道路構造物ジャーナルNET

大規模リニューアル ロッキングピア対策 特殊橋の耐震補強など

中日本高速道路の構造物の保全はどこまで進んでいるか

中日本高速道路株式会社
前 取締役常務執行役員 保全企画本部長
(現 中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社
   代表取締役社長)

猪熊 康夫 氏

公開日:2018.07.18

鋼床版の疲労亀裂点検にフェイズドアレイを活用
 100km/hで走行しながらトンネル内点検できる技術も開発

 ――活用している点検・補修における新技術は
 猪熊 まずは、フェイズドアレイ超音波探傷技術があります。これは、名港西大橋で初めて使いました。名古屋大学、三菱日立パワーシステムズ検査㈱と共同開発した技術です。対象は鋼床版に発生する疲労亀裂の点検です。


フェイズドアレイ超音波探傷技術

 同技術は複数の振動子を移動させて任意方向に超音波を送受信し、3次元の探傷を行う技術で、鋼床版のUリブとデッキプレートとの接合部から発生する2種類の疲労亀裂を同時に精度良く検出できます。デッキ進展型亀裂は、深さ2mm程度から検出可能(計測誤差1mm程度)でビード進展型亀裂は深さ3mm程度から検出可能(計測誤差3mm程度)です。今年度内の実用化を目指して研究を進めています。
 次に高速画像処理を用いたトンネル内点検技術があります。東京大学大学院の石川正俊教授が研究開発している「高速画像処理技術と高速小型回転ミラー」を用いた技術で、100km/h走行でひび割れ0.2mmまで検知可能です。ジェットファンなど取り付け金具の変状も検知することができます。撮影した映像は自動で車内のパソコンに取り込まれて画像処理により人が介入することなく変位や変状の検出を行うことができます。普通のパトロールカーに積めるよう小型化できているのも特徴です。これについても今年度の導入を目指しています。



高速画像処理を用いたトンネル内点検技術

 また、ドローン(SCIMUS)を活用した構造物点検も進めています。主な点検部位は床版も含む橋梁上部工、支承、橋梁下部工です。SCIMUSでは従来のドローンでは難しかった上部工狭小部の点検困難箇所や死角部位も点検することができます。
 斜張橋などの斜材点検においては専用の自走式点検装置を実用化(下写真)しています。外観変状をビデオカメラにより撮影するものでリアルタイムにモニタリングすることが可能です。渦流探傷の検査センサーを装備しているため、内部鋼材の状態も確認できます。

富士管内でICTを活用し、舗装修繕
 新しい凍結防止剤も開発進む

 ――ICTを活用した事例は
 猪熊 舗装補修工事のなかで、出来形管理にICTを活用しています(右表)。補修工事で使うのは初めての試みです。現場は富士保全・サービスセンター管内で、大成ロテック㈱の技術提案を採用しました。 
 試行内容はトータルステーションおよびレーザースキャナーによる事前測量、その測量データを活用した舗装切削および舗装施工の3次元設計データの作成、設計データを活用した舗装切削機とアスファルトフィニッシャなどの建設機械の自動制御、トータルステーションおよびレーザースキャナーを用いた施工後の出来型管理です。
 i-Conは保全の立場からいえば、作るときに使って終わりではもったいない。これからは人手不足の深刻化が予想されます。i-Conで代替えできるものはしていく方向に、と考えています。
 ――Bluetoothを用いた所要時間提供システムの開発は
 猪熊 大規模更新・大規模修繕などに伴う規制の際でも、出来るだけお客さまの負担を軽減させようと導入している技術です。リアルタイムに所要時間を算定し、提供するとともに、走行車両に搭載された電子端末(カーナビゲーションやスマートフォンなど)でもBluetoothを用いて受信できるようにしています。得た情報はホームページなどでも所要時間を提供しています。
 ――プロピオン酸ナトリウムを活用した新たな凍結防止剤の開発について
 猪熊 2015年度から現在の塩化ナトリウムを用いた凍結防止剤の代替材料として研究を進めています。金属腐食性は従来の塩化ナトリウムに比べて著しく低く、凝固点も変わらないため凍結防止性能も従来とほぼ同等である結果が室内試験では出ています。3月~4月に東海北陸道で試行導入しており、現在はその結果をまとめている最中です。コストは高いですが、LCC縮減の観点から使えないか模索を進めています。


