道路構造物ジャーナルNET

鋼部材の疲労・防食 塩害対策も待ったなし

NEXCO中日本東京支社 大規模更新・長大橋耐震補強をいかにスムーズに進めるか

中日本高速道路株式会社
東京支社
保全・サービス事業部長

関谷 富彦

公開日:2018.07.31

大規模更新 用宗高架橋、赤渕川橋、川端高架橋は床版取替え完了
 今年度から施工本格化

 ――大規模更新修繕事業のここ数年の実績と今後の予定は
 関谷 実績では、2016年度の用宗高架橋(東名・下り線)が最初です。昨年度に赤渕川橋(東名・下り線)、今年度春に、川端高架橋(小田原厚木道路・上り線)の床板取替を施工しました。赤渕川橋と川端高架橋は、桁の補修や塗替塗装などを施工中です。



用宗高架橋の施工(当サイト既掲載)

川端高架橋の床版取替

赤渕川橋の床版取替

 ――大規模更新修繕の対象橋梁数は。今後、NEXCO中日本だけで1兆円ありますが、その大部分が大規模更新修繕になるわけで、その大部分が橋梁になりますが
 関谷 東京支社管内の対象橋梁は、更なる点検、調査による損傷の進展状況を精査したうえで個別橋梁の詳細な工事計画を立案して行きます。昨年度(2017)は、東名 沼津IC~富士IC間だけでしたが、今年度(2018)は、春に行った小田原厚木道路の他に冬から東名 裾野IC~沼津IC間、沼津IC~富士IC間を、来年度(2019)は東名 大井松田IC~御殿場IC間、裾野IC~沼津IC、沼津IC~富士IC間、富士IC~清水IC間や小田原厚木道路なども進めていく予定です。


 沼津IC~富士IC間は床版取替以外にも多くの工種を施工する

 ――中央道の場合、カーブが多くて橋軸直角方向に傾いている橋梁が結構あります。松ケ平橋と平出高架橋の取材に行きましたが、傾斜の低い側の床版、地覆、高欄がかなり損傷していました
 関谷 現在大規模更新修繕を行っている橋梁は曲率半径が厳しいところはなく、勾配も少ない状況です。中央道と比べ、凍結防止剤の散布量も少ないので、片側だけ損傷が進んでいる状況ではありません。
 ――サグは
 関谷 今までの橋では大きなサグはありませんでした。来年度の左ルートは山の中なので、縦断勾配、曲率半径が厳しい箇所もあります。
 ――そうすると疲労が損傷原因?
 関谷 6年前までは東名しかなく、40年間 日あたり約10万台近くの交通を支えてきました。現在は一部ダブルネットワーク区間が完成し、新東名へ交通量が分散している為、負担は軽くなっていますが、それまでの疲労蓄積が残っている状況です。
 ――床版取替方法ですが、4万台というと結構多いですね。対面通行の限界は4万台という人もいます
 関谷 ダブルネットワーク区間での床版取替の工事の状況としては朝夕に重方向のみに渋滞が発生します。

大規模更新 タブー作らず 施工法や規制を議論
 幅員縮小して車線を確保検討も

 ――名古屋支社ではいろいろな方法を考えないといけないと話していました。長トリップは減ったが、短トリップでも4~6万台の交通量があり、尋常な工法では無理だということでした。国道にも回せない。そうすると、技術的な話でタブーをつくらずに工法の議論をしていく必要がある、と。川端高架橋では住宅が近接していることから、床版架設機を使用したわけですが、大規模更新事業をどのように今後、行っていきますか
 関谷 お客さまへの影響を最小限にするために、様々な努力をしなければなりません。赤渕川橋の床版取替工事ではロードジッパーシステムを使用して、中央分離帯にコンクリート製防護柵を設置しました。ラバポールで仕切られた暫定2車線の高速道路よりは安全性が高い構造で工事を行ったので、4カ月近く、対面通行での事故は発生しませんでした。


