競争的な取り組みは行っていないと述べましたが、それと同じで特殊なことはしていません。繰り返しになりますが、現在持っている我々の技術について非常にメリットがあることを強調して訴えています。架替えでは短期間施工が求められますし、流出橋梁の架替えの場合には橋脚数が少ない長支間化を図ったほうがいいわけですから、鋼橋に有利性があります。
 毎年、被災する橋梁が出てしまっているなかで、“橋守”としての社会的責務を感じています。自治体からも被災した橋梁について多くの問い合わせが事務局に来ていますので、業界をあげてしっかりと対応していきたいと考えています。


関西空港連絡橋(左)と鳴尾橋(右)の復旧工事。(弊サイト掲載済み)

 ――自治体からどのような問い合わせが来るのですか
 髙田 7月3日に静岡県沼津市の黄瀬川大橋の一部が崩落しましたが、当協会と静岡県が災害協定を締結していることもあり、静岡県沼津土木事務所から、撤去方法について相談と協力の電話がありました。会員会社に連絡して、すぐに現地に入って調査を行っています。


黄瀬川大橋の被災状況(井手迫瑞樹撮影)

個社対応が不可能なことを関係機関に要望

 ――「各種リスク管理の下での海外展開の推進」も今年度の重点活動テーマとして挙げていました
 髙田 協会の中で海外展開をしている会社は限定的になります。今年度の重点活動テーマは国内用に3つ、海外用に1つですが、あわせて3.5のイメージになります。
 国内の工事であれば発注機関に業界として要望を伝えますが、海外では基本的に個社の対応となります。しかし、1社では対応できず各社共通のものがあれば、協会として関係機関に要望を出していきます。
 過去の具体的な事例としては、2016年にバングラデシュのダッカでテロ事件があった時に国およびJICAに支援をお願いしました。現在は、コロナ対応についてお願いをしています。海外展開を推進するなかで、カントリーリスクも増えていますし、コロナのような全世界的な対応を求められることもあります。そのようなリスクに対して、協会ができることを考えていきます。

残業時間と週休二日制は目標を達成できる見込み
 若手による広報活動を積極的に推進して担い手確保

 ――働き方改革、担い手の確保の取組みについて
 髙田 協会では独自に働き方改革に向けた基本方針を定め、長時間労働の是正と週休二日制の実現に向けて段階的な目標を定めて取り組んでいます。会員各社からはそれぞれどのような状況になっているか数字をあげてもらっています。発注機関の対応によって、いずれも増減しますので状況を把握したうえで、言うべきことは言ってお願いをしていくことが協会の姿勢で、これからも継続していきます。目標については、個社の自助努力と発注機関に対する活動で、概ね達成できると考えています。


働き方改革に向けた基本方針

 担い手確保では、「みかんプロジェクト」という比較的若手による広報活動を積極的に推進しています。協会イメージキャラクターの策定やSNSの活用、PRグッズやLINEスタンプなどの作成などを行い、若い人にとって業界が身近なものとなるような取り組みを行っています。同時に、各大学や高等専門学校で技術講習会やイベントを継続して行って、次世代を支える担い手を確保していきます。


協会のイメージキャラクター「ケン・ブリッちくん」/豊田高専での出前講座

新々富士川橋での小学生を対象にした現場見学会

 現場の担い手確保も重要なこととなっています。設業界全体の問題かもしれませんが、高齢化が進むなかで、橋梁技術者は経験年数が必要なので、協会としても教育や支援をしていきたいと考えています。
 保全の現場は工期が長い傾向にありますので、多くの技術者を長期間にわたって配置しなければなりません。円滑な事業遂行のためにも、技術者の有効活用を我々も考えないとなりませんし、発注機関にも検討してもらいたいと思います。
 ――ありがとうございました
(聞き手=大柴功治)

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