道路構造物ジャーナルNET

7割以上が単径間、157箇所が矢板工法

大分県 2437橋、252トンネルを所管

大分県土木建築部審議監
(前大分県土木建築部参事監兼道路保全課長)

菖蒲 明久

公開日:2016.05.17

耐震補強 平成31年度までに完了へ
 弁天大橋、滝尾橋など長大橋の補強が進む

 ――耐震補強の進捗状況は
 菖蒲 近い将来発生が懸念されている大規模地震に備えて、被災時の円滑な救急・救援活動や緊急物資の輸送、復旧活動の支援などにおいて、重要な役割を果たす緊急輸送道路の橋梁に対して3プロレベルの耐震補強対策を実施しています。対象橋梁数192橋に対して、26年度末までに166橋(86%)の落橋防止対策を完了しており、残り26橋については、平成31年度までに完了する目標です。次は第三者被害が想定される跨道橋や跨線橋について対策を施していく方針です。
 ――昨年度から引き続き施工している現場および今年度の施工予定は
 菖蒲 昨年度は大在大橋、家島橋、弁天大橋、滝尾橋、恵比須橋など13橋で施工しました。今年度も滝尾橋など8橋で対策する予定です。


大在大橋全景/右岸橋台部の支承交換

耐震補強中の家島橋

 特徴的な補強としては、耐震対策での橋脚補強として恵比須橋(右写真)などでSRS工法を採用しました。同工法は、河積阻害率などの構造寸法上の制約や橋脚基礎への負担増加などの問題を解消するために補強<鉄筋を既設橋脚面に接触配置し、所定の被りを確保するまでに特殊ポリマーセメントモルタルを吹き付けることで既設橋脚と一体化し耐震性能を向上させ、巻立て厚をRC巻立ての約1/5程度に抑えることが可能です。


SRS工法を採用した

 ――落橋防止装置鋼製治具の溶接不良についてどのように対策していきますか
 菖蒲 国の有識者委員会の報告を受け、大分県におきましても過去概ね10年間に実施した工事を対象に現在、確認調査を行っているところです。今後は国の動きをベースに、ほかの都道府県の動向を見ながら、調査により製品に不具合が確認された製品については、補修・補強を行っていく方針です。
 ――概ね10年間と言われましたが、これは不良や不具合を起こした製作会社が製作した落橋防止装置鋼製治具を用いている橋梁を調査しているのですか。それとも鋼製治具を用いている橋梁全数を対象にしているのですか
 菖蒲 後者です。まずは間口を広げて調査しており、過去10年間に橋梁工事を受注した会社に対して、アンケート調査をかけています。その上で、不良・不具合を起こした製作会社の鋼製治具はもちろん、品質管理シートがないなどの不備がある製品についても詳細調査に加えていきます。実際の詳細調査は、費用もかかることから、極力足場をかけなくても調査のできる箇所を選択して行っています。ただ、状況が推移していけば足場を架けて調査することについて否定するものではありません。

橋梁長寿命化 27年度までに約半数の補修が完了
 予防保全的に含浸材を塗布する箇所も

 ――長寿命化修繕計画の進捗状況は
 菖蒲 まず、橋梁の長寿命化修繕計画そのものは平成22年度に策定しており、27年度に改定しています。計画は平成21年~25年度に実施した定期点検の結果、早期に措置が必要な橋梁(Ⅳ、Ⅲ判定)が815橋確認されており、26年度末までに248橋の対策が完了しています。27年度からおおむね3カ年で残る567橋についても補修・補強対策を実施していきます。
 トンネルおよび付属物については平成27年度に長寿命化計画を初めて策定しました。道路のり面工・土工構造物については現在策定中です。
 トンネルについては、平成26~30年度にかけて2巡目の点検中です。1巡目点検でⅢおよびⅣと判定された200本のトンネルについて平成30年度までに完了させる予定です。26年度末時点での完了数は43本(22%)となっています。


