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20km弱の新北陸トンネル、北陸自動車道跨ぐ橋梁も

2021年新春インタビュー④ JRTT大阪支社工事第四部 北陸新幹線のうち約40kmを所管

独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
大阪支社 工事第四部長

伊藤 常正 氏

公開日:2021.01.01

先に門型橋脚の柱をつくって横梁を後で一括架設
 PC桁を架設を遅らせ鋼桁を送り出す

 ――橋脚を梁までつくらずに柱だけつくって、梁とPC桁を架設せずに鋼桁のクリアランスを狭くして、最終降下の時間を短縮したのはすごいと思いましたが、これはJRTT側の考えなのですか
 伊藤 NEXCOさんとの協議で、門型橋脚の施工にともなう通行止めの日数を減らしたい、また道路面への影響をなるべく抑えたいというのがあり、JRTTと請負者(JV)で検討していくなかで、先に門型橋脚の柱をつくって横梁を後で一括架設するという方策に至りました。

 ――PC桁の柱だけをつくりPC桁を架設せずに鋼桁を送り出すことで、ジャッキダウン量を5,500mmから600mmに減らしました。ただ、PC桁や下部工の工程を犠牲にして行われているわけで、JRTTの強いリーダーシップがないとできないと思います
 伊藤 柱の上の部分まですべて立ち上げてしまうと降下量が増えて、降下にともなう通行止めが2~3日となってしまいます。そこで、下部工施工者との調整や全体工程を見通した上で関係JVを集めて打ち合わせをして、その結果、今回の方策が可能と判断して実施しました。

(左)橋脚の梁部とPC桁部は鋼桁架設時の降下量を減らすため後回しにした(井手迫瑞樹)
(右)送り出しに使ったダブルツインジャッキ

 ――鋼桁部分の上部工側としては工期も短縮できるし、降下量を減らせれば安全面もより確保できるので利点が大きいです。しかし、下部工側は大変になります
 伊藤 全体工程が守れるという見通しができたことと、本当に下部工施工者の協力があってこその方法だったと思っています。施工者には大変感謝しています。これからの橋脚梁部の施工とPC桁の架設はクリティカルな工程になっていきます。
 ――武生架道橋架設取材時に下部工施工者とも話しましたが、これからの工期を取り方が大変だということを言っていました。下部工やPC桁架設に対するJRTT側の配慮は
 伊藤 柱頭部の施工時には足場設置が必要です。その足場を下から組み立てていくと時間がかかってしまうので、ブラケット足場を採用して工期短縮を考えました。その後、工程精査をするなかで、ブラケットではなくても総足場でも大丈夫だという見直しがかかっています。また、PC桁をプレキャストセグメント桁で設計することにより、工程短縮に寄与しています。
 ――セグメントの製作場所は
 伊藤 工場で製作したものを現場に搬入して組み立てています。
 ――道路橋ではセグメントキーは重要になってきますが、鉄道橋でもセグメントの誤差は厳しいのですか
 伊藤 工場製作時に、接合部はオスとメスのキーを組み合わせればきっちりとはまるようにつけた状態で現場に搬入しているので、接合時に大きな誤差が出ないものとなっています。
 ――武生架道橋の橋脚とPC桁の完成目途は
 伊藤 合成桁の前後のPC桁の最終完成は来年の夏ごろを見込んでいます。
 ――北陸新幹線の金沢地区の橋梁では、鳥居先生の指導もあり、塩害対策と過密配筋の流動化対策で高炉スラグではなくフライアッシュをかなり採用したことを聞いていますが、福井管内でもフライアッシュを混入させたコンクリートを採用していますか
 伊藤 福井県内でどこまで採用したかは把握していませんが、少なくとも鋼製桁の床版には採用していません。鉄道建設所によっても違いがあると思いますが、越前鉄道建設所管内の地場の生コンプラントではフライアッシュを扱えないところが多いです。その代わり、骨材のアル骨反応を確認したうえで、使用しているケースが多いです。
 ――今回、フライアッシュは使っていないということですね
 伊藤 少なくとも武生架道橋では使用していません。
 ――北陸新幹線ではエポ鉄筋を採用しているところもありますが、福井管内では
 伊藤 採用していません。
 ――塩害は想定していないということですか
 伊藤 海岸からは離れていますので、塩害ということでは対象外です。

