道路構造物ジャーナルNET

技術者の配置、分野の偏在を解消し、フレキシブルな組織へ

横河ブリッジ 合併の狙いを名取新社長に聞く

株式会社横河ブリッジ
代表取締役社長

名取 暢

公開日:2015.11.16

売上高700億円台、利益率3ポイント向上目指す

 ――業界の環境をどのように考えていますか
 名取 今年度の鋼橋発注㌧数は25万㌧程度と見ています。今後は20万㌧程度で推移していくのではないでしょうか。ミッシングリンクの解消、暫定2車線で供用している部分の4車線化、老朽化した橋梁の架替などがその内訳になっていくと考えています。その中で中長期的には、新設橋梁の桁本体や合成床版、補修補強などで4万㌧、その他で1万㌧、売上額ベースで700億円以上(今年度は約5万㌧、680億円)をコンスタントに達成していきたいと考えています。
 ――その他1万㌧の内訳は
 名取 1つはトンネルのセグメントです。いわゆる厚板を用いた鋼殻セグメントで、今後も数年間で数10万トンの需要が見込めます。これを確実に受注していきたいと考えています。また中央環状品川線や横浜環状北線などでも大規模に採用していただきましたが、パワースラブ(合成床版)のトンネルへの適用を今後も積極的に営業していきます。
 もう1つは耐震デバイスです。生産重量的にはそれほどありませんが、売上としては年間10~20億円程度を見込んでいきたいと考えています。
 ――売上高を中長期的に700億円台に増加させ、利益率も向上させるために取り組む具体的内容は
 名取 利益率はおっしゃる通り、今年度予算も売上680億円に対して、35億円(経常)と5%ほどしかありません。これを将来的には7~8%に高めたいと考えています。それを実現するためには工場生産、架設現場、保全現場の全ての面でさらなる効率化が必要です。

復元設計も可能なソフトを開発

 ――大阪工場は既に、非常に最適化されたラインのような気がしますが
 名取 その評価はありがたいですが、甘んじることなくさらなる最適化に努めます。具体的には塗装設備などの新規投入などを検討しています。また、新設においては製作および施工効率が今一つ良くありません。そのため技術開発や技術提案を通じて、設計変更を適切に働きかけていくことも積極的に行っていきます。
 また保全については、照査点検、詳細設計段階から積極的に関わる必要があると考えています。最近、京都府の案件で古いトラス橋の耐震補強業務を受注しましたが、こうした橋梁は、やはり我々橋梁ファブがエキスパートとしてきちんと現場を確認し、図面作りから携わらなければ、良い成果は出せないと考えています。同橋もそうなのですが、古い橋では図面など資料が不足している場合も多く、復元設計のようなことが必要な場合もあります。当社を含むYBHDは新設もしくは既設補修補強の数多くの経験がありますが、それを生かして横河技術情報が古い橋梁の復元設計を効率化するソフトウエアを開発しており、復元設計の受託を始めています。こうしたグループとしてのアドバンテージを生かしつつ、業界全体としては保全積算の適正化を発注者にお願いし、売上の増加、利益率の向上に努めていきます。

順調なアルミ製検査路や足場
 取替床版分野に注力

 ――新しい製品や工法の開発は
 名取 住軽日軽エンジニアリングと共同で開発、展開しているアルミ製検査路や足場、型枠などが一つです。「KERO」などが該当しますが、同分野は順調に売上を拡大しています。


KEROの施工事例

 中、長期的に取り組んでいるのは、床版の取替です。NEXCO3社、首都高速、阪神高速の大規模更新においては床版取替が主要事業の一つになっていますが、それ以外の国土交通省、自治体でも床版取替はトレンドになりつつあります。当社は合成床版、鋼床版、PCプレキャスト床版全てに対応していく方針です。
 ――NEXCOは、路面凍結防止の観点から基本的に鋼床版ないし鋼・コンクリート合成床版は床版取替に採用しない方針です。PCプレキャスト床版も取り組む分野として入れておいでですが、製作から行うのですか
 名取 プレキャスト床版の製作は他社にお願いし、当社は工事のみ担う方針です。他社の買収などにより、製作も担うことは現時点では考えていません。
 鋼床版、合成床版については損傷したRC床版について交通規制期間を短縮しつつ、床版重量を軽量化(すなわち桁以下の構造に補強を要さないという意)する目的で使われるケースが自治体や国土交通省などで増えています。そうした案件を意識しています。なお、鋼床版はどうしても疲労の問題を指摘されますので、疲労が生じにくい鋼床版の開発も進めています。また、橋梁によっては合成桁構造もあり、そうした橋梁において床版の取替は少々複雑です。そうした分野では撤去も含めた取替方法についても提案できるよう開発を進めています。
 首都高速、阪神高速の大規模更新は(既設構造において)鋼床版が多数を占めることから大きなマーケットとして積極的に当社の技術をアピールしていきます。

腐食環境激しい箇所に「Smart ZIC」
 塗膜除去にIH式塗膜剥離技術を導入

 ――先日は「Smart ZIC」を公開デモされました
 名取
 同工法はコールドスプレー技術を応用した特殊金属塗装工法です。


Smart ZICの施工

 金属材料の融点あるいは軟化温度よりも低い温度のガスを先細ノズルにより超音波流とし、その流れの中に金属材料の粉体を投入し加速させ、基材に高速で衝突させることで、基材の表面に皮膜を生成するものです。鋼橋の防食上の弱点となる高力ボルト継手部や部材角部などに犠牲防食作用で高い防食性能を発揮する亜鉛被膜を生成し、鋼橋の長寿命化を図ることができます。YBHD、横河ブリッジ、東京ファブリック工業、琉球大学の4者による共同研究で、現在、沖縄県の沖縄都市モノレールで試験施工を実施しています。今後は腐食環境の激しい個所の補修補強案件において当社の重要な技術提案の際のアイテムとして活用していきます。
 また、PCBや鉛を含有する既設塗装塗替の際の剥離技術についても積極的に提案していきます。
 ――独自に塗膜剥離剤を展開している鋼橋ファブもありますが、横河ブリッジもそうした技術を導入するのですか
 名取 当社はIH(電磁誘導加熱)を提案していきます。関門橋の塗替でもRPR工法を活用しています。現在はウエブなど平滑な部分が主ですが、これを隅角部や添接部などにも適用していけるよう技術開発に取り組んでいきます。


IH式塗膜除去の施工例

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