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ロッキングピア、長大・特殊橋の耐震対策も急ピッチで進む

NEXCO中日本名古屋支社 大規模更新・大規模修繕事業が本格化

中日本高速道路株式会社
名古屋支社
保全・サービス事業部長

池田 光次 氏

公開日:2018.07.25

ASRは飯田、多治見管内などで散見
 凍結防止剤対策にバブル水を活用

 ――ASRによる損傷は
 池田 中央道の飯田~多治見管内や東名の名古屋管内の一部にASR反応らしきものがあります。ただ、損傷程度は大きくなく、膨張クラックの進行状況を把握するため経過観察しています。
 ――ASRは終息期ですか、それとも遅延性骨材により未だゆっくり進行している状況ですか
 池田 ほぼ終息に向かっていると感じています。収まっていれば、ひび割れ注入して表面保護します。ただ、橋台は表面保護するとかえって悪くなるので、悩ましいですね。本気で橋台をやるならば、背面に薬液注入でもやり水を絶たないと、ASRを止められない可能性があります。橋台の補修は本当に悩んでいます。
 ――塩害による損傷は
 池田 飛来塩分による損傷はありません。凍結防止剤による塩害は出ています。対策としては、管内全域で桁端部の水洗浄を行っています。



塩害による支承の腐食

 ――洗浄の効果は
 池田 塩分量の大幅な減少が確認されています。鋼橋は特に減少幅が大きいですね。施工時期は、雪氷期が終わり、気温が上がりだす前です。気温が上がると、錆が進みやすくなりますので。


桁端部における水洗浄

 ――普通の水を使っていますかそれともバブル水ですか
 池田 バブル水が主です。NEXCO西日本グループのウルトラファインバブル水を使用しています。機械は羽島と飯田にあります。
 ――バブル水の効果は顕著ですか
 池田 水と比べたらバブル水で施工した箇所の方が、塩分量は落ちています。
 ――排水処理の不具合による損傷事例は
 池田 伊勢自動車道の岩田川橋が例として挙げられます。フランジとウエブの境目で約3mにわたって発生していました。排水管からの漏水が溜まっていたようです。昨年9月に詳細点検で孔食が判明し、緊急工事で12月までに直しました。

岩田川高架橋で生じた排水管不良による桁損傷①

岩田川高架橋で生じた排水管不良による桁損傷②

 ――排水管も交換したのですか
 池田 しました。


岩田川高架橋の桁補修

 ――排水溝に起因した損傷は
 池田 中央道では、舗装の縦溝を浸みだし水対策で行っています。低いところではなく、横断の高い側に設けています。雪が溶けて浸みだして氷にならないように縦方向に導水し、ジョイント部に設置している排水設備に落としています。酷い損傷が出ているというイメージはありません。中央道は50年近くになっているので、ジョイントそのものが錆びて傷んでいるのは少なからずありますが、取替えなければいけないレベルではありません。
 ――中央道の橋梁は縦断勾配もあれば、横断勾配もあります。個々の損傷を見ると、当然ながら低い側の損傷が激しくなっています。抜本的には床版取替ですが、つなぎとして行っている対策があれば
 池田 古い年次に供用した橋梁では地覆に設置された縁石の下のモルタルが脆弱です。そこから劣化している例はいくつもあります。溜まった水は、地覆と床版の狭間から外へ抜けていき、水切りのところに塩水が付着します。対策としては、縁石を取り、防水工を行い、舗装を打ち直しています。

大規模更新・大規模修繕 中央道などで進捗
 都市部では思い切った施工方法の採用も必要

 ――大規模更新・修繕の計画は
 池田 現在は中央道の松ケ平橋の床版取替などを行っています。中央道園原IC~中津川IC間は集中的に大規模更新すべき橋梁があり、2019年、2020年のタイミングでこのような個所に手を付けていきます。都市近郊もやり始めますが、まずは地方部から徐々にやっていく方針です。