トンネル本体工の評価結果

 ――具体的な損傷状況と対策工法は
 菖蒲 損傷としては主部材である主桁や床版、下部工ではひび割れ、剥離・鉄筋露出や防食機能の劣化・腐食が見られ、二次部材の地覆では、うきや剥離・鉄筋露出、高欄では変形・欠損、伸縮装置では間詰めコンクリートに損傷が見られます。
 対策としては、ひび割れ補修、断面修復、再塗装、橋面防水工、伸縮装置の取替などの対策を実施しています。なお、コンクリートについては予防保全的な対策として、主に含浸材の塗布なども行っています。
 ――平成27年度に施工した数量、28年度以降の施工計画についてお答えください。またコンクリート桁、床版塗においてどのような損傷が出ているか教えてください
 菖蒲 27年度の施工実績は150橋の見込みで対象の約半分の対策が完了します。なお、残る半分については、平成28、29年度の2カ年で対策を完了させる見込みです。コンクリート桁およびコンクリート床版部については、主にひび割れやうき、剥離・鉄筋露出等の損傷が見られます
 ――同様にトンネルについて平成27年度に施工した数量、28年度以降の施工計画についてお答えください。
 菖蒲 27年度の施工実績は38本の見込みで対象の約4割の対策が完了します。なお、残るトンネルについては平成30年度までに対策を完了させる見込みです。

床版防水 有無は未把握
 今年度は67橋14,200平方㍍で実施

 ――橋梁に戻りますが、床版防水の有無の把握はしていますか
 菖蒲 大分県における床版防水の施工開始時期、施工割合は現時点で不明です。ただ平成13年ごろには施工していたと思います。27年度の施工実績は64橋(約9,500平方㍍)であり、28年度は67橋(14,200平方㍍)で実施する予定です。車道部はアスファルトシート系、舗装部は塗膜系を用いてそれぞれ防水しています。
 ――支承やジョイントの取替えおよびノージョイント化について
 菖蒲 支承については、27年度に国道213号楓江大橋(鋼ニールセンローゼ桁)や大在大橋、上町橋など11橋で取り替えています。内訳はゴム支承への取替えが10橋192基、鋼製支承への取替えが1橋20基です。


楓江大橋の支承部損傷状況/支承取替中の楓江大橋

 28年度は大在大分港線弁天大橋など12橋で取り替える予定です。内訳はゴム支承への取替えが7橋130基、鋼製支承への取替えが5橋30基です。


耐震補強中の弁天大橋

 ジョイントの交換については、27年度は53橋で実施しています。ゴム製が28橋、鋼製が10橋、埋設型が15橋となっています。28年度は55橋で実施する予定です。なお、ノージョイント化の実績はありません。
 ――ジョイントに関して止水面でのフェールセーフは行っていますか
 菖蒲 基本的にはしていません。そもそも止水性のない既存のジョイントを止水性を有するジョイントに変更する工事を優先的に行っています。その次にジョイントとしての機能を有しているものの止水性を損なっているものについては、止水性を回復させるための機構を取り付けるということはその都度行っています。予防保全的な対策は行っていません。

ASRは18橋、塩害は3橋
 終息期と見なして対応

 ――塩害、ASRなどによる劣化の有無は。劣化があればどのような形で出ているか(劣化部位やその劣化程度、面積)、またその対策工法などを具体的な橋梁などを挙げてお答えください
 菖蒲 県では塩害やASRが確認された橋梁が現在21橋あり(ASR18橋、塩害3橋)、主に主桁や下部工(橋台・橋脚)にひび割れやうき、遊離石灰などの損傷が確認されています。ASRに関しては概ね終息期であると判断しています。補修対策については、ひび割れ注入・充填工や亜硝酸リチウムを含有したポリマーセメントモルタルによる断面修復工、また進行抑制のため表面含浸工等により実施しています。
 含浸材や撥水材は塗布することで、補修機能も期待できますし、その後、点検時に部材状態の確認を妨げられないため、今後積極的な採用を検討していきたいと考えています。また、剥落対策は点検時にコンクリートの浮きが分かれば、第三者被害が起きないように叩き落とすなどの措置を行っています。

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