道路構造物ジャーナルNET

特に強調しているのは水

「道路橋床版の長寿命化技術」を発刊

大阪大学名誉教授
大阪工業大学客員教授

松井 繁之 氏

公開日:2016.10.21

同じ仕様でも製作の過程で性能に顕著な差
 凍害や塩害なども詳しく記述

 ――床版防水については、発注機関によって求める性能に違いがありますが、ここではどのように記述されているのですか
 松井 それぞれの機関ごとに制約条件や独自の研究を経て要領を作成していますが、それが正しいとは言えません。先述したように劣化の過程は様々で、同時期に作成した同厚の床版でも出来上がった床版では耐久性能に著しい相違があることがあります。例えば、某都市高速で初期に建設された床版とJH(現NEXCO)の名神道の床版は建設時期的に同じですが、前者はポンプ圧送による打設、後者は当時の技師長さんにヒヤリングしたのですが、土間コンの要領で重い締固め具で表面を叩きながら水セメント比の小さいコンクリートを丁寧に打設したとのことでした。その結果、前者の床版が早期に劣化したのに対し、名神道のRC床版は劣化速度が著しく緩やかでした。同じ仕様書で作ってもこうした違いがあるのです。


塩害や凍害でやられると床版上面の被りコンクリートがスコップですくえるくらいに土砂化することも
(写真はイメージです)

 また、現在は疲労を主因とした劣化とは異なる機構で損傷するケースが、自治体など通過交通量が少ない橋梁を中心に散見されています。例えば塩害や凍害に侵された床版は舗装を剥ぎ取ると、床版上面の被りコンクリートがスコップですくえるくらいに土砂化が進行していることがあります。レーン上の限られた範囲で分布する疲労による損傷とは異なり、その現象は床版全面に起きます。塩害の場合は鉄筋膨張により被りコンクリートがひび割れ、その繰り返しと、水の影響、さらにその上を通過する車両のたたき作用で土砂化を早期に進行させるわけです。凍害によるポップアップした板状に剥がれた被りコンクリートを通過車両が踏み、それに融雪水が土砂化を促し、損傷を拡大していくわけですね。凍害は(疲労のように)床版裏面にエフロを生じされるような視覚的な警告を発生させずに損傷が進行しますので注意が必要です。
 こうした様々な事例に共通するのは劣化の主体としても媒介としても「水」です。これについてオールジャパンで参考にできるよう、床版防水システムはもちろん、滞水防止対策、橋面舗装、排水設備、打継目の止水対策について、分かりやすくかつ詳しく記すことを心がけました。
 また、床版防水については、防水層だけでなく床版と防水層間、防水層と舗装間の接着剤について課題も生じていますので、技術革新を経て留意点を解消しなくてはいけないことや、そもそもその施工前の下地処理の重要性など詳細について記述しています。

無機系の超高強度コンクリートなどを新たに取り上げ
 UFC床版についても記述

 ――補修補強を含めた新技術について具体的な表記は
 松井 基本的には前著で記しておりますので、それ以降出てきた技術について表記しています。具体的には無機系のセメントを主材とした超高強度コンクリート、エポキシ樹脂塗装鉄筋やステンレス鉄筋、FRPロッドなどです。いずれも塩害対策として有効なものです。また(阪神高速道路で実橋への適用段階にある)UFC床版などについても記述しています。
 ――桁端部についても記述されていますね
 松井 「水のしまい」を追求していく中で書かなくてはいけないと感じました。桁端部の構造や桁端部の腐食環境、防食方法など記すと共に、床版的なアプローチとして延長床版工法や新たな桁端構造の提案をしています。
 ――最後にどのような方々に読んで欲しいと考えておられますか
 松井 やはり橋梁の設計、維持管理や建設に携わる技術者、特に道路管理者、加えて将来の技術開発を担う研究者、学生に読んでいただき、参考にしてほしいと考えています。
 ――ありがとうございました

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