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塩害によって桁端部が腐食、損傷した箇所も

西日本高速道路大分高速 乙原橋の耐震補強が進捗

西日本高速道路
九州支社
大分高速道路事務所長

遠藤 雄二

公開日:2016.02.01

乙原橋で複雑な耐震対策

 ――温泉地特有の損傷はありますか
 遠藤 別府明礬橋で土中部の酸性濃度が向上しないようにアルカリ性の高い石灰土を入れて対策をしています。地上部に対しては特段の対策は行っていません。
 ――管内橋梁の全体的な劣化の程度と対策は
 遠藤 鋼材の腐食に関しては塗膜劣化や一部で錆が生じている状況です。桁端部については基本的にライニングによる桁端部防水を実施しています。端部への付着塩分量については、ここ2年調査中ですが、(プレストレス定着部への塩分浸透など)深刻な状況には至っていないと思われます。コンクリート部材では一部で剥落が生じている箇所もあります。これはひび割れが生じている箇所に塩分が浸透し、劣化が拡大、剥落に至っているものと思われます。こうした箇所に対してはひび割れ注入や断面修復、剥落防止対策などを実施しています。
 ――耐震補強の実施状況と今年度以降の設置予定について
 遠藤 当管内は昭和55年以降の道示を適用しているため、下部工の耐震補強は不要です。特殊橋梁の別府明礬橋については昨年度対策を完了、乙原橋は耐震対策を進めており、平成28年度に完了する予定です。
 ――具体的には
 遠藤 乙原橋は、A1、EP1、EP2、AP2をせん断補強アンカー工および炭素繊維シート巻き立て工により補強し、補剛桁端部やアーチアバット、EP1、EP2上に対しては上揚力対策のための分担構造を設けるほか、A1、A2の桁端部には制震装置(粘性ダンパー)を取り付けます。アーチライズ部は充腹化して補強します。また、AA1、AA2両側の下横構を補強、VP9とVP3の間、VP8とVP9の間にはそれぞれ斜めに座屈拘束ブレース(MMブリッジ製)を入れて制震的に補強します。


補強が進む乙原橋(上下写真とも)

 ――支承取換やジョイントの取替えは
 遠藤 ジョイントについては、今年度3橋4個所で取り替える方針です。1箇所は鋼製ジョイントに遊間が狭い現在埋設ジョイントを施工している3個所については、MMジョイントを用いて交換します。
 支承の取換え予定はありません。

塩害は別府~日田間で凍結防止材主因による損傷

 ――塩害やアル骨による損傷は
 遠藤 アル骨による劣化は確認されていません。塩害は凍結防止剤(年間約900㌧)によるものが別府~日田間で生じています。損傷内容としては主に桁端部の部分的な腐食、支承本体の発錆などです。対策工法としては防錆塗装が主です。
 ――鋼橋の塗り替えは。また耐候性鋼材を使用している箇所はありますか
 遠藤 今年度に塗り替えを予定している橋梁はありません。耐候性鋼材を使用している橋梁は管内で6橋あります。


床版防水工の施工(左)/舗装の打ち替え(右)

 ――高機能舗装の進捗状況は
 遠藤 平成26年度末で約520車線・㌔を完了しており、進捗率は82%に達しています。今年度は15車線・㌔を施工しており、さらに今年度末に10車線・㌔を発注する予定です。
 24年度から一部で高性能床版防水工(グレードⅡ)の施工を導入しています。切削オーバーレイの表層は、冬季のチェーンによる飛散などを考慮し、高機能舗装Ⅱ型を用いています。
 また、遮水型排水性舗装を東九道(宇佐別府道)のオーバレイ区間で採用しています。
 ――床版防水の敷設率は
 遠藤 床版防水工を施工していない箇所の橋梁上の舗装を打ち換える時はグレードⅡを基準にして施工していきます。ただし、高機能舗装の下にグレードⅠとはいえ防水工を施工している箇所は、床版下へ漏水が始まっているのかいないのか、舗装の損傷がレベリング層(基層)まで達しているのか、それを確認した上で変える場合はグレードⅡに変えますが、そうした損傷がなく表層までの損傷にとどまっている場合は表層だけの打ち換えで済ませたいと考えています。
 ――新技術や新材料の適用は
 遠藤 間接的ですが、夜間規制により集中工事を行うことで交通規制費の削減を行っています。

大規模更新・大規模修繕は2橋を照査 

 ――大規模更新・大規模修繕事業について
 遠藤 調査をかけて大規模に更新するのか、修繕するのかボーダーにある箇所について今年度照査しています。2橋程度です。
 また、トンネルには一部変状が起きている箇所もあり、そうした箇所は随時直していきます。
 ――付言して
 遠藤 来年度に大分管内の東九州自動車道は全通します。お客様のサービス向上の面からするとこれまで以上に厳しい目が注がれるであろうと考えています。点検などは通行止めしながら行っていますが、出来るだけ通行止めを少なくするようなことも考慮しなくてはならないと考えています。また、全線開通となるとさらに交通台数も増えることが予想されます。特に中津工事事務所管内の区間が全通すれば、大型車交通台数が増加することも考慮されます。こうした課題に対して多角的に取り組まなければいけないと考えています。
 ――ありがとうございました
(2016年2月1日更新)

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