長期防錆型塗装系を採用
 PC桁端部にCS21などを含浸

 ――構造物の長寿命化を考慮した材料の採用や、今後の点検を容易にするためのモニタリングなどの工夫は
 伊藤 特にありませんが、(あえて言うならば)塗装は道路上となり塗替えが難しいので、長寿命となる塗装をしています。
 ――具体的には
 伊藤 長期防錆型塗装系を採用しており、第1層の溶射に加えて、第2層と第3層にポリウレタン樹脂塗料を工場で塗装しています。
 ――コンクリートの予防保全で北海道新幹線ではシラン系や珪酸塩系塩の含浸材を塗布する取り組みを行っていますが、北陸新幹線では
 伊藤 北海道新幹線では散水区間にコンクリート改質剤CS21を橋面上に塗布してコンクリートを緻密する取り組みをしています。東北新幹線の八戸~新青森の建設時から始めていますが、今回の北陸新幹線では行っていません。
 ――含浸材は使用していないということでしょうか
 伊藤 含浸材はPCの端部(縦締め箇所)の防水工にCS21およびCS21よりランクアップした塗布系防水材を使用しています。


CS21および塗布系防水材

 ――高速道路や一般道を跨いでいる橋梁は基本的に鋼橋でしょうか
 伊藤 場所と橋長によって違います。PC橋もありますし、支間長が比較的長い箇所は合成桁になっています。
 ――コンクリート桁の場合、剥落の可能性を考慮してJR東日本などでは剥落防止工を行っていますが、北陸新幹線は
 伊藤 確かにJR東日本さんでは剥落対策として、ポリプロピレン系の繊維をコンクリートに入れていますが、北陸新幹線ではとくに行っていません。
 ――NEXCOが採用しているSAMシートのようなシート系の対策は
 伊藤 それも行っていません。
 ――剥落防止対策は行っていないということでよろしいですね
 伊藤 はい。

覆工コンクリートの品質確保 FILM工法を採用

 ――密実なコンクリートを打設していますし、プレキャストセグメントなので、剥落が起きるとは思いませんが、記憶の新しいところでは山陽新幹線で剥落がありました。それ以後、建設時の対策としてJR各社では剥落防止工を行っている場合がありますし、在来線の連続立体交差でも対策をしながらの施工になっているので聞きました。覆工コンクリートの品質確保についての対策は。NEXCOでは中流度コンクリートを採用していたり、東北の復興道路ではJR東日本にもいた細田先生が座長になってさまざまな品質確保の取り組みを行っています
 伊藤 北陸新幹線に限りませんが、新幹線のトンネルに関しては防水シートの施工でFILM工法を採用しています。これにより、覆工の巻厚が均質になり、覆工コンクリートの全体の品質が向上していると考えています。巻厚の誤差が少ない、覆工の充填不足が起きにくいことによる品質向上となります。


FILM工法の採用状況

 ――最近はNEXCOなどで、非常に機械化された覆工コンクリートの施工方法が各地で行われていますが北陸新幹線での実施例は
 伊藤 そのようなものは使われていないと思います。ただ、コンクリート打設後にバルーンで養生することは各工区で行われています。
 ――養生時間は長く取っているのですか
 伊藤 バルーン養生で必要な強度が出るように養生期間は確保しています。

養生台車全景/同台車内部

 ――現場立ち合いのIT化は
 伊藤 北陸新幹線では通常の立ち合いで現場を確認しています。
 ――今後、ITを活用した立ち合いは考えていますか 
 伊藤 考えていきたいと思います。
 ――ありがとうございました

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