ロードジッパーを採用した

 御殿場JCT~豊田間の新東名とのダブルネットワークと合わせて、海老名~御殿場JCTで建設中区間が開通すれば海老名~豊田間でダブルネットワークが構築されます。そのため、リニューアル工事で対面通行にしても迂回路が確保できる状況となります。
 海老名から東京寄りは迂回路がない状況ですので、半断面施工だけでなく、1/3、1/4断面施工も考慮しなくてはならないでしょう。あるいは首都高が行っているような仮橋(仮設ルート)を検討しないと、とても10万台以上の交通をさばききれません。設計業務の中で、半断面やリバース運用などを含めて施工検討を行っていきます。
 ――猪熊前常務のインタビューで、幅員3.25mを3mなどに縮小して2車運用するなど、ドイツなどで行っていることを日本でも運用できないかということが出てきました。東名でそのようなことは路肩的にできますか
 関谷 東名の静岡県区間の明かり部は、有効幅員が10.95mであり、幅員3mにすると3車線断面が確保でき、ロードジッパーシステムで移動式防護柵を時間帯によって動かせばリバース運用まで可能と考えておりますが、路肩は殆どなくなります。また、トンネル区間の有効幅員は、8.70mしかありません。日本の高速道路の車線として幅員3mは前例がないので、そこが大きな壁です。
 ただ、これから10数年間続く事業ですので、既成概念から脱却して、お客様のご迷惑を最小限にするということを検討していきたいと考えています。
 ――仮橋が一番良いのでしょうが
 関谷 そうですが、住宅密集地では、造る場所があるかということが問題です。
 ――仮橋はつくるのに時間と手間を要します。それにコストもかかります。阪神高速道路でも例えば喜連瓜破などで仮橋の検討がありますが、なかなか難しいようです
 関谷 
施工面については、仮橋を造ることができれば、時間的にじっくり補修をできるのですが、各場所での施工条件に合った形で検討していきます。

支承取替 今年度以降で1,900基を予定
 伸縮装置は180基取替え

 ――支承取替えは
 関谷 鋼製をゴム(免震)支承に取り替えるもので、今年度以降で約1,900基の取替えを順次実施していく予定です。


支承取替工は今年度以降で約1,900基取り替えていく

 ――伸縮装置は
 関谷 今年度から約180基を取替える予定です。


伸縮装置も約180基を取り替えていく

 ――伸縮装置の損傷はどのような? 疲労なのか、水なのか。ジョイント本体なのか、間詰め部か
 関谷 ジョイント本体の損傷で、取替えを予定しております。前後のコンクリートが損傷しているジョイントは取替えせずに応急的に補修しています。


乾式止水材の採用①/簡易排水装置の設置

乾式止水材の採用②側方充填材の施工

 ――鋼製伸縮装置で歯がとんだりしているのは
 関谷 管内では今のところありません。
 ――伊勢湾岸道だと、交通を切り回しながら夜間に、1年に5箇所くらいずつ行ってます。50箇所くらいあるので10年かかるということでした。交通量の激しいところでは本当に辛いのですが、取替え路線はおもに東名ですか
 関谷 取替え箇所が多い路線は、新湘南バイパスや小田原厚木道路、西湘バイパスなので、夜間交通量も少なく、伊勢湾岸道ほど施工は大変でないと考えています。
 ――東名は
 関谷 東名高速道路は、リニューアル工事や集中工事など、規制出来るタイミングに合わせて取替えていきます。
 ――西湘や新湘南はそんなに疲労もないのでは。むしろ、西湘や小田原厚木道路は塩害で損傷している
 関谷 そうですね。
 ――東名の伸縮装置の損傷状況は
 関谷 伊勢湾岸道ほど長い橋は少なく、伸縮の遊間も大きくありません。フィンガーもそれほど歯が長くないので、大きな変状は発生しておりません。

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