道路構造物ジャーナルNET

明神山トンネルの掘進進む 双海橋などを含む橋梁はまず仮設道路から

NEXCO西日本 愛媛 現場まで入るのに仮橋1kmを要する難工区

西日本高速道路
四国支社 愛媛高速道路事務所
所長

田中 満

公開日:2021.02.24

 NEXCO西日本四国支社愛媛高速道路事務所は松山自動車道のうち約140kmと今治小松自動車道約13km、合計約153kmの区間を所管している。その維持管理に加え、現在は伊予IC~内子五十崎IC間の伊予市双海町上灘~同市三秋間約6.3kmおよび内子五十崎IC~大洲IC間の一部約4.4kmと中山スマートIC~内子五十崎IC間の一部約9.7kmの4車線化等事業についても今後進捗を図っていく。その内容について、田中満所長に聞いた。(写真や図表は全てNEXCO西日本提供)(井手迫瑞樹記者)

管内全体で約153kmの高速道路を管理
 伊予IC~内子五十崎IC間の一部約6.3kmの4車線化が先行

 ――管内の地勢的特徴と高速道路網の現状
 田中 管内全体では約153kmの高速道路を管理しています。内訳は松山自動車道の三島川之江IC~大洲IC間(124.0km)および一般国道56号を挟んで、大洲北只IC~西予宇和IC間(15.7km)と、松山自動車道のいよ小松JCT・IC~今治小松自動車道の今治湯ノ浦IC間(13.0km)です。高速道路に関する維持修繕、あるいは点検、料金収受などを担当しています。
 一方、建設改築事業としては、伊予IC~大洲IC間の間で3区間の4車線化等事業を行っています。昨年3月21日に中山スマートICが開通しまして、現在は、伊予IC~内子五十崎IC間の伊予市双海町上灘~同市三秋間約6.3kmの4車線化等事業を進めており、発注率は100%となっています。内訳としては明神山のトンネル工事、東峰工事、双海橋など橋梁の上部工工事を実施しています。同区間は工事が全面展開しております。
 残りの2区間(内子五十崎IC~大洲IC間の一部約4.4kmと中山スマートIC~内子五十崎IC間の一部約9.7km)については昨年度までに事業化されており、現在、工事発注のための調査設計を行っています。

構造物はトンネルが約2.6km、橋梁が約0.7km
 明神山トンネルの掘進が佳境

 ――先行して4車線化を進めている約6.3kmの構造物ごとの延長は
 田中 土工が約3.0km(約48%)、トンネルが約2.6km(約41%)、橋梁が約0.7km(約11%)です。橋種比率は、鋼橋が約500mで約71%、PCが約200mで約29%となっています。
 ――今年度および来年度、着工および施工中、完成予定の橋梁・高架、トンネルは
 田中 まず、管内最大の構造物である明神山トンネルから申し上げますと、延長2,545mのうち12月末現在で約2,040mの掘削を終えています。掘削方法は発破掘削及び機械掘削です。
 ――南坑口近くの掘進方法はNATMですか
 田中 そうです。地山が柔らかい箇所の掘削は爆破ではなくて、例えばバックホウやブレーカーなどの機械掘削も併用しています。

地滑り区域に該当するため慎重な掘削が必要
 南坑口は抑止杭や集水ボーリング、本体は発破掘削から機械掘削

 ――なぜそうした掘削方法を採用したのですか
 田中 南坑口(柆野(くいの)地区)付近が地滑り地域に該当します。分厚い崩積土のところにトンネルが顔を出してきます。地盤の中の劣化が進んでいるため、岩盤が弱くなっている部分が長い区間に渡っています。そのため機械掘削で施工が可能ですし、坑口付近も対策をしながら施工していく必要があるためです。

明神山トンネル南坑口の施工状況

 ――同じように坑口付近の地盤が脆かった常磐道の大久トンネルでは掘進と押え盛土、抑止杭の施工を並行しながらトンネル掘削をしていましたが、そうした対策は施しているのですか
 田中 先受け工法も必要であると考えています。施工しながら工法が変わっていく可能性もあります。1期線時の施工記録だけでなく、新規にボーリング調査を行い、ご指摘になった方法も視野に入れ検討を行っております。例えば湧水の有無でも対応は変わりますので、様々な可能性に素早く対応できるように施工していきたいと考えています。
 南坑口の地滑り対策としては、φ550mmの抑止杭を3か所に90本打設しています。杭長は最大で30mを超えます。その他に集水ボーリングも数か所で施工しています。

明神山トンネル南坑口の地滑り対策

 明神山トンネルは北側から掘っています。途中までは固い地盤であるため発破掘削で施工していますが、残り250mを切るぐらいから、地盤が悪い予想になっています。これまでの掘削区間では概ね設計通りの地質で推移しています。日々地山の硬さ、亀裂、割れの程度を確認して判断しながら、機械掘削に変えていく予定です。
 南側坑口から双海橋付近に至るまで地滑り地帯になっています。家屋がある下側に2期線の坑口が出てきますが、竹林化しており、愛媛県も地滑り防止区域に指定されています。同地は1期線の時も地滑り防止対策を行っています。1期線では集水ボーリング、抑止杭の施工を行っておりますが、2期線では1期線と同様の対策+αを考えて対策を行っていきます。
 南坑口では抑止杭の施工に着手しました。杭を打つためには作業構台が必要になりますが、現在はそれを作っている最中です。

双海橋 1期線の逆ランガーアーチをバランスドアーチに
 仮設道路は軽量盛土工法、Sqcピア、LIBRAを採用し施工

 ――双海橋について1期線と変わることは
 田中 1期線時(双海橋の隣接する1期線の橋)は、PC箱桁のRC逆ランガーアーチ橋ですが、2期線の双海橋(橋長232.3m、幅員9.31m、PC4径間連続バランスドアーチ橋)は1期線の間近に近接して作りますので、地滑り地帯にあることと相まって、下部工の施工においては地山を緩めず、1期線に影響を与えない様な施工が必要となります。従って1期線と若干、橋長およびスパン割は変わっています。
 現在は詳細設計を進めています。
 

双海橋 基本設計

 それとは別に、地滑り対策を要する箇所がありますので、国道から進入路を設けて1期線の時と同じように仮設道路を作り、橋梁の下部工に着手していきます。進入路は大規模な仮橋が必要となり、仮橋までのアプローチ盛土には、一部軽量盛土工法を採用し施工します。軽量盛土工法を用いるのは地滑り地帯の地盤に負担をかけたくないためです。仮橋だけで1km近くに達します。
 ――こうした箇所に使う仮橋は特殊なものが要求されそうですが
 田中 仮橋の高さやスパンに対応して、Sqcピア工法およびLIBRA工法を併用します。


仮橋や盛土によって仮設道路を構築しながら施工を進めて行く

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