道路構造物ジャーナルNET

塩害やASRにより傷んだ橋を補修

福岡市 雑餉隈駅付近の連続立体工事が佳境に

福岡市 道路下水道局
管理部長

宮本 能久

公開日:2016.09.16

約300橋中124橋の対策完了
 平成28年度は20橋を対策

 ――橋梁の長寿命化修繕計画にもとづいた対策の進捗状況についてお答えください。また具体的な変状状況と補修補強内容についても例を挙げていただけましたら幸いです
 宮本 管理橋のうち約8割程度が1960~1980年の経済成長期に建設されているため、これまでの対処療法的な方法では健全性の低下や更新費・修繕費の増大が課題です。そこで、予防保全型の維持管理を行い、健全性の確保およびライフサイクルコストの縮減・平準化を図っています。
 具体的には、学識経験者等で構成された委員会に諮り、平成21年度に「福岡市橋梁長寿命化修繕計画」を策定し、対策を実施しています。平成24年度から、計画に関する協議等を行う「福岡市橋梁アセットマネジメント推進委員会」(委員長=日野伸一九州大学教授)と補修工法の検討等を行う「福岡市橋梁補修工法等検討部会」(部会長=日野伸一九州大学教授)を設置し、学識経験者から直接指導を頂きながら橋梁アセットマネジメントを着実に進める仕組みを整えています。
 進捗状況は、対策が必要な約300橋のうち平成27年度末までに、124橋の対策が完了しており、平成28年度は20橋程度の対策を予定しています。当初より、劣化の進行が著しい橋を優先して対策を進めていましたが、今後は比較的軽微な劣化の橋へと移行していく状況です。
 具体的な変状状況ですが、福岡市ではコンクリート橋が多く、塩害やASRも散見されますが、一番多い変状は水掛かりによるうき、鉄筋露出です。これは、中性化が進行していなくても水掛かり部に局所的に見られます。水掛かり要因で一番多いのは、桁端部からの水の回り込みで、水切り設置工により防ぐことが可能と考えています。
 また、伸縮装置からの漏水が劣化要因となっている場合は、伸縮装置取替え工などを実施しています。


塩害よって劣化した川端橋の下部工/川端橋の外観

塩害によって劣化した無名橋の外観と桁下の露出し腐食した鉄筋

ASRで劣化した小田緑橋の外観と桁下状況

小田緑橋の劣化状況と調査個所

 ――経年劣化や疲労などによる近年の上部工補修・補強実績平成28年度の施工計画について、また鋼床版の疲労亀裂に関する詳細調査および要補強対策工について該当橋についてお答えください。また、コンクリート桁・床版部においてどのような劣化がでているか教えてください。
 宮本 平成24年度:29橋、平成25年度:2橋、平成26年度:11橋、平成27年度:19橋で補修を実施しており、平成28年度は20橋程度を予定しています。
 なお、上部工で疲労による損傷は生じておらず、それ以外の劣化による補修のみとなっています。
 コンクリート桁・床版部の主な変状としては、中性化に至った橋梁における水掛かり部のみのうき、鉄筋露出が圧倒的に多くなっています。

橋面防水は必須ではない

 ――床版防水の施工状況は
 宮本 平成19年の「道路橋床版防水便覧」以降、新設橋・補修橋について橋面防水に取り組んでいますが、橋面防水の施工済み橋数は把握できていません。今後も、新設橋には原則、橋面防水工を施工していきます。補修についても橋面からの漏水が著しく、劣化要因になっている場合には、橋面防水工を施工します。
 橋面からの漏水があまり見受けられず、劣化要因になっていない場合でも、予防保全的に橋面防水工を行うという考え方もありますが、長年そのままで問題なく、水が浸み込みにくい環境であることを勘案し、橋面防水工を行わないと判断するケースもあります。防水工の工法等については、通常のシート系を基本とし、舗装厚が確保できない場合には塗膜系を採用することにしています。
 ――支承取り換えや、ジョイントの取り替えおよびノージョイント化について今年度の施工予定個所数と取替える際の工法・種類をお答え下さい
 宮本 支承取替えやノージョイント化の予定はありません。今年度、ジョイント(伸縮装置)の取替えは1箇所で実施します。工法、種類は、一般的なもので、特殊工法はありません。

