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下部工・トンネル掘進が全面展開

NEXCO東日本いわき工事 常磐道4車線化事業 2020年度内の完成目指す

東日本高速道路株式会社
東北支社
いわき工事事務所長

田子 瑞宏

公開日:2018.12.26

プレキャストPC床版を折木川橋で採用
 床版防水にグースアスファルトの全面施工を検討

 ――上部工で今後工夫することは
 田子 プレキャストPC床版を折木川橋で採用します。他の橋では今のところ使う予定はありません。あとは壁高欄自体をプレキャスト壁高欄にするか検討しています。また、安全対策として壁高欄を施工する時、クレーン+ベント架設もそうですが、墜落に対する安全管理、ピア高は平均でも25mありますので、墜落がやはり事故の可能性としては高いので、それへの防止策を真剣に検討しています。


折木川橋上部工計画概要

プレキャストPC床版の架設計画概要

 ――プレキャスト壁高欄はDAK式などが使われていますね
 田子 手間は稼げますが、工程・コスト的にはどうかという意見もあります。慎重に検討する必要がありますね。
 ――現場打ちのPC床版の品質向上策をどう考えますか。品質向上の前提として春と秋に打つことが一番の品質向上策という意見もあります。またいっそのこと全面的にプレキャストPC床版を採用したほうが品質面でも施工効率を考えてもよいのではないでしょうか
 田子 折木川橋以外は現場打PC床版です。しかし施工状況的に工期がタイトになってしまう橋梁については、プレキャストPC床版への変更もやむを得ないと考えています。常磐道4車線化のコストも想定を超えて上昇しています。これ以上のコスト引き上げは避けたいのが本音です。ただし、事故が一度起きてしまえば確実に2020年度末の工期には間に合わないため、安全には特に留意して(コストもかけて)進めていく必要があると考えています。
 打設時季についてはおっしゃる懸念は考慮しています。床版も特に冬場は風が強く、気温以上に冷えるため現場打施工としては適当ではありません。床版防水の冬季施工は舗設を考慮するとこちらもよい時期とは言えません。
 ――では床版防水はどのように施工しますか
 田子 グレードⅡではなく、グースアスファルトによる防水の全面施工を検討しています。
 ――そうきましたか!
 田子 時季や湿度・温度、床版上面不陸性状などに左右されにくい床版防水工法ですので、工期が限られた当事務所としては使いたい工法です。管内で一番橋長の短い杉内川橋で試験施工し、その結果を分析した上で採用の可否を決めたいと考えています。ただしグースアスファルトを全面的に採用するにはプラントやクッカー車を保有する業者が限られているという課題があります。そのため管内に仮設プラントを造り、そこでPC床版防水用のグースアスファルトも製作し、いわき工事管内全域に展開できればと考えています。


杉内川橋(Ⅰ期線)

グースアスファルト防水の全面施工を検討

小名浜道路 5号橋は上部工へ
 小名浜IC橋は800t吊クローラークレーンで一括架設

 ――小名浜道路は
 田子 4車線化とは別に福島県から受託している工事です。いわき勿来IC~湯本ICまでの間に(仮称)いわき小名浜ICから小名浜方面に直接降りていく道路事業です。全体で8.3km(山田IC~泉下川IC)ほどですが、このうちの常磐道から分かれる2.5km(いわき小名浜IC~添野IC)が当事務所の施工範囲です。


小名浜道路事業とNEXCO受託区間

 ――現状の進捗状況は
 田子 5号橋(213m、PC3径間連続ラーメン箱桁、右写真)については、下部工4基(橋台2基、橋脚2基)が10月にしゅん功しました。上部工は昨年9月に契約し(富士ピー・エスが受注)、下部工のしゅん功と同時に施工に入っています。5号橋完成後は、ここを工事用道路として使い、既に発注している土工部(切盛土工で約100万㎥)の工事を進めていきます。5号橋以外の橋梁としては、常磐自動車道を跨ぐ、小名浜跨道橋(294m、鋼6径間連続非合成少数鈑桁)やいわき小名浜IC橋(105m、鋼2径間連続非合成細幅箱桁)などがあります。小名浜IC橋が800t吊クローラークレーンによる一括架設、小名浜跨道橋では送電線がある関係で、交差点部のみ送出し架設を行う予定です。架設の際は常磐自動車道を夜間通行止めして施工します。架設時期は2020年です。

4車線化事業以外の構造物一覧(橋梁名は仮称)

 ――他、ならはSIC、大熊IC、双葉IC、付加車線事業について 
 田子 鋭意進めています。付加車線事業は完全に4車線化するには至りませんが、渋滞が懸念される個所など3か所について事業を進めています。広野IC付近1.2kmの付加車線工事はすでに施工に入っています。それとならはSICから約3km北を起点に北へ3km先の付加車線を伸ばす工事も進んでいます。同付加車線工事区間には橋長47.5mの紅葉川橋があり、鋼単純合成2主鈑桁を架設する予定です。最後に(仮称)双葉IC付近に2.4kmの付加車線を設置する予定です。基本的に切土構造です。


付加車線事業概要

ならはSICの概要と航空写真

ならはICの現況(空撮および近景)

ならはSICの現況(舗装工事)

大熊IC新設事業の概要図と航空写真

大熊
ICの現況(空撮および近景)

双葉IC新設事業の概要図と航空写真

双葉ICの現況(空撮および近景)

 (仮称)双葉ICには常磐道を跨ぐ既設の跨道橋(寺沢橋)があります。これが計画するランプの据え付けのところにかかってしまうため、同橋については撤去して、新たに架け直します。
 ――撤去した橋は再利用するのですか
 田子 しません。PC斜πですから。ランプの拡大に伴って橋長が伸びるため、鋼橋形式で架け替える予定です。橋長は40m程度ですが、同橋についても自走多軸台車とクレーンを用いて架設する予定です。
 ――付言して
 田子 構造物としては1期線に準じており、珍しいものは施工していません。ただし、1期線を供用している限られたヤード内での施工です。また積雪寒冷地ではないので、ほかの東北各事務所のような7mの堆雪余裕がありません。そのため隣接の耕作地を借りて工事を行い完了後、耕作地に戻して返すことが必要です。その協議だけでも結構大変です。発注しても、林地開発や農地の借地や一時転用、河川協議などで時間を取られています。
 ――橋脚や橋台が4車線化を前提として造られ、あとは桁を載せるだけなら楽ですが、下部工から作らなければいけないため厳しいですね
 田子 連絡等施設の四倉PA、いわき四倉IC、広野ICは、本来であれば1期線施工時に4車線で作るのですが、コスト削減の関係により暫定形で構築されています。このためランプ部分を山側に1回振ってそれから真ん中を作るという工程が必要になり、結構時間がかかります。
 同様にコスト縮減の観点から(高速道路に並行する)側道がない個所も結構あるため、工事用道路を新たに作り、どうしても現場に行けない場合は警察と協議して本線から出入り、もしくは仮橋を作り工事を実施しています。
 ――ありがとうございました

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