道路構造物ジャーナルNET

切望していた2本の縦横軸が概成

岩手県 「距離の壁」を乗り越えて県土をさらに発展

岩手県
県土整備部長

田中 隆司

公開日:2021.07.31

北上川渡河部の橋梁架替えを2橋で実施
 新小谷木橋は5月31日に開通

 ――進捗中の主な道路事業は
 田中 岩手県内陸部から宮城県へ流れる北上川を渡河する橋梁の架替え事業を2箇所で行っているところです。

 まず、一般県道大ケ生徳田線 徳田橋工区から申します。
 盛岡市と矢巾町の境に位置する一般県道大ケ生徳田線の徳田橋については、昭和37年の架橋であるため老朽化が進行しているとともに、幅員狭小のために大型車のすれ違いが困難となっており、近隣工業団地からの生産品の搬出等に支障があることなど、円滑な交通の支障となっています。また、岩手医科大学附属病院への救急搬送ルートとしても重要な路線です。
 安全で円滑な交通機能を確保するため、新橋への架替え及び前後区間の道路改良に着手しました。事業延長は1,200m、新橋の延長は365m、橋梁部の幅員は15.0m(車道部6.5m)で両側歩道の鋼6径間連続合成箱桁橋となります。
 現在、下部工については、施工中の橋台1基の他は完成しておりまして、上部工については、今年の秋から架設予定です。令和5年度の供用開始を目指しています。進捗率は事業費ベースで55%です。

 ――一般国道397号 小谷木橋工区は
 田中 奥州市に位置する一般国道397号の小谷木橋についても、幅員狭小のために大型車のすれ違いが困難であるとともに、昭和29年の架橋であるため老朽化が進行しておりました。また、東日本大震災津波の約1ヵ月後に発生した余震により被害を受け、約4ヵ月の通行止めとなるなど、円滑な交通の支障となっていました。
 本路線は、東日本大震災津波の際に、救援物資等の後方支援活動で大きな役割を果たしたことから、県では、復興支援道路に位置付け、交通支障箇所の解消を図ることとし、当工区においては、新橋への架替え及び前後区間の道路改良に着手しました。


旧橋の供用状況/新橋の架設状況

新橋と旧橋。これから旧橋は撤去される

 事業延長は1,420m、新橋の延長は597m、橋梁部の幅員は15.0m(車道部6.5m)で両側歩道の鋼10径間連続合成2主鈑桁橋となります。
 2021年5月31日に「新小谷木橋」の供用を開始しました。今後は旧橋の撤去を行っていきます。
進捗率は事業費ベースで73%となっています。
 ――旧橋は一部トラス構造など特殊な形式を有していたのですか
 田中 橋の中央部にトラス構造があります。過去の大雨で同径間部分が沈下したため、トラス構造に架け替えたものです。これらは全撤去します。

小倉山の2工区 延長1,034mの(仮称)4号トンネルの掘削が進む

 ――主要地方道花巻大曲線 小倉山の2工区は
 田中 西和賀町に位置する主要地方道花巻大曲線の小倉山の2工区については、幅員狭小・急勾配・急カーブが連続し、また、落石や積雪による通行止めが度々発生しており、円滑な交通の支障となっています。安全で円滑な交通機能を確保するため、トンネル築造を含む、道路改良に着手したものです。

 事業延長は2,380m、幅員は7.0m(車道部5.5m)、主な構造物として、トンネル2箇所、橋梁3橋を含んでいます。そのうちトンネル1箇所と橋梁3橋については整備が完了しており、終点から900m区間の供用を開始しています。
 現在は延長1,034mの(仮称)4号トンネルの掘削を進めているところです。

小倉山の2工区

8号橋と4号トンネル坑口/4号トンネルの切羽状況

4号トンネルの覆工状況

 進捗率は事業費ベースで71%となっています。延長2,380mのうち、(仮称)4号トンネル1,034m、(仮称)5号トンネル294m、(仮称)8号橋41m、(仮称)9号橋40m、(仮称)10号橋25mで、構造物比率は約60%と高くなっています。

新小谷木橋 地域住民からの提言やアイディアを反映
 防食 塩害に配慮して部分的に増塗り

 ――特徴ある形式あるいは工法を適用している橋梁について
 田中 新小谷木橋は地域にとってシンボリックな橋でもありますので、計画段階から景観検討委員会、ワークショップなどを開催し、有識者、地元中学生を含む地域住民などからいただいた提言・アイディアを反映しており、橋上にバルコニーや橋詰広場を設置しています。開通式も地域の皆さまに参加していただき、今後も復興のシンボルとして愛されていく橋になると考えています。
 ――防食上の工夫を施した橋梁はありますか
 田中 徳田橋では、ライフサイクルコストを考慮して、新橋の上部工に耐候性鋼材を使用しているとともに、箱桁内面塗装の上塗りを1層増し塗りし、塗膜厚を増厚することにしています。
新小谷木橋においては、グレーチング床版の防錆処理や、桁塗装の上塗りを1層増し塗りし、塗膜厚を増厚しています。