松ヶ平橋舗装切削前状況/同橋床版下面の損傷状況

床版取替の当面の計画

 ――都市近郊は、交通量も多く、人家連坦地であることから厳しい施工条件と思いますが
 池田 今までのように対面で行うことは不可能でしょう。対面方式は断面交通量で3万台程度が限界で、それを超えると渋滞を引き起こします。幅員や車線運用を工夫するのは当然の話として、半断面でも足りなくて、上下線の間に桁(仮床版を載せる)を入れて、中分を使って車線数を確保する方法も検討しています。最悪、拡幅して迂回車線をつくるのもひとつの方策でしょう。また、一昼夜通行止めで架け替えを行ってしまう方法も議論しています。現行の2か月間程度の交通規制は、都市部においては社会的影響が大きいので、その対策が必要です。
 ――例えば一昼夜での架け替えはどうやって行うのですか
 池田 橋ごとつくっておいて、横取り架設する方法です。それくらい大胆な発想をしないと何もできません。
 ――施工ヤードはありますか
 池田 検討している個所には盛土の空間があるので本線を縮小路肩とすることで2車線分の桁は入ります。東名や名神は比較的単独橋梁が多いので、方策の一つになると思っています。
 ――ホロースラブも同様のことを考えていますか
 池田 ホロースラブはちょっと難しいですね。鋼桁限定です。
 ――桁ごと取替えるというのは文字通り架け替えですよね
 池田 東名、名神などでは桁も傷んでいることが多く、疲労クラックが多発している橋を補強しても新床版を支えるのに足りない例もあります。また、当時の設計で死活荷重合成桁にしており、床版を取ると不安定になる橋もあります。既成概念にとらわれずにケースバイケースで考えていくしかありません。
 ――本当にやるとすると、今の大規模更新計画の1兆円は足りますかね 
 池田 特殊な対策を全部やったら難しいですが、要所要所ではこういうことも考えないといけません。
 ――社会的コストなどをきっちり数字として出し、理解を得たいですね
 池田 本当に一昼夜でできれば社会的コストは絶対に安いと思います。
 ――これは鋼橋ファブも喜びますね。今の大規模更新は鋼橋ファブにとっては工場が動かず、受注してもエンジニア的なものになっている。正直言ってあまりおいしくありませんから
 池田 鋼橋ファブさんにもメンテナンスのノウハウを身に着けてほしいと思っています。既設桁が傷みすぎているものを補強してもお金だけかかって、トータルのお金は、高くつくこともありえます。それならば、迂回路をつくるよりも架け替えたほうが安く良いものができます。
 ――横取り架設ができる現場であれば。中央道は無理ですよね
 池田 ヤードの確保が難しいです。中央道は逆に対面通行ができるのでまだいいですね。
 ――ドーリーをもっていって、ジャッキダウンするとか
 池田 まさにそういう話をしています。近くにヤードがなくても、手前で作っておいてドーリーで運んでいって、横取りするなど、真剣に考えなければいけないと思っています。
 ――大規模修繕では
 池田 大規模更新のタイミングでロング規制の区間に織り込んでいく仕事になります。管内は大規模更新の対象が多いので、その区間に一連の規制のなかで行っていくことを考えており、修繕だけという世界ではなくて、大規模更新で長期規制を行う中で、防水工がしっかりできます。

床版防水はグレードⅡ基本もグースアスファルト防水も選択肢
 延長床版を基本採用

 ――大規模修繕は床版防水がメインになりますよね。大規模更新の場合は、床版上面の不陸はないので防水工がしやすいと思いますが、大規模修繕の場合は、既設床版を切削すると不陸が厳しい状態になっていることが多いですよね。そこに、昨年7月の要領では不陸を1mm以内に修正した上で防水工を行う旨が書かれています。それは、大規模更新に織り込む形であれば可能だと思いますが、大規模修繕単独で特に交通量が激しい場合、その時間は取れますか
 池田 難しいと思います。不陸修正する時間はとれないし、不陸を出さないように切削を工夫しても時間がかかります。
 ――NEXCO3会社では、交通量が比較的少ない箇所でグレードⅡ、非常に多い箇所で時間的制約からやむを得ずグレードⅠを使っているケースも散見されます。大規模修繕は基本グレードⅡだが、どのように行っていくか
 池田 大規模更新と一緒に進めます。対象橋梁が他の支社よりも多いため、IC間規制を行って、まとめてやる形になると思います。管内は交通量が多いが、ネットワークが強みでもあります。例えば、名二環の西南部ができれば、名古屋近郊の高速道路の密度は相当に高くなります。どこを通っても同じ料金という仕組みができれば、高速のなかで迂回を推奨していくやり方ができると考えています。仕組みづくりのハードルは高いですが。
 ――大阪や東京ではできています
 池田 先にシームレスができているからいいのですが。(料金は)名古屋は内側が高くて、外側が安くて、現状でバランスが取れています。
 ――グースアスファルト防水などの技術が出てきていて、御社では西湘バイパスで試験施工を行いました。グースアスファルト防水を現実的に考えていますか
 池田 否定するものではないと考えています。ただ、重交通下での耐久性は危惧するところです。一方で、名港トリトンの鋼床版のグースでも流動化がみられません。アスファルトそのものもかなり良くなっているので、選択肢にはなると思います。


床版防水の施工状況

 ――グースアスファルト舗装を行う業者にとっては規模が問題になります。クッカー車が何千万もするので、年間の規模感がないと、新しいクッカー車を購入するのは大変です。さて、大規模更新等における新技術は
 池田 (新技術の話)松ケ平橋でスリムファスナー継手を採用しています。工程短縮・品質管理に効果を発揮しています。今までやっている床版取替では橋長300mというものはなかったと思います。300mを2カ月ですべて行うのは相当厳しいですが、スリムファスナー継手とあわせてEMC式壁高欄を使うことで短期間で床板取替えを完了させることができました。これで全体工程がうまく収まりそうなので、今後の明るい話題になります。積極的に使っていきたいと考えています。


スリムファスナー継手/EMC式壁高欄

 ――延長床版は設置する傾向ですね
 池田 大規模更新で床版取替をするならば、できるだけ延長床版をやります。水による桁端部の劣化を相当抑制できますので。

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