道路構造物ジャーナルNET

急速に業績を回復

OSJB 補修補強、ニューマチックケーソンが利益を押し上げ

OSJBホールディングス株式会社
代表取締役社長

井岡 隆雄

公開日:2015.11.26

技術に独自性を有していることが勝因
 「自社しかできない」案件に挑む

 ――以前、オリエンタル建設時代はプロテックという補修補強専門子会社を有していましたが、採算を取るのが難しく清算してしまいました。補修でこれほど利益が出るようになった理由はどこにあるのですか
 井岡 当時は得意とする技術がなく、他社と同じような補修補強を行っており採算は終始良くありませんでした。その反省があったことに加え、独自技術を有していた白石と合併したことで、それらのさらなる開発が進み、その成果が出てきたことが大きいと思います。下部工補強としては水中既設構造物の仮締切工法「STEP工法」、パイルベント橋脚の圧入鋼板巻立てによる耐震補強工法「Kui Taishin-SSP工法」など、上部工ではRC床版のプレキャストPC床版への取替工法「SLJスラブ」、RC橋の桁架け替え工法「SCB工法」などがあります。他社でも施工できる仕事は受注せず、当社しかできない仕事、当社の独自性を発揮できる仕事を選別受注することで利益を上げています。


STEP工法で橋脚補強した浦戸大橋(高知県)

SLJスラブで床版を取替えた向佐野橋(NEXCO西日本 九州道)

45°の斜角を有する菅野川橋もSLJスラブで床版取替(NEXCO西日本 中国道)

SCB工法で桁を架替えた億尾川橋(NEXCO西日本 沖縄道)

 ニューマチックケーソンも同様で、大型治水施設や今後の大型案件の立坑需要へ対応するため、大深度、大口径に向けた設備投資を以前より行っています。合併以前は苦しい時期が続いたため設備更新もままなりませんでしたが、利益率が向上してきたこともあり大幅な設備投資に踏み切っています。


牧湊高架橋のニューマチックケーソン施工(沖縄総合事務局 南部国道事務所)

遠隔操作により施工する(左)/ケーソン内部は無人施工(右)

売上500億円を目指す
 鋼橋分野の改善が必要

 ――次期中期計画の経営目標は
 井岡 現在立案中ですが、売上は500億円を目指します。そこで不安定要因が新設橋梁需要の低下です。PC分野(オリエンタル白石)は堅調ですが、鋼橋(日本橋梁)分野の落ち込みが目立っています。国土交通省案件を受注できるよう注力しているところですが、思うようにいっていないのが実情です。当然ですが、(鋼橋ファブは)工場の稼働率が上昇しなければ利益は出せません。併せて、現場での利益率もPC分野に比べて若干低い状況にあります。現場の施工効率の向上を図る必要もあります。
 ――しかし許田高架橋(NEXCO西日本)のような鋼橋の補修補強を伴う大規模案件が受注できたのは日本橋梁を傘下に収めたことが大きいのでは
 井岡 その通りです。従来のコンクリート橋の補修補強だけでなく鋼橋も含めた複合構造の補修補強工事を受注できるようになったことは大きなシナジーです。ですから今後は工場で利益を出すのではなく、現場でエンジニアとして稼ぐ、そうした姿勢が必要です。それにしても鋼部材の製作はそれほど多くあるわけではないので、工場の稼働率が上がらないのは悩ましいところですが……。
 ただ、グループ全体としては持株会社化したことにより資金効率を向上することができ、有利子負債を大幅に圧縮することができたので、持株会社としてのシナジーを今後も発揮していきたいと考えています。

補修補強の売上倍増目指す
 海外展開はまず事業基礎構築から

 ――500億円を稼ぐために必要な方策は
 井岡 短、中期的には補修補強事業の強化、長期的には海外展開の布石を打つことです。
 補修補強事業は現在の売上100億円を倍増の200億円に成長させたいと考えています。先ほど紹介した技術に加えて、剥落防止施工後もコンクリートの表面を可視化できる「NAV-G工法(UV仕様)」、地盤内に空気を注入することで、形成された空気溜まり層が地震時のクッションとなり、液状化災害を防止できる「空気注入不飽和化工法(Air-des工法)」など新技術を積極展開することで達成を実現します。
 海外展開に関しては、3~4年間の受注は考えず市場調査やソフト及びハード面の検討に邁進するよう担当者に伝え、職務にあたらせています。
 ――普通は売上を出せ! と発破をかけるところですが
 井岡 海外展開は、拙速に受注しても準備ができていない状態ではリスクが高すぎます。現在海外事業に携わっている人材は、海外で営業経験のある者を社外から採用しましたが、過去における我が社の手痛い経験からも相当に調査や検討を進めないといけません。現在はシンガポールなどで当社の技術をプレゼンするとともに、現地会社とのアライアンス、下請化、または現地法人の設立などあらゆる選択肢を模索している段階です。日本の技術は(国によっては)オーバースペックな所もありますから、それを現地に合わせた水準へ保有技術をカスタマイズしていくことも重要であると考えています。そういった面も研究する必要があると考えています。
 海外展開にはもう1つ考えがあります。それは外国人の技術者を当社が育成することです。それにより、長期的な技術者人口の減少に対応することもできるようになると考えています。
 ――補修補強分野の売上倍増には、人手の確保が必要ですが、それはどのように手当てしますか
 井岡 新設橋梁の需要減少は、オリンピックを境としてその傾向が強まっていくことが予想されます。そのため、人員確保は基本的に新設橋梁セクションの技術者を配置転換することで対応します。
 ただし、新設橋梁事業は、国土交通省、高速道路会社、自治体問わず持続していきたいと思っています。売り上げを確保したいがために言っているのではなく、技術力維持のため、ある程度の新設需要は必要だと思うからです。新設橋梁の施工で培う施工能力・設計能力が補修補強事業の競争力を高めていくものと考えています。

鋼橋塗膜剥離にRPR工法を導入
 建築分野ではプレキャスト化技術を展開へ

 ――他、新分野、新技術の導入など
 井岡 建築分野ではオールプレキャスト化技術の展開を新設およびリニューアルの分野で図っていきます。
 また、鋼橋の塗装において、PCBや鉛を含有している塗膜の除去が喫緊の課題となっていますが、当社では局所的な電磁誘導加熱を使用して既存塗膜と鋼材間の界面を破壊することにより剥離除去を行う「RPR工法」用の設備を5台購入し、今後の塗り替え工事に対応します。こうした設備投資も積極的に行っていく予定です。


RPR工法も導入した
 ――ありがとうございました

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