プロビオン酸ナトリウム/腐食減少量比較

グラウト再注入工法『PC-Rev工法』をオリエンタル白石㈱と共同開発
 削孔径を極小化しつつ確実にグラウト充填

 ――最後にPC橋のグラウト充填不良対策に関する補修技術の開発について教えてください
 猪熊 『PC-Rev工法』をオリエンタル白石㈱と共同開発しました。
 PCグラウトに関する施工管理基準が整備される前に建設されたPC構造物では、PCグラウトを十分に充填させるために必要な材料や空気抜きホースの配置、ブリーディングの発生などに関する知見が必ずしも十分でなかったため、一部でPCグラウトの未充填が生じています。


PC-Rev工法施工手順

 PC構造物の長期耐久性を確保するためには、①削孔時に既設コンクリート中のPC鋼材や鉄筋を損傷させない、②削孔時に既設コンクリートやシース管に過大な断面欠損を与えない、③空隙量を精度よく推定し、確実にPCグラウトを注入することができる――といった性能を満足する必要があり、その1つとしてPC-Rev工法を開発したものです。
 ――工法の内容を具体的に
 猪熊 ①については、削孔時にドリルの先端がシース管に接触した場合、電流計や金属センサで検知し、制御システムにより削孔を自動停止できるロングビットドリルを採用しています。②についてはドリルそのものが超低振動性であることや調査孔や注入孔を従来(調査孔はφ25~50mm、注入孔はφ80mm)よりも大幅に小さく15.5mm程度で施工可能であり、母材への負担を相当に和らげることができます。③は減圧容器の圧力変化を利用することによりシース管内部の空隙量を精度よく推定できます。これによって目標注入量が設定でき、材料ロスや注入不足を防ぐことが可能です。
 ――管内のグラウト充填不足による損傷状況は
 猪熊 PCでいうと、JH時代からの問題ですが、鉛直鋼材の突出問題があり、アラミドナイロン複合繊維シートを張り付けて突出防止対策として補強することを過去に行っています。
 ――PC鋼棒突出防止のときに防水工も掛けていましたか
 猪熊 突出防止対策を実施した周りの箇所は、併せて防水工を掛けています。ただ、必ずしも橋梁全面の防水工を行っているわけではありませんが、その後の点検で上縁定着であるために問題になったとは聞いていません。
 ――路上作業の安全性確保のための技術としては
 猪熊 『緊急遠隔しらすんだー』を開発しました。コーンが車にはねられたら、保安員と作業員に直ぐに自動的に無線で知らせられる技術です。昨年も中央道・多治見の舗装補修で車が突っ込み、作業員がひとり亡くなられた痛ましい事故がありました。そうした事故を未然に防ぐための技術です。


緊急遠隔しらすんだー

 ――女性技術者のための優しい現場カーも開発したそうですね
 猪熊 はい。『サクラ』という多機能車両です。当社でも女性技術者・技能者の倍増を目指していますが、それには現場環境の改善が欠かせません。そのためトイレ機能の確保を中心に休憩スペースやパウダースペースという3つの機能を兼ね備えた車両を開発しています。


サクラ

 ――今後の技術開発の方向性は
 猪熊 現在4つのテーマについて技術提案を募集しています。
 ①LCCの縮減や品質確保につながる高速道路リニューアルプロジェクト技術、②点検の高度化・効率化、③ICTの高度活用による交通安全支援、交通渋滞緩和技術、④自動運転を普及させるための道路側での支援技術――です。
 特に大規模な交通規制における渋滞対策に資する工法、工期短縮に資する工法、夜間施工可能な低騒音工法、安全な規制作業に資する工法などの開発の必要性が高まっている状況です。
 ――ありがとうございました
(2018年7月18日掲載)

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