道路構造物ジャーナルNET

技術開発の大方針は現場のイレギュラーに対応できる人づくり

阪神高速技術 3つの組織が1つになって大きく伸長

阪神高速技術株式会社
代表取締役社長

南荘 淳

公開日:2017.01.18

 阪神高速技術は2005年に3つの組織(後述)を糾合して作られた維持管理を専門とする阪神高速道路の子会社である。他の高速道路会社の維持管理子会社と異なり、点検から補修までを「トータルマネージメントできる」(南荘 淳社長)のが強みで、最近は阪神高速道路の保全業務だけでなく、国や自治体の保全業務にも積極的に入札参加している。今回は南荘社長にご自身のキャリアを含め、そのキャリアを踏まえて、会社をどのように発展させていこうとしているのか、詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

新幹線への初乗りが土木への憧憬の大本
 岡田研究室に入り宮川助手(当時)に教えを受ける

 ――まず土木業界に入ったきっかけから教えてください
 南荘社長 私は高校まで静岡で育ちました、小学6年生の時に東京五輪がありましたが、その前後に東名高速ができ、新幹線が開業しました。新幹線が開業した初年の8月か9月だったでしょうか、県内の小学生が順番に乗せてもらう催しがありました。その時は、夢見心地で鉄道の仕事がやりたい、と思ったことを覚えています。
 さて、京都大学に入学後は岡田清先生~コンクリートの先生ですが~の研究室で学びました。その時に助手に成り立てだった宮川(豊章)先生がいました。私は宮川先生が教鞭をとって初めての教え子であったと言えますね。
 当時はSFRC(鋼繊維補強コンクリート)の研究の奔りをやっていて、東京大学の小林一輔先生や岡田先生が考案したコンクリート内に繊維を混入する機械を使って様々な初期研究の内容に参画していました。大学で4年間、院で2年間学んだ後、昭和53年に阪神高速道路に入社しました。

上部工の疲労損傷事例集例作りに携わる
 梅町高架橋などの設計に挑戦

 ――当時の阪神高速道路公団入社後はどのような業務に参画していたのですか
 南荘 入社してからしばらくは、主として耐震系の基準作りと上部工の担当として鋼橋の基準作りの事務局を担いました。入社当時は単スパンの合成桁が主流でした。万博に間に合わせるため、大量生産し易い単純合成桁が採用されたのですが、入社した50年代になると、疲労損傷が表に出てきました。設計荷重の変更も合わさって起きたRC床版や鋼桁二次部材の疲労損傷でした。


RC床版の疲労損傷

そのため損傷事例集の作成を行ったわけですが、今から考えるとこれは保全業務の萌芽だったかもしれません。阪神高速道路は維持管理と建設を同じ組織(会社)でやっていることが強みですが、それはこの時から活かされており、PDCA的に損傷事例集という成果をフィードバックして、建設の現場に生かすことができました。個人的にも日本道路協会や土木学会の委員会に出る機会をもらって、関西の先生方だけでなく関東の先生方と知り合う機会ができたことは、その後の技術者人生に大きく寄与したと感じています。
 係長時代は大阪第三建設部(湾岸線担当)で天保山大橋などの橋梁設計に従事したことが心に残っています。ここでは他にも、梅町高架橋(5径間連続Vレグアーチ橋)など、色々な形式の橋に挑戦することができました。


天保山大橋/梅町高架橋

 また、本社に移ってからは、溶接の専門家である堀川浩輔先生(大阪大学教授(当時))の協力のもと、(溶接欠陥などを検査する技術として)従来のレントゲンの代替となる自動UT(超音波探傷機)を採用する検証を行いました。
 保全企画課長時代は公団民営化、管理コスト3割削減の至上命題の元、点検回数の見直しなどに加え、人件費や間接費の削減に取り組み、維持部門の分社化と点検から補修まで行える子会社の設立を企画しました。

3つの組織が一つに
 当初売上100億円が200億円まで伸長

 ――そして役員を経て、阪神高速技術の社長に就任されたわけですが
 南荘 当社は3つの組織から人と財産を移して一から作られた会社と言えます。
 ――3つの組織とは何を指すのですか
 南荘 阪神高速道路本体の維持事務所の分社化、阪神高速道路技術センターが担っていた維持管理のコア業務の事業譲渡、民間企業のノウハウを持った人・技術を集約、この3つを指します。現在の人員は380人です。
 ――売上はどのように推移していますか
 南荘 平成18年度当初は約100億円でしたが、26年度は200億円に伸長しています。特にここ2、3年は笹子トンネル事故の影響もあり、点検業務が増加しています。当社の最大の強みは、他の高速道路会社が有する維持管理子会社と異なり点検から補修施工までが一括で行える点です。金額的に一番多いのは工事業務ですが、伸長しているのは点検業務です。以前は10~15億円程度で推移していましたが、昨年度は20億円を超えました。
 一方で阪神高速道路以外の仕事も増加しています。構造物点検に限っても自治体や国からの受注業務で、合わせて1億円程度に達しています。その他第二阪奈道路や大阪港トンネルの維持管理業務なども阪神高速道路本体と力を合わせて受注しています。道路維持作業車などを協力業者に貸し出してきたノウハウを生かして、近年は太陽光発電設備(左写真)やLED道路照明などの賃貸契約による建設・管理事業にも参入し、事業の拡大を図っています。

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