2,776橋を管理 PC橋が最多で868橋
 供用後50年以上経過した橋は1/3、10年後は過半数に

 ――保全について、まず管内の橋梁・トンネルの内訳からお願いします
 田中 岩手県では2020年末時点で2,776橋を管理しており、橋種別内訳は鋼橋が615橋、PC橋が868橋、RC橋が645橋、溝橋(ボックスカルバート)が630橋、その他(混合橋、木橋)が18橋で、PCが若干多いですが、主要橋種はおおむね同程度ずつの比率となっています。

 ――供用年別で見ると古い橋が多くなっていますね
 田中 供用後50年以上経過した橋が現時点で3分の1程度であり、10年後には過半数となります。
 ――橋長別では
 田中 100m以上の長大橋が224橋、50m以上100m未満が315橋となっています。50m未満は2,237橋となっています。

174個所のトンネルを管理 矢板工法が83個所を占める
 建設後40年以上経過している個所は60個所

 ――同様にトンネルは
 田中
 当県が管理するトンネルは2020年末時点で174個所あり、工法別では矢板工法が83個所、NATM工法が90個所、その他(矢板工法のトンネルの一部をNATM工法で改良)が1個所となっています。
 供用年別では、50年以上経過箇所は16個所と少ないものの40年以上経過している個所は60個所と急激に増えます。こちらも予防保全的な対策が必要です。
 延長別では1,000m以上が18個所、500m以上1,000m未満が23個所、500m未満が133個所となっています。

橋梁 判定区分Ⅲは8%の212橋 供用後40年超では1割が区分Ⅲ
 橋種別では鋼橋、とりわけ支承および床版で損傷

 ――点検を進めてみての管内各路線の橋梁の劣化状況について詳しくお答え下さい
 田中 一巡目の点検は終わっており、2019年度から2巡目の点検を実施しています。(2巡目1年目の2019年度も合わせた)直近5年間の点検結果では、早期に補修が必要である判定区分Ⅲに該当する橋梁は約8%の212橋となりました。判定区分Ⅳはありませんでした。判定区分Ⅱは約55%の1,538橋、Ⅰが約32%の889橋でした。

橋梁定期点検における健全度と供用年次別健全度

橋種別点検結果

 ――判定区分Ⅲの内訳は
 田中 建設年数が 40 年を超えた橋梁で判定区分Ⅲの割合が 10%以上と高くなっています。橋種別では鋼橋のほうがコンクリート橋に比べて高くなっています。鋼橋の部位別では、とりわけ支承の損傷割合が9%と高く、次いで床版(6%)となっています。岩手県特有の事例として考えられるのが凍結防止剤の散布による塩害を起因とした腐食の進行があるのではないか、と考えています。
 PC橋はおしなべて損傷が少ない状況です。RC橋は主桁や床版、下部工で損傷が比較的多く出ています。


鋼橋の損傷状況 左写真:(一)矢巾西安庭線白根沢橋、右写真:(主)上米内湯沢線松野橋

トンネル 判定区分Ⅲは27%の48個所 40年経過箇所で区分Ⅲが5割超
 工種別では矢板工法の区分Ⅲが4割を超える

 ――トンネルについて損傷状況は
 田中 判定区分Ⅳはありません。Ⅲが約27%の48個所、Ⅱが約61%の106個所、Ⅰが約7%の12個所となっています。トンネルも供用後40年を超えた箇所で判定区分Ⅲが5割を超える状況となっており、明確な傾向が見えます。

トンネル定期点検における健全度と供用年次別健全度
 工種別では、判定区分Ⅲの割合が NATM 工法で約 16%に対して、矢板工法では約 41%と高く、特に、矢板工法の40年超のトンネルで判定区分Ⅲの割合が50%以上と高くなっています。

トンネル定期点検における健全度と供用年次別健全度(NATM工法)

トンネル定期点検における健全度と供用年次別健全度(在来矢板工法)

 ――トンネルの損傷の仕方はどんな状況ですか。目地部に沿った損傷なのか、それとも道路軸方向に沿ったひび割れが確認される損傷が見られるのか教えてください
 田中 トンネルの損傷は、目地部等の初期損傷・施工方法に起因した損傷が多くなっています。