愛宕大橋の橋台端部付近にシリアスな劣化
 塩分吸着&電気防食 RFIDも活用

 ――塩害、アルカリ骨材反応などによる劣化の有無。劣化があればどのような形で出ているか(劣化部位やその劣化程度、面積)、またその対策工法などを具体的な橋梁などを挙げてお答えください。
 宮本 まず、塩害から申しますと、福岡市の沿岸部は、ほとんどが博多湾に面しており、内海であることから比較的塩害が少ない地域です。一方で、塩害は劣化が顕在化した時点で、既に広範囲に劣化が進行しており、福岡市の塩害環境でもその後数年で深刻な状況に陥ることがあるため、最優先で対策を講じなければならないと考えています。
 部位別の状況ですが、博多湾の中でも直接海水の飛沫を受ける上部工では、塩化物イオン濃度が非常に高く、塩害に至った事例が散見されます。PC橋は緻密なため、福岡市の環境では塩害に至ることはほとんどありませんが、直接海水にさらされる場合には、稀に塩害に至ることがあります。
 RC橋の上部工が塩害で劣化している場合、対策としては、断面修復材に亜硝酸リチウム含有ポリマーセメントモルタルを使用しています。塩化物イオン濃度が高い範囲が広範囲であれば劣化因子の除去、うき、鉄筋露出の面積が大きい場合はマクロセル防止の観点より、全断面修復工を行っています。           
 一方で、福岡市でも塩分を取り除くのが難しい橋梁に、外部電源方式の電気防食工を適用した事例が、市西部の室見橋と新大原橋の2橋あります。どちらもRCT桁橋で、平成10年代に電気防食工を施工しました。他に、西区の愛宕大橋(PCポステンT桁橋)におきましては、全断面修復工とともに犠牲陽極材を埋め込む電気防食工を本年度施工する予定です。採用に当たっては、構造物のかぶり厚が薄いため、はつり深さを薄くするべく一番薄い陽極材を選びたいと考えています。はつりは、精度を考慮してはつりすぎないようにWJ(手ばつりではなく機械施工)を採用する予定です。

塩害で損傷した愛宕大橋の橋梁概要と位置図および潮の流れ

愛宕大橋の損傷状況と調査箇所

愛宕大橋の外観

 犠牲陽極材には寿命があり、また断面修復材に塩分固着型の材料を使用していますが、実環境における今後の塩分浸透が不明確なため、腐食環境検知システム(RFID)を採用しセンサーをコンクリート内部に埋め込み、経過観察を行っていきます。
 ――近年はPCポステンT桁橋の劣化事例が報告されるようになっていますが、福岡市ではどのような状況ですか。また、愛宕大橋のような劣化はなぜ起きたのか、もう少し詳しく教えてください。
 宮本 愛宕大橋は、室見川の最下流、河口部といってもよい箇所に架かる橋梁ですが、川の流れの影響で、潮が東から西に流れ、左岸側の橋台にぶつかって桁下にまで、波がかかる状況下にありました。そのため建設から20年程度しか経っていないにも関わらず、端部から3㍍程度ですが、主桁下面および横桁に広範囲(12主桁全てに)にわたる浮き、剥離・鉄筋露出が見られるほか、ウエブ上側に部分的ですがひび割れも生じています。また、セグメント継ぎ目部や横締部にも浮き、ひび割れが生じています。


主桁下面および横桁に広範囲(12主桁全てに)にわたる浮き、剥離・鉄筋露出が見られる

 PCポステンT桁の劣化事例については、学識経験者からの指摘もあって、愛宕大橋では、定着部まで防食効果が届くことを確認して犠牲陽極材を設置するようにしています。

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