道路構造物ジャーナルNET

阪神高速道路の維持管理を一気通貫する総合調査コンサルタント

内外構造 JR西日本やNEXCO西日本の業務も一部担う

内外構造株式会社
代表取締役社長

安田 扶律 氏

公開日:2020.10.19

阪神高速時代は阪神淡路大震災の復旧に従事
 見えない基礎杭の健全度を見える化

 ――総合調査コンサルタントの舵取りを担う社長ご自身の経験について教えてください
 安田 当時の阪神高速道路公団に入社後、計画調査部門、長大橋を含む湾岸線の橋梁設計など主に建設部門に携わっておりました。
 阪神淡路大震災の時は、設計課におり、倒壊した橋梁や、橋脚などの調査の統括をしていました。現場から上がってきたデータを設計に反映するのが仕事でしたが、何しろ今までになかった事例であったため、建設省や土木研究所(以降、土研)から全国的な耐震設計に生かすためにデータを求められ、現場の調査を整理した上で、その結果をご説明しました。
 阪神高速でも、阪神大震災のような地震に備えた設計をし直す必要がありましたので、復旧設計基準の策定に携わりました。
 どうしてピルツ構造の橋梁が倒れたのか、既存の橋脚が曲がってしまったのか? 地震そのものが一つの大きな実証実験ともいえるのですが、その再現実験を土研と一緒に共同研究として取り組みました。その結果は道路橋示方書の耐震基準に反映されています。
 震災は湾岸線が開通した直後に起こりました。橋脚や桁は損傷が分かりやすく、対応もしやすいのですが、湾岸線は阪神地域を通る埋立地という軟弱地盤層に建設されています。「見えない」基礎杭は長く、その健全性が懸念されました。杭の調査は短いものですと掘り出して確認しますが、湾岸線は杭長が長いものですから、杭に小さい孔を明けて、その中をカメラで覗く手法を用いて、ひび割れの調査を行いました。その結果、一部増杭が必要な個所はありましたが、大半はひび割れが入っているものの、耐力的には大丈夫であることが確認されました。実は、直前に私もかかわっていたのですが、基礎耐荷力を調査するための実杭試験を行っていました。耐力調査はこの試験結果を基に可否判断しました。

 ――阪神大震災の復旧は、青息吐息であった土木用途の炭素繊維補強材が一気に耐震補強用途に採用されるきっかけともなりました
 安田 損傷が激しかった橋脚については土研と一緒に解析や実験を行い、コンクリートを拘束する効果が当時の鉄筋量では不足していたため、補強する必要がありました。ファーストチョイスは鋼板巻き立てでしたが、震災当時は重量や施工速度の点でさらに優れた材料が求められていました。炭素繊維補強シートを取り入れるに当っては、池田延伸線で試験施工を行いました。施工性で優れていることは理解していましたが、性能については、当時は実験室レベルでしか確認しておらず、さらに耐候性については未知であったためです。それらをクリアにしながら、使用にゴーサインを出しました。炭素繊維シートはヤードも取らず、ハンドリング性も良かったため、その後は急速に採用が拡大しました。

稲荷山直下のトンネル建設にも参画
 保全交通部長として大規模更新・改築事業計画の策定に関わる

 ――その次に携わったのは
 安田 京都観光名所の伏見稲荷大社のある稲荷山での京都高速道路トンネル掘削です。同大社のご神体は稲荷山であり、その下に新十条通り沿いに山科から鴨川東までトンネルを掘りました。ご神域ということもありますし、トンネル直上には滝があって、行場というか信仰の対象(白瀧社)になっていました。岩質がそれほど悪くないということもあって、NATMで施工しました。若干湧水も出ましたが、大過なく施工できました。私は、最初の掘削から現場事務所で専門役として担当し、浸透流解析により周辺への影響を確認したり、情報化施工による施工を行いました。
 ――その後は
 安田 技術部に異動して人材育成などを担当し、次いで阪神高速技術に出向して、2012年に本社の保全交通部長として戻りました。
 保全交通部では、部長就任後間もなくの2012年12月に中央自動車道トンネル天井板落下事故が発生し、トンネル天井板等の緊急点検をはじめとして阪神高速インフラ構造物の安全総点検を実施しました。これを契機に、世の中的にも「社会資本メンテナンス元年」としてインフラ構造物の老朽化にスポットがあたるようになり、道路法改正に伴う点検基準・マニュアルの見直し整備を行うとともに、阪神高速インフラ長寿命化のための大規模更新・改築事業計画の策定に取り組みました。
 具体的には修繕・更新の委員会を立ち上げて、その中で具体的案件を提出するのが保全交通部の役割で、そこで決まったことを会社として整備していくという流れでした。
 ――内外構造に入社したのは
 安田 2016年に専務として入社しました。18年に代表取締役社長に就任し、現在に至ります。

大学や高専だけでなく工業高校にも門戸を広げる
 社員の平均年齢を引き下げたい 国籍は問わない

 ――安田社長は、阪神高速道路に長く務め新設の現場も知っており、構造の全体的バランスを肌身で分かっておいでですが、補修補強の現場はややもすれば部分最適・全体不適格になることがあります。こうした「全体的な構造バランスを養う目」をどのようにこれから入ってくる新卒入社する社員に培わせようと考えていますか
 安田 阪神高速道路(株)や阪神高速技術(株)との人事交流を毎年、数人行っており、そうした目を培うよう努力しています。同時に阪神高速技術からも毎年出向を数人程度受け入れ、保全現場の最前線の感覚を培っていただけるよう指導しています。

