道路構造物ジャーナルNET

軟弱地盤の泥炭層、土被りが薄くpHが低いトンