特殊橋の補修 嶮山中央橋、第三和泉原橋などを対策
ケーブル交換、ゲルバー部の対策など
――橋梁の架け替え事例や大規模修繕事例について
中島 橋梁の維持管理については、基本的に予防保全による修繕による長寿命化とコスト縮減を主眼に置いて進めています。
主な補修事例としては、笠間大橋(栄区笠間のJR東海道本線、根岸線跨線部および柏尾川を渡河する個所に架かる橋梁)、豊田跨線橋(戸塚区上倉田町~下倉田町間のJR東海道本線を跨ぐ跨線橋)、第三和泉原橋(泉区上飯田町の東海道新幹線跨線橋)、嶮山中央橋(青葉区すすき野1~2丁目の河川や道路を跨ぐ斜張橋)などがあります。
――笠間大橋の橋梁形式と、具体的な補修補強方法は
中島 同橋は昭和44年に供用した橋長267.5m、有効幅員15m(車道部11m、歩道部両側2mずつ)の4径間単純ユニットスラブ床版合成鈑桁+4径間単純鋼床版鈑桁+3径間単純ユニットスラブ床版合成鈑桁です。
笠間大橋 IHを用いて舗装を撤去/CFRPグリッドおよびジェットコンクリートにより補強
床版を5cmの上面増厚とジョイント連結により補強しています。具体的には死荷重低減を図るため、鉄筋代わりにCFRPグリッドを用いて、ジェットコンクリートにより増厚しました。ユニットスラブ上は、額縁状に30cm幅でエポキシ樹脂系の接着剤を塗布し、端部を保護した上で施工しています。一方、鋼床版上は全面に接着剤を塗布した上で増厚しています。いずれもショットブラストをかけ、丁寧に下地面の平滑を確保した上で増厚工を施工しました。
鋼床版上はショットブラストにより丁寧に研掃した
また、同橋については塗り替え施工も行っています。既設塗膜はPCBや鉛を含んでいたため、適切に除去、管理した上で処分業務委託を入札にかけました。その結果、随意契約でクレハ環境に収集運搬業務を発注し、既に処分を完了しています。
――同様に豊田跨線橋は
中島 昭和47年に供用された橋長194.5m、幅員9.0mの単純PCホロースラブ桁+単純PCT桁(4連)+単純鋼鈑桁+2径間連続RC床版鋼箱桁橋です。
橋梁長寿命化修繕計画の一環として、塗装の塗り替え、上部工、主に床版の補修、高欄の取替えを行いました。
――嶮山中央橋は
中島 同橋は昭和49年に供用されたポストテンション2径間連続PC斜張橋です。斜材ケーブルに腐食などを生じていることから、今回新しい斜材ケーブルに取り換える工事を進めています。供用しながらの施工であるため、桁を支える設備(ベントや工事桁)を事前に設置した上で、主塔周りに足場を組み立てて既設ケーブルを取り外し、新しいケーブルを取り付けて、開放するという手順を取ります。ケーブル定着部は手ばつりした上で、主構造への影響が懸念される箇所についてはウォータージェットではつりとる予定です。
東綱橋梁が元請で施工を進めています。
既設橋梁一般図およびケーブル詳細図
施工ステップ図
着手前の嶮山中央橋/ベント設備
主塔周りの足場設置状況
――第三和泉原橋は
中島 昭和38年に供用した側径間がRCゲルバーT桁(8.5m×2)、中央径間がRCラーメン(18.81m)という橋梁です。新幹線を跨ぐ橋あり45°の斜角を有しています。
平成18年度に行った定期点検でゲルバーの下顎の部分に亀裂が見つかっており、年々損傷が拡大していることから、抜本的な対策工事を行うものです。
――そもそもどうしてこのような損傷が生じたのですか
中島 斜角が付いていることにより側径間の荷重が鈍角部に偏っているためです。建設時の設計では荷重を4等分しており、鈍角部・鋭角部の偏荷重を考慮していませんでした。そのため、偏荷重を受ける鈍角部のゲルバー部で進行性の亀裂が発生したものと考えています。同橋には既に落橋防止装置が設置されており、落橋する危険はありませんが、早急に対応する必要があると判定しました。
亀裂発生の原因/亀裂の進展状況
――具体的にはどのような方法で対策するのですか
中島 亀裂の入っている下顎部分を切断撤去し、既存の橋脚に新たに取り付ける鋼製ブラケットで側径間を支持する構造とします。
対策概要図
――斜角であり、古い橋梁であることから橋脚の断面も小さく、配筋が密であることが予想されますが
