道路構造物ジャーナルNET

明神山トンネルの掘進進む 双海橋などを含む橋梁はまず仮設道路から

NEXCO西日本 愛媛 現場まで入るのに仮橋1kmを要する難工区

西日本高速道路
四国支社 愛媛高速道路事務所
所長

田中 満

公開日:2021.02.24

耐震補強は3件を工事発注
 繊維シート補強など施す

 ――耐震補強の進捗状況は
 田中 2016年4月に発生した熊本地震における橋梁の被災状況を踏まえ、被災後速やかに緊急輸送が可能となるよう橋梁の耐震補強を進めています。
 耐震補強の設計を行い、設計完了後、順次工事を発注し現地に着手しており、現在は3件の工事契約に至ったところです。
 具体的には いよ小松JCT~入野PA間にある長谷川橋、畑野橋、市場川橋他3橋の耐震補強などです。

長谷川橋

長谷川橋(上り線)補強一般図

長谷川橋(下り線)補強一般図

耐震補強実施例(畑野橋)

 ――どのような形式の橋梁ですか
 田中 PC桁橋と鋼鈑桁橋、鋼トラス橋の補強です。橋脚の耐震補強等を行う予定で、炭素繊維シートなどにより補強します。併せて落橋防止装置の取付け等も行います。
 ――ロッキングピアやロッカーピアを有する橋梁の耐震補強はありますか
 田中 管内に同形式の橋梁はありません。

鋼上路式トラス橋など7橋の特殊橋を管理
 耐震補強の設計が進捗

 ――特殊長大橋の耐震補強は
 田中 トラス橋が3橋、コンクリートアーチ橋が3橋、鋼方杖ラーメン橋が1橋あります。昭和55年道示により設計された浦山川橋は、橋長412mの長大橋ですが、複合的な橋梁で、PC(3+2)径間プレテン連結合成I桁橋(81.7m+54.3m)、単純鋼上路トラス橋(70m)、PC2径間連続ポステン合成I桁橋(66m)、RC8径間連続中空床版橋(140m)という形式です。橋脚に対してはRC巻立て、またはアラミド繊維シート巻立て、落橋防止装置の設置などを行います。また、トラス部については、支承交換や制震ダンパー及び段差防止構造の設置などを行います。

浦山川橋



浦山川橋(上下線)耐震補強側面図

 関川橋も橋長75mの単純鋼上路式トラス橋で、浦山川橋と同様の耐震補強を行う予定です。

関川橋

関川橋上下線耐震補強側面図

 長谷川橋は橋長272mの鋼橋ですが、形式は側径間が鋼3径間連続鈑桁橋(92m、95m)、中央径間が85mの単純鋼上路式トラス橋です。橋脚に関しては炭素繊維シートによる巻立て補強を行い、支承交換やダンパーの設置、落橋防止装置や段差防止構造などを施工する予定です。
 他、上下線とも鋼3径間方杖ラーメン橋(上り120.5m、下り121m)の梶橋、上下線とも176mのRC逆ランガーアーチ(アーチスパンは123m)の天子川橋、鋼3径間連続逆ローゼ桁橋(上り226m、下り198m)の桜樹橋などがありますが、これらについては動的解析による照査を進めています。

梶橋

天子川橋

桜樹橋

塗布系の桁端部防水の施工を検討

 ――支承取替や、ジョイントの取替およびノージョイント化について今年度の施工予定箇所数と取替える際の工法・種類を答えてください
 田中 伸縮装置は4箇所で取替を予定しています。既設ジョイントと同形式で更新する予定で、荷重支持型および埋設型ジョイントが2箇所ずつとなっています。

MMジョイントを一部で採用している

 ――ASRや塩害を起因とした損傷の有無とその劣化状況は
 田中 ASRに起因した損傷はありません。塩害については大洲北只IC~西予宇和IC間で標高330m、伊予IC~内子五十崎IC間で標高320m、いよ小松IC~川内IC間で標高270mといった箇所があり、冬季には降雪があることから、凍結防止剤の散布に起因した腐食やひび割れ鉄筋の腐食が出ています。主に伸縮装置またはその前後の後打ちコンクリートからの漏水や床版からの(凍結防止剤を含む)浸透水により、桁端部や下部工などが損傷していますが、程度はそれほど大きいものではありません。
 対策としては、ひび割れ注入や断面修復をした上に塗布系の桁端部防水(防水ライニング)の施工を検討している状況です。

旧タイプのグラウンドアンカーを新タイプに取替え
 法面で異常降雨に備えた排水強化を計画

 ――大規模更新や大規模修繕事業の実施状況は
 田中 橋梁やトンネルの対象箇所はありません。
 但し、切土法面の安定対策として過去に設置した旧タイプのグラウンドアンカーの施工箇所に対し、防食性能を有した新タイプのグラウンドアンカーによる施工を土居IC~川内IC間の1箇所で実施しています(下図表参照)

 法面において異常降雨に備えた排水強化を計画しています。切土法面は排水溝の越水・跳水対策を行い、盛土法面は法尻部の排水機能を向上させるため、水抜きボーリングおよびふとんかごの施工を検討しています。

 鋼橋塗替え 東種子川橋で1万㎡を塗替え 塗膜剥離剤を使用

 ――鋼橋の塗替えは
 田中 松山自動車道の東種子川橋で1万㎡の塗替えを行いました。既設塗膜は鉛を含んでいたので、塗膜剥離剤を塗布し、軟化させてスクレーパーで剥がして除去し、ブラストで素地調整して1種ケレンを施した上でC塗装系により塗替えました。塗膜剥離剤はリペアソルブSを用いました。

リペアソルブSを塗膜剥離剤

塗替え塗装状況

耐候性鋼材使用した鋼橋は管内に2橋
 悪性錆を除去するためその方法について慎重に検討

 ――耐候性鋼材を用いた鋼橋の有無と、その劣化状況、補修方法についてお答えください
 田中 管内には耐候性鋼材を用いた鋼橋は烏谷橋と宿茂高架橋の2橋です。損傷程度は、宿茂高架橋が健全度Ⅱ、烏谷橋が同Ⅲとなっています。床版の打継目から漏水が生じ、それにより主桁に錆が発生しているものです。そのため止水処理のため、先行して床版防水を行い、今後、悪性錆が生じた箇所はブラストで除去して塗装を施す予定です。
 ――耐候性鋼材の悪性錆をブラストで除去することは非常に難しいと言われていますが、どのような方法で除去するのですか
 田中 悪性錆を完全に除去しなければ、錆が再発してしまう可能性がありますので、グループ会社とその方法について慎重に検討しています。また、補修及び塗装の際にせっかく足場を組みますので、劣化が進む可能性のある個所については、予防保全として塗装などを施すことも考えています。
 ――異常気象が全国的に相次いでいますが、その対策について。四国支社管内においては、立川橋の落橋もありました。同橋は当初の山の状況では落橋は考えられませんでしたが、木の生長により地表面の土砂が崩落し、今回の災害で運悪く橋に土砂などが載って、橋を弾く形で回転させた可能性が指摘されています。そうしたことも含めてお答えください
 田中 立川橋の落橋は、区域外からの大規模な土砂崩落により、橋梁上部工が流されるということについて認識させられた事案でした。松山道においても山裾を通っていますので、立川橋と同様な地形箇所がないか? という点については、グループ会社での構造物の点検、あるいは年1回の社員による全線の点検の過程において、危険個所の把握に努めていきたいと考えています。但し、本線外について危険対策することは、我々だけではできませんので、他機関と協議し必要な対処を行っていきたいと考えています。
 ――ありがとうございました
(2021年2月24日掲載)

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