道路構造物ジャーナルNET

技術開発の大方針は現場のイレギュラーに対応できる人づくり

阪神高速技術 3つの組織が1つになって大きく伸長

阪神高速技術株式会社
代表取締役社長

南荘 淳

公開日:2017.01.18

判断できる人間を育てる
 不確実性に対応 安全性も追求

 ――今後さらに売り上げを伸ばしていくためにどのような点をアピールしていきたいですか
 南荘 まずアピールしたいのは、点検および点検時の応急処置ができる点です。建設業法における資格を有しているため補修まで出来、早期発見・早期補修が確実に施工できます。実際の現場でもこうした補修を行うことで、予防保全の効果は確実に出ています。ただし経験と勘だけで補修を行うのはいけないとも考えています。そうした経験と新しい技術を融合させて行く努力が必要です。
 ――技術開発の方向性は
 南荘 必要な技術開発のキーワードは、機械に全部置き換えていくことではなく、構造物の状態を適切に判断できる人間を育てていくということです。
 構造物の診断・判断は全てイレギュラー(不確実性)に富んでいるといっても過言ではありません。どんなに豊富な経験を有する技術者でも未経験の事象は起きます。そうした事態に、未経験であっても類似の事象からある程度推定して判断できる技術者を配置できるような会社――機械性能の向上だけではなく、技術者の能力向上に寄与する技術を開発することが重要です。加えてそうした構造物の維持管理性の向上だけでなく、現場で如何に安全に業務をこなすことができるか、従事する技術者の安全、通行するお客様の安全にも寄与できる技術の開発が求められています。

ドクターパトやケーブル点検ロボットを実用化
 コミュニケーション型協同開発も活用

 ――具体的な技術は
 南荘 たとえば「ドクターパト」があります。各種のセンサーを搭載して、舗装や高欄、遮音壁、照明柱、標識柱を時速60㌔で走行しながら点検できる車両です。
また斜張橋のケーブルを点検する非破壊検査技術として「ケーブル点検ロボット※1」を開発しており、天保山大橋のケーブル点検で採用しました。平成26年7月の道路法の省令改正で5年に1回の近接目視点検が義務付けられたことで、斜張橋ケーブル点検において従来の高所作業車から遠望目視点検を行っていた方法に代わるもので、1秒あたり約30㌢の速度で上昇することが可能です。1ケーブルにつき10分~15分でケーブル被覆材の損傷を検出することができます。


ドクターパト/ケーブル点検ロボット

 同ロボットはケーブルを取り囲むように3方向(Y字型)に車輪を配置し、本体の外周に高性能ドライブレコーダカメラ6台を搭載しています。自動走行だけでなく、自動記録も可能で、3種類のケーブル径(160、180、200㍉)に対応できます。エッジライト型LEDも備えており夜間撮影も可能です。
 また、阪神高速道路グループ外の民間企業と一緒に技術開発を進める「コミュニケーション型協同開発」も行っています。例を挙げると、壁面走行ロボットの導入と応用技術の開発があります。米国で実績のあるロボット点検技術を橋梁の点検に使えないか模索しているものです。同ロボットはバキュームで自立して移動できるものです。また、点検時に小規模な浮きが生じている部分に手軽にコンクリート剥落防止工を施工できる「ピタット・エイド工法」を大日本印刷、クラボウなどと共同開発し、商品化を目指しています。


壁面走行ロボット/ピタット・エイド工法

 加えて車両でけん引して、専用のタイヤの回転状況から事故が起きやすいカーブの滑り抵抗値を的確に計測できる装置として、「連続路面滑り抵抗測定装置」を米国から輸入し、現在北海道の寒地土木研究所の技術協力を得て試験走行を重ねています。近々お目見えする予定です。


連続路面滑り抵抗測定装置

 阪神高速道路で多い鋼床版向けには、阪神高速道路と阪神高速技術、日本電測機の3社で共同開発した渦流探傷技術を用いた非接触の検査機「みつけるくんK」を実装しています。舗装(80㍉程度)を撤去することなく鋼床版の亀裂や突起を検出することが可能で、1日当たり100~200㍍(1車線)の検査を行うことができます。具体的には4つの渦流探傷センサーを搭載しており、1車輪線(2Uリブの4溶接線)を同時に検査可能とすることで、上記の性能を実現しました。


みつけるくんK

 今後、鋼床版のデッキ貫通亀裂調査は、ドクターパトに搭載された車載赤外線サーモグラフィで路線上から詳細調査候補を行う位置を特定し、みつけるくんKでさらに路面上から探傷して損傷を特定し、特定された損傷を路面下からフェイズドアレイを用いて詳細調査を行うという三段構えで行っていきます。
※1地方独立行政法人北海道立総合研究機構、株式会社帝国設計、内外構造株式会社、阪神高速技術株式会社による共同研究成果

未来予想図2030を作成
 トータルマネジメントで勝負

 ――最後に付言して
 南荘 当社では2030年をターゲットとしたビジョン、「未来予想図2030」を作成しました。会社がスタートしてから他自治体や国の競争入札にもチャレンジしています。単なる点検、単なる補修技術ではなく、そうした技術や高速道路の運営で培ったトータルマネジメントで勝負して行きたいと考えています。当面は阪神高速道路に接続している自治体や国が管理する道路の維持管理業務を受注していきたいと考えています。そうした業務に狙いを定めるのは、(接続道路は)阪神高速道路と一体管理した方がより効率的に行え、各道路管理者にも満足していただけるためです。
 ――ありがとうございました

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