中島 そうです。そのため既設コンクリートの削孔やはつりを伴う工種は極力避けるようにしています。例えば、当初はゲルバー部の一体化も検討しましたが、どのような工種にせよ、既設構造物への影響が大きいということもあり、断念しました。また、今回新たに取り付けるブラケット部とRC橋脚に(耐震補強目的として)巻き立てられている鋼板との接合方法についても、既設構造物への削孔を伴うアンカーによる固定では無く、溶接を採用しています。
なお、巻き立て鋼板はRC橋脚の靭性を確保する目的で施工されていますが、鋼板の継手がフルペネ溶接になっており、座屈等に対する補強を実施すれば、上方からの軸力に対応可能な構造であると考えています。ただし、巻き立て鋼板は本来軸力を伝達させる目的で設計されていません。そのため、二重の安全対策として、既設巻き立て鋼板を期待せず補剛材H鋼のみでも橋梁本体の軸力に耐えられる構造として設計しています。
桁受梁部補強構造詳細図
17年度は1橋で支承交換
8か所でジョイント補修・取替
――支承やジョイントの交換、埋設ジョイントも含めたノージョイント化の施工は
中島 16年度の支承取替は3橋で行っています。鋼製支承を免震ゴム支承に取り替えています。17年度は1橋でBタイプ支承への交換を行う予定です。
ジョイント取替及びノージョイント化は、16年度に5箇所行っており、17年度は8箇所で施工する予定です。工法としては鋼製ジョイントやゴムジョイント(トランスフレックス・ブロフジョイント等)、埋設型ジョイント(ヘキサロックやシームレスジョイントなど)などを採用しています。
――コンクリート部材についてお聞きします。塩害や、アルカリ骨材反応による損傷はありますか
中島 塩害については大きな劣化は確認されていません。塩害を未然に防ぐために、沿岸部での橋梁には、新設あるいは耐震補強(RC巻き立て)でエポキシ樹脂鉄筋の採用を行っています。また鋼橋では上塗り塗装の重ね塗り、溶融亜鉛めっきの採用といった対策をとっています。
アルカリ骨材反応による劣化は見られません。
塗替えは基本的にRc-Ⅲ
過膜厚になりつつある箇所もありRc-Ⅰの必要も認識
――2015、16年度の鋼橋の塗替実績と17年度の塗替予定について教えてください
中島 15年度は6橋、6,819㎡、16年度は1橋1,300㎡塗り替えています。17年度は8橋11,482㎡を塗り替える予定です。基本的にRc-Ⅲで対応していますが、過膜厚になりつつある箇所もあり、Rc-Ⅰの必要も認識しています。
――PCBや鉛を含有する塗膜はどのくらいありますか。ある場合はどのような手法を用いて既存塗膜を処理しているかお答えください
中島 PCBや鉛の有無について全体的な橋梁数の把握は行えていないのが現状です。塗膜中に含まれる有害物質については、塗り替えの度に確認して、有害物質に関する対応の必要性が生じた場合は適切に対応します。
――耐候性鋼材を採用した橋梁で錆による劣化・損傷が報告される事例が出ていますが、横浜市での耐候性鋼材橋梁採用橋梁数と現在、どのような健全度を示しているかついてお答えください
中島 耐候性鋼材について特に損傷がひどい箇所はありません。
――新技術・新材料の採用について
中島 道路事業における新技術は、技術監理課で受け付けています。受付時点で国土交通省のNETISに掲載しているものは重複するため掲載しません。受付後は専用のウエブサイトに5年間掲載します。
――トンネルや法面について橋梁のような長寿命化修繕計画を企図した補修補強計画は策定する予定はありますか、策定していれば進捗状況を教えてください
中島 16年4月に道路トンネル・地下道点検および維持管理計画を策定し、5年に1度の定期点検を計画的に実行しています。橋梁でいうところの長寿命化修繕計画ですが、現在は点検周期など点検のあり方を定めたのみに留まっています。補修補強については近接目視点検を行い、個別に計画、判断していく方針です。法面については比較的数が少ないこともあり、基本的には(台風など災害が生じた場合に)そのつど点検し、必要であれば補修していく、といった方針です。
――ありがとうございました