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床版の補修・補強が総額の7割を占める

名高速 大規模修繕 15年間で1250億円を投資

名古屋高速道路公社
理事

志水 公敏

公開日:2015.10.01

大高線と万場線の床版補修補強工事に集中投資
 桁下に足場をかけさらに詳細調査

 ――今、大高線と万場線という具体的な路線名が出ましたが、工事期間はどの程度を考えているのでしょうか
 志水 床版工事に限ってとなりますが、大高線と万場線に今年度から概ね6年間で集中して投資していきます。補修だけでなく一部で補強も行います。

床版の取替などは考えず

 ――以前の取材で、場所によっては床版取替えが必要になる可能性に言及されていましたが、昨年度行った調査の結果、どのように判断しましたか。現在施工している万場線の舗装修繕工事を取材してみると、床版防水を行っていなかった床版の上面が損傷しているケースがあり、なおかつ下面からは遊離石灰が生じている箇所もありましたが。部分的な全断面修復、予防保全的な観点から考えると、損傷が生じている床版パネルの取替えということも検討の余地があるように思われますが
 志水 現在のところ床版の取替え、打替えということは考えていません。前回言及した重大な損傷が生じている個所で詳細調査も行いましたが、その結果、砂利化などは生じておらず、構造上致命的な損傷は生じていませんでした。
 ただ、床版下面から目視すると剥落等が生じています。その原因についてはもう少し調査する必要があります。補修工事の際に下面も見られるよう足場を設置して、より詳細な点検を行います。
 床版防水を行っていなかった個所で床版上面に損傷が生じている箇所は少なくありません。そうした個所についてはきちんと断面修復を行うと同時に複合床版防水工を施工していきます。
 ――昨年度行った上面からの詳細点検はどのような手法を用いたのですか
 志水 部分的に小径コアを抜いて調査しました。その結果では問題はありませんでした。

繊維シート貼り付けまたは鋼板接着で下面から補強
 当面は詳細設計付補修工事で発注 今後は独自要領作成

 ――補強は基本的には下面からの貼り付けということですか
 志水 基本的には下面から炭素繊維シートおよびアラミド繊維シート貼り付けおよび鋼板接着などの手法で補強します。合わせてひび割れ部にはエポキシ樹脂を低圧注入充填し、接合するIPH工法等を採用し、補修・補強を行っています。


RC床版の補強、複合床版防水

 ――兵庫県などでは、補修補強業者に詳細調査、詳細設計付橋梁修繕工事を試験的に発注しています。これは受注した業者が受け負けを起こさないよう、より現場に見合った点検のもと詳細設計し、補修補強を行うことを企図したものです。保全工事の不調不落などに悩む自治体では、打開策の一つとして考慮されていますが、名高速ではどのように考えていますか
 志水 床版の大規模修繕工事は、詳細点検の数量に基づいて工事を発注しています。ただ、現場に入った受注業者に照査点検してもらい、改めてその点検結果に基づく詳細設計を業者に行っていただく方式を採っています。全てこのような方式で行うということではありません。大規模修繕に基づく床版の補修工事は初めてですので、慎重に工事を行い、そこでの試行錯誤や各種知見に基づいて最終的には独自の大規模修繕設計施工要領を作成し、状況に応じた発注ができるようにしたいと考えています。

電磁波レーダーによる探査
 より一層の精度向上を図る

 ――床版の健全度は舗装をめくってみなくては分からない難しさがあります。名高速では電磁波レーダー搭載車による舗装面からの非破壊検査を行っていますが、万場線ではどのような状況でしたか。以前に増厚工でSFRCを用いたところでは、(鋼繊維の影響により)電磁波レーダーでは点検しにくいといった事情もあったようですが
 志水 電磁波レーダーによる舗装面からの検査は、実際の床版の損傷状況と比較すると多少の差違が生じる場合がありますが、効率的な点検に寄与する技術と考えています。今回差違が見られた箇所などは今後も分析を行い、精度向上のための検討を行っていきます。

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