国道455号岩谷トンネル坑口の損傷状況/国道107号柏里トンネル内部の損傷状況

橋梁耐震 9割で対策を完了
 今年度は8橋で落橋防止対策などを進める

 ――橋梁など耐震補強の進捗状況、および落橋防止装置の設置状況は
 田中 本県では、県の政策推進の方向性や具体的な取組を示す県の総合計画である「いわて県民計画(2019~2028)」において、具体的推進方策のひとつとして「災害に強い道路ネットワークの構築」を掲げ、災害時に迅速な避難・救急活動や緊急物資の輸送等が行えるよう、緊急輸送道路の橋梁の耐震化に取り組んでいるところです。
 緊急輸送道路上に耐震化が必要な複数径間を有する橋長15m以上の県管理橋梁が約360橋存在しますが、2020年度末までに約330橋(約9割)の耐震化が完了しています。引き続き、残る未対策橋梁約30橋の耐震補強を推進していきます。
 2021年度は、国道340号堂道橋(宮古市)、国道343号広桶大橋(陸前高田市)等の緊急輸送道路上の8橋で落橋防止装置の設置を進める予定です。

橋梁長寿命化 修繕着手率は84%、修繕完了率は23%
 2021年度は155橋で修繕対策を進めていく

 ――橋梁の長寿命化計画にもとづいた対策の進捗状況について
 田中 2020年度に改定した計画に基づいて行っています。判定区分Ⅲの橋梁を5年以内に修繕することを明確にしているわけですが、2020年度までに48橋(約23%)の修繕が完了しています。それ以外の大部分の橋梁についても設計に着手しておりまして、修繕着手率としては84%に達しています。
 2020年12月に閣議決定された「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」では、重点的に取り組むべき対策として「予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策」が位置付けられ、早期または緊急に措置すべき施設の老朽化対策を実施し、ライフサイクルコストの低減や持続可能な維持管理を実現する予防保全による道路メンテナンスに移行することが中長期の目標とされたところです。加速化対策初年度の予算として、国の2020年度第3次補正予算で、(岩手県の)橋梁の老朽化対策に道路メンテナンス事業補助で約14億円が予算措置されたところであり、加速化対策の予算も活用し、長寿命化修繕計画に基づく判定区分Ⅲの施設への対策を重点的に進めて行きます。
 ――橋梁補修・補強の2020年度の実績と21年度の予定は
 田中 国の予算措置も含めて2020年度の補修補強の予算は全体で約109億円と対前年度比4割増となりました。判定区分Ⅲ(早期措置段階)の橋梁を中心に、国道106号近内橋(宮古市)等121橋の修繕等を実施しています。
 2021年度は、「道路メンテナンス事業補助」で約52億円が予算措置され、国道343号板木橋(一関市)等108橋の修繕等を推進していく予定(2020年度の繰越予算を含めると155橋)です。

床版打替実施例① 国道343号板木橋

床版打替実施例② 国道282号赤川橋

トンネル 修繕着手率は85%、修繕完了率は10%

 ――トンネルの点検状況、トンネルやのり面について橋梁のような長寿命化修繕計画を企図した補修補強計画の進捗状況を教えてください
 田中 本県では、橋梁のほか、法定点検対象施設であるトンネル及び大型道路構造物(シェッド等、大型カルバート、横断歩道橋、門型標識等)について、長寿命化修繕計画を策定しています。両計画共に、計画期間は2020~24年度までの5年間としています。
 トンネル及び大型道路構造物については、原則、判定区分Ⅲの施設のみ修繕を実施することとし、維持管理目標として、法定点検から5年以内(次回法定点検まで)に対策完了することを掲げています。
 トンネルについては、2015~19年度までの直近5年間の法定点検で判定区分Ⅲ(早期措置段階)と判定されたトンネルが48箇所のうち、2020年度末までに5箇所の修繕が完了し、修繕完了率は約10%となっています。
 大型道路構造物については、2015~19年度までの直近5年間の法定点検で判定区分Ⅲ(早期措置段階)と判定された施設が50箇所存在します。2020年度末までに2箇所の修繕が完了し、修繕完了率は約4%となっています。
 厳しい財政状況の中、これまで橋梁の修繕等を優先して実施してきたことから、橋梁に比べてトンネル及び大型道路構造物の修繕完了率が低い状況となっていますが、2020年度から道路メンテナンス事業補助を活用し、トンネル及び大型道路構造物の老朽化対策を本格化しました。
 判定区分Ⅲで2020年度まで(過年度を含む)に修繕に着手(設計着手)した施設は、トンネルで41箇所(修繕着手率約85%)、大型道路構造物で19箇所(修繕着手率約38%)となっており、対策を着実に進めています。
 国の2020年度第3次補正予算(道路メンテナンス事業補助)では、トンネルの老朽化対策に約5億円、大型道路構造物の老朽化対策に約3億円が予算措置されたところであり、加速化対策の予算も活用し、長寿命化修繕計画に基づく判定区分Ⅲの施設への対策を重点的に進めて行きます。

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