道路構造物ジャーナルNET

急速に進む橋梁の高齢化 「攻めの管理」が必要

川崎市 殿町羽田空港線などを整備

川崎市
建設緑政局長

藤倉 茂起

公開日:2017.04.03

50m以下が全体の95%占める
 供用後50年以上経過した橋梁は415橋

 ――保全について聞きます。まず現在の管内橋梁の内訳から教えてください
 藤倉 当市は全体で619橋を管理しています。橋種別内訳はRC橋が最も多く321橋で、次いでPC橋が196橋、鋼橋が89橋、その他13橋(SRC4橋、混合橋6橋、木橋2橋、仮橋1橋)となっています。延長別は50m未満が全体の95%以上を占め、50m以上は29橋と比較的短い橋が多くなっています。しかし後述しますが人口が稠密な状況下にある当市では短くても重要な橋が沢山あります。供用年次別では、50年以上経過している橋梁が415橋と既に3分の2を超えている状況です。いかに橋梁の長寿命化や架け替えを図っていくかは、喫緊の課題と言えます。


橋種別の橋梁数

橋長別橋梁数

供用年次別橋梁数

予防保全型を41橋増やす
 鋼橋の劣化が比較的多い傾向

 ――点検を進めて見て、管内各路線の劣化状況について詳しく述べてください
 藤倉 当市は橋梁長寿命化修繕計画を2010年2月に策定し、さらに2015年度末に改訂しました。当市は橋梁を3つの管理基準にカテゴライズしています。A予防保全型、B対症療法型、C更新前提型ですが、2015年度末の改定では、Aグループを124橋から165橋に増やしました。前回のカテゴライズ(A~Eに区分していた)のうちBの部分をAに変えたものです。理由は15m未満の小さな橋や人道橋であっても防災上大事な橋もあることや、上部工を中心に損傷が激しく、予測より劣化のスピードが上回っていることが挙げられます。
 一方で5m未満の小さな橋については基本的に限界まで使用し、更新することを前提にしています。
 劣化状況はこちらに示す表のとおりです。判定区分Ⅳこそないものの、Ⅲが63橋、Ⅱが302橋に達しています。特に比較的規模の大きい橋梁や跨線・跨道橋など重要な橋梁がカテゴライズされる管理基準Aで判定区分Ⅲが最多となっています。橋種別の判定区分Ⅲは鋼橋が最も多く26橋、RCが20橋、PCが13橋となっています。鋼橋の数(89橋)を考慮すると割合的にはかなり多いと言えます。その鋼橋について開きますと、判定区分Ⅲは支承が30、主桁が13、床版が8と上部工および上部工由来の損傷が多い傾向にあります。


橋梁の管理状況を示した表、管理基準Aで判定区分Ⅲが最多となっている
また鋼橋の損傷が多い傾向が窺える

PC橋やRC橋の管理状況表

昨夏新たな耐震計画を策定
 縁端拡幅が主 2016年度は10橋、2017年度以降も実施

 ――耐震補強の進捗状況は
 藤倉 昭和55年度道路橋示方書(1980年)より前の道路橋示方書を適用した主要な橋梁は124橋ありますが、1橋を除き耐震補強を完了しています。
 2016年6月に新たな耐震計画を策定し、重要な橋について目標とする耐震性能を引き上げるとともに、小規模であっても防災上重要性の高いと判断した橋梁について耐震化対策を進めていくものです。基本的に小規模な橋では、橋台部の縁端拡幅で十分であり、2016年度は10橋、今年度は4橋程度施工する予定です。
 ――落橋防止装置の設置状況と落橋防止装置鋼製治具の不正・不良対策についてどのような対応を取られているかお答えください
 藤倉 100橋で取り付けを完了しており、必要な橋梁は対策を完了しているとみなしています。
 不正・不良対策ですが、本市の橋梁には不正12社、不良113社に該当する橋梁はありませんでした。

東名道にロッキングピア1橋管理
 29年度に耐震補強を実施予定

 ――先の熊本地震を受けての耐震上の追加対策は

 藤倉 東名高速道路上の跨道橋を1橋管理しており、それは熊本地震で倒壊した橋脚形式と同様、ロッキングピアを有しています。2016年度からNEXCO中日本と協議を開始しており、協定を締結した上で2019年度には耐震補強を実施する予定です。
 ――鹿島田跨線橋は鉄道上を跨ぐ橋梁ですがどのような方法で橋脚を補強するのですか
 藤倉 鹿島田跨線橋は4径間連続鋼鈑桁+3径間連続鋼鈑桁の橋梁形式で、2柱式ラーメン橋脚の下部工形式となっています。対策手法としては、桁下管理者との協議を踏まえ、2013年度から橋脚補強の実施及び落橋防止構造、変位制限構造、段差防止構造の設置しており、平成29年度中に完成する見込みです。
 ――橋梁の長寿命化修繕計画にもとづいた対策の進捗状況についてお答えください。また具体的な損傷状況と補修補強内容についても例を挙げていただけましたら幸いです
 藤倉 2011年度に計画を策定しました。2011~2020年度の10年間に19橋の修繕工事を予定していましたが2015年度には全数の補修を終えました。しかし、先述しましたように劣化・損傷は当初の予想を上回るスピードで増加しており、2015年度に計画を改訂しました。今後は2020年度までに69橋で補修工事を行う予定です、2016年度は12橋の補修工事に着手しており、2017年度はさらに10橋程度で補修工事に着手する予定です。

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