座学や現場研修をバランスよく行う

 新卒入社する社員には、道路事業の予算から始まって、建設あるいは維持管理までの教育を座学で叩き込みます。弊社では構造技術関係の人材を欲しており、昨年は関西大学の坂野研究室の卒業生が入社しました。もっと言えば大学で学んだことがすぐに役立つのは僅かですので、門戸を広げて技術系であればジャンルは問わないようにしようと考えています。あるいは現場や構造物、インフラに興味がある人であればウエルカムです。その上で、入社してからどの現場あるいは情報処理、設計業務が良いのかチョイスしていければと考えています。ただ弊社が現場力を強みにするためにも、重ねて申しますが現場での教育は必須であると考えます。


現場力は高める必要がある(写真は東神戸大橋と新猪名川橋の点検状況)

 ――大学だけでなく高専の学生は採用しないのですか
 安田 実は熱望しています。学生の質は相当に高いですから。しかし実際は難しいため、現在は工業高校の卒業生もターゲティングしています。
 採用は毎年3~4人程度採りたいと考えています。平均年齢は45.2歳と高く。それを引き下げていかなくてはなりません。
 ――民営化当時に採用を絞った影響が出てきていますか
 安田 その影響だけでは説明できないほど、20代から30代後半の層が少ない状況です。このままでは技術伝承がままなりません。中途も含めて人材確保は大課題です。
 ――国籍は問いますか
 安田 外国籍の方も入社しており、国籍は問いません。ただコミュニケーションをとる必要や資格取得の必要性から、日本語の読み書きは必須です。

働き方 業務を平準化させ超過勤務時間を減らす
 給与や資格取得のバックアップも拡充

 ――会社に対するロイヤリティを増すための施策は
 安田 業務時間を平準化し、特定の業務や個人に仕事が偏らないようにして、社員の残業を抑制するよう努めています。また社内組織をシームレス化し、業務そのものの分配の平準化を図っています。一人当たりの超過勤務時間は着実に減っています。
 給与面については今までは、阪神高速グループの中で見劣りしないように見直しています。また各種資格の有効性は、グループの中でも突出していますので、資格取得に際して、その費用を全額補助するなど強いバックアップ体制を構築しています。取得後の資格手当も充実しています。
 加えて、以前は研究業務を受ける立場でしたが、今後はそれだけでなく、自社でも土研や大学などと共に必要な共同研究を積極的に行っていこうと考えています。こうした領域にも携わることができます。

社員旅行も毎年実施している

ボックスカルバート用途に「特殊カメラを用いた点検技術」を開発

 ――いま進めている技術開発について
 安田 ハード面では、ボックスカルバート調査のための「特殊カメラを用いた点検技術」というものがあります(右概要図)
 対象となるボックスカルバートは農業水路に敷設されているものです。非常にクリアランスが低くて、延長が短い(7~8m)のですが、なかなか人が入れません。そうしたカルバートの内面調査などで用いるよう開発したものです。インフラメンテナンス国民会議でもたらされたニーズに対して当社がそれを満たすためのシーズ(技術)を提案しました。具体的には非常に小さい船を浮かべて、その上にカメラを積み込んで、ボックスカルバートの裏面全周のコンクリート点検を行いました。
 ――船はどうやって動かすのですか
 安田 出入口間にワイヤーを設置してアンカーで固定し、そのワイヤーを操作することで船を動かしました。

実際の点検状況

 ――今回はワイヤーを張るぐらいの延長で済みましたが、比較的長い場合はどうしますか
 安田 ドローンを活用したいと考えています。ドローンも高性能化しており、こうした閉所でも使えるような製品が出てきています。こうした点検上の要素技術を組み合わせることで、お客様のニーズに応えて行きたいと考えています。
 ――カメラは特殊なものではないのですか
 安田 日立産業制御ソリューションズのカメラを用いています。カメラも出来合いのものではなく、我々のニーズを伝えて、それに応えていただいています。

情報の3D化を促進

 ――ソフト面では
 安田 情報の3D化です。従前は紙媒体で2Dによって報告していた成果を3Dによって分かりやすく説明すると共に、その後の対策も場合によっては3Dプリンターを使うなどして、現物のイメージを持ってもらうといった取り組みも行っていきます。それは新たに入社する社員の教育についても損傷が予想される個所であるとか、弱点の箇所は情報の3D化を進めることによって、はっきり見せることができます。それについては今後勉強していきたいと考えています。お客様の走行の安全性を守るための特殊点検車両機材(ドクターパト・路面点検車、RT3・滑り抵抗測定車など)を用いた新しい点検業務、情報処理を実施しています。

ドクターパト

RT3
 また、純粋技術ではありませんが、当社は特定建設業許可を取得しており、点検時に防錆、はく落防止、滑動改善、劣化抑制などの速やかな応急措置を施すことにより、本格補修までの損傷の進展抑止に努めております。
 上記のような定常的な点検業務に加えて、特定の変状・損傷の発生や発生要因が明瞭でない事象の発生時における応力・変位・加速度計測を始めとした各種調査計測、大型渦流探傷(みつけるくんK・鋼床版き裂調査、右写真)などの非破壊検査や小型供試体、実物大供試体を用いた載荷実験などを行うとともに、長大橋建設に向けた資料収集や新しい形式の構造、補修方法の効果確認のための調査・試験など、阪神高速グループの一員として各種の課題解決に向けた技術を提供しています。

小型供試体の製作/RC中空壁高欄の衝突試験

鋼製壁高欄の衝突実験

 ――ありがとうございました

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