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新名神の一部も今年度供用へ

京都府 南北を縦貫する高速道路が繋がる

京都府 建設交通部
理事(道路建設課長事務取扱)

斉藤 修

公開日:2016.12.05

トンネル 在来対策工法で損傷箇所あり

 ――同様にトンネルについては
 千阪 平成26年度から国の指導に従って近接目視による点検を行っており、26年度は18本、27年度には16本をそれぞれ点検しました。その結果、健全度Ⅱが20本、Ⅲ(要早期措置)が14本となっています。NATMで築造したトンネルはほとんど問題がなく、在来工法で築造したトンネルで劣化が生じています。内訳は材質劣化が11本、漏水が2本、ひび割れが2本です。在来工法のトンネルは平成14~19年にも点検を行っており、順次漏水やひび割れなどの対策を講じましたが、今次点検では、その際に生じていた細かいひび割れが拡大してしまったケースもあり、継続的な調査の必要性を改めて感じました。在来工法については2本でクラックがひどくなっている箇所があり、状況を詳細調査した結果、部分的に背面空洞が見つかったことから、突発的な崩落対策の設計を実施しています。
 ――ひび割れが生じているのは目地(直角方向)ですか、それとも道路軸方向ですか
 千阪 1トンネルは道路軸方向で、もう1トンネルは直角方向でひび割れがひどくなって来ています。
 ――空洞の充填方法はどのような工法を採用しますか。供用中のトンネルにおける充填工は通過交通に対する配慮と施工の難しさが指摘されますが
 千阪 仰る通りで、当該トンネルは国道173号上にあり、通行規制などの点を配慮しながら、正確に空洞位置を確認しつつ、側面から充填することも可能かどうか確かめながら補修設計を進めています。
 ――当該トンネルの地山の状態や水道の状態は確認していますか
 千阪 そこは気にしながら施工しています。如何せん見えない所の作業になるので、慎重に設計、施工しなくてはいけないと考えています。

耐震対策 架替え中の1橋を除き完了
 対象外の橋梁について新たな優先橋梁の設定を進める

 ――耐震補強の進捗状況について
 斉藤 京都府では管理橋梁のうち、橋長15㍍以上かつ緊急輸送道路および跨線橋・跨道橋を優先的に実施することにしています。内訳は緊急輸送道路が対象230橋、跨線・跨道橋が対象17橋ですが、架替事業中の1橋を除いて全て完了しています。今後は新たな優先橋梁の設定と予算の確保を進めています。
 ――具体的には
 斉藤 15㍍以上の660橋について、耐震補強ができているのは7割弱です。当面は残り3割強の未耐震の15㍍以上の橋梁について対策を進めていきたいと考えています。
 ――その緊急輸送道路外の山家橋(単純ランガートラス桁)では、当初の設計を変えて、照査点検付き、詳細点検付耐震補強工事を発注し、施工していると聞きますがその詳細は
 斉藤 山家橋は昭和31年に架設されたランガートラス橋ですが、トラス部に側径間の鈑桁が載る掛け違え構造を有する特殊な形式であり、設計も古いため、建設当時の資料がほとんど残っていないことから、復元設計から入る必要がありました。
 本橋の耐震工事を実施するにあたり、経年劣化に伴う老朽化も見られたため、補修工事と耐震工事を同時に実施する必要がありました。あて板補修による死加重の増加に伴い、荷重バランスが変わり、地震時の挙動が変化することや、既設部材へ耐震部材が確実に取り付けできることを担保するためには、遠望目視による設計では限界がありましたし、解析が難しく、実施工事においては解析のやり直しを招く可能性もありました。


山家橋耐震補強図

 よって、工事用足場を活用した近接目視による現況確認を行い、これに基づく詳細設計および工事を一体的に実施することで、補修箇所の追加や耐震部材の取付位置の変更等に伴う手戻りを未然に防ぎ、合理的な工事完成を目指すべく、詳細設計付き工事を試行するものです。(12月下旬に現場を巡るコーナーで詳細記事掲載予定)


耐震補強が進む山家橋

 ――落橋防止装置の設置状況は
 斉藤 要対策137橋全てで対策完了済みです。
 ――落橋防止装置の鋼製治具の不正・不良問題に関しての対策状況は
 斉藤 国土交通省近畿地方整備局が発注した勧進橋補修補強工事における落橋防止装置などの溶接不良が判明したことを受けて、身近な問題として捉え、本府でも過去10年間で久富産業株式会社製の製品を使用した補修補強工事について非破壊検査を実施しました。その結果、過去2年以内に発注した工事で3件対象があり、2件が不合格となったため、2件とも鋼製治具を取り替える補修工事を完了しました。過去2年超~10年以内に発注した工事では3件対象があり、内2件が不合格となっています。これに対する補修方法および時期は未定ですが、国土交通省や他の自治体と情報交換をしながら、実際の補修方法を協議した上で対応していきます。
 ――今次の熊本地震を受けて府で対応を検討することはありますか
 斉藤 まずは、緊急輸送道路以外でも、交通量が多い路線や、被災時に孤立集落が発生する橋など、引き続き優先すべき橋梁の対策を進めていきます。その上で、さらに早期復旧し易くするような段差発生の予防保全などに取り組むことを検討していきたいと考えていますが、これは長期的な課題と認識しています。
 ――熊本地震で起きたロッキングピアを有する橋梁の耐震対策が急務とされていますが府管理橋梁でその種の橋梁はありますか
 斉藤 京都府管理の橋梁ではありませんでした。

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