道路構造物ジャーナルNET

凍結防止剤・飛来塩分、富山ではASR

NEXCO中日本金沢支社 北陸道の塩害・ASRへの対応に苦慮

中日本高速道路
金沢支社
保全・サービス事業部長

伊藤 公一

公開日:2018.09.27

健全度Ⅲは約120橋
 5年以内に補修を完了

 ――長寿命化修繕計画に基づく対策の進捗状況は
 伊藤 平成26年度から点検を開始しており平成28年度末までに629橋が完了しています。同年度末までに補修に着手している橋梁は13橋です。
 ――629橋あってⅢが19%ということは、約120橋がⅢとなりますが、そのうちの13橋ということでしょうか
 伊藤 そうです。他の健全度Ⅲと診断された橋梁についても5年以内に補修を完了させていきます。
 ――先行補修している13橋はどのような補修・補強を行っていますか
 伊藤 損傷は桁端のうき・剥離が中心で、基本は断面修復です。
 ――断面修復を行う場合、凍結防止剤を散布しているところでは、例えば東北道では塩分吸着入りのポリマーセメントモルタルを採用して、今後にも備えているというところもあります。金沢支社管内では
 伊藤 通常の断面修復となります。
 ――断面修復後、NEXCOの新設であれば桁端の防護塗膜を行っていますが補修ではどうですか
 伊藤 桁端は表面保護を行っています。
 ――含侵材ですか、もしくは表面被覆ですか
 伊藤 表面被覆です。
 ――メタルも同じような桁端部における損傷がありますか
 伊藤 あります。
 ――それは塗膜の劣化程度でしょうか。あるいは、ミル状の層状錆が発生しているような状況でしょうか
 伊藤 腐食部分の再塗装や減肉した部分に対して当て板を実施しています。孔食が大きくなり、桁の一部がなくなるような状況ではありません。
 ――塩害やASRに対する対策工法を具体的に
 伊藤 飛来塩分による損傷対策では、過去に大慶寺川橋で電気防食を実施しています

 ――電気防食は、内部電源方式と外部通電方式のいずれを採用していますか
 伊藤 現在は、外部通電方式を採用しています。金沢大学の鳥居先生からはもっといいものがあると言われていますが。
 ――NEXCO東日本はすべて外部通電ですよね。西湘バイパスでは、脱塩を行うとのことですが、そのようなことは
 伊藤 行っていません。まずは既存の工法で延命化させます。
 ――排水溝が漏水を助長して、床版と高欄の継ぎ目からしみだして塩害を拡大している箇所があります。北陸道では
 伊藤 気温が下がるとしみだしが凍るので、基本は路肩側に水切りをしています。
 ――縁石からしみだしていることは
 伊藤 それは床版取替のときに一緒に行い、床版防水をしっかり行います。

太田高架橋床版取替えで縦締めPC採用
 魚津~黒部IC間(下り線)複合的な大規模更新を採用

 ――大規模更新、大規模修繕のここ数年の実績と今後の予定について。また、発注の工夫や施工上の対策、新技術・新工法の活用がありましたら
 伊藤 床版取替は、最初に日野川橋、早月川橋で実施しました。太田高架橋(上り線、写真)の床版取替もこの夏に完了させています。
 契約済みで来年度施工予定では、魚津~黒部IC間(下り線)があり、床版取替、床版修繕(防水工)とのり面の一部修繕(排水取替)を行う複合的な工事となります。床版取替は6橋(上下線3橋)となります。橋梁が主でのり面補修は全体の1割にもいかないので、ピーエス三菱が単体で受注しています。工期は4年を予定しています。交通量は18,000台/日です。
 ――規制期間は
 伊藤 雪氷の時期は外さなければならないので、それ以外の可能なときとなり、春と秋の年間2シーズンとなります。
 ――シェッドなどの補修や更新はないのですか
 伊藤 現在のところありません。
 ――今後の予定では
 伊藤 今年度に九頭竜川橋他2橋床版取替工事(その1)など橋梁4件、金沢森本IC~小矢部IC間(上り線)のり面排水溝取替工事などのり面工事3件を発注予定です。
 ――床版の損傷原因は主に塩害ですか
 伊藤 そうだと思います。
 ――発注時点での工夫は
 伊藤 橋梁4件のうち、3件は基本契約方式を予定しています。
 ――施工上の対策は
 伊藤 太田高架橋は床版と壁高欄が一体化したもので取替え、少しでも工期短縮を図ります。また、ループ継手ではなく、橋軸方向にPCで縦締めすることで継手部の間詰め作業を簡略化します。間詰め作業が不要になるわけではなく、30~40cm幅のループ継手部の間詰めを配筋して打設する時間を短縮する効果を狙って、間詰め幅を詰めて緊張を入れることによって、性能向上と工期短縮を図ることを行っています。


縦締め緊張作業/間詰部を極小化

 ――上から見ると非常に間詰部が狭いですね
 伊藤 間詰め幅はほとんどありません。床版下面に定着をつけて、床版のなかを引いていく形です。床版を何箇所かにわけて、緊張していきます。6月9日から対面通行規制を行い、7月13日までの期間で完了させました。
 ――間詰め幅は何mmですか
 伊藤 30mmの予定です。打設に時間がかかるので、その分、短縮できます。
 ――間詰めはコンクリートでしょうか、それともモルタルでしょうか
 伊藤 ケーブルが橋軸方向に走っていますが、そこはグラウトで、隙間自体はモルタル系となります。
 ――NEXCOとして、大規模更新において床版をPCによる縦締めで接合してしまうということは初の試みでしょうか
 伊藤 大規模更新としては初めてですが、JH時代に事例がないわけではありません。
 ――PCケーブルはどのように配置するのですか
 伊藤 パネル何枚かごとに定着し、さらに中間にたすき掛けとなるパネル部分を作り、すべての床版にプレストレスが行き渡るようにケーブル配置しています。

ジョイント交換は140車線・箇所で実施

 ――支承取替について
 伊藤 今年度の計画はありません。せっかくジョイントや桁端を直すのであれば、取替はやっておかなければならないと考えています。今後、計画を立てていきます。
 ――ジョイント交換は
 伊藤 今年度は140車線・箇所の取替を予定しています。タイプは同じものに取り換える予定です。


ジョイントの変状(中央の歯が欠けている)

取替後のジョイント

 ――ジョイントは当然止水性を有する製品に交換すると思いますが、止水部が劣化したときにも直ちにジョイント下の桁や橋脚、橋台の天端部に水がかからないように、下に排水枡や排水構造をフェールセーフで仕込ませる構造を、中央道の調布のあたりや東名道で行っています。北陸道では、とくに凍結防止剤による損傷が発生しているとのことでしたので、取替時に水がかからないようなフェールセーフを行っていますか
 伊藤 止水性を有するジョイントの採用は行っていますが、フェールセーフの採用までは確認していません。設計要領に従い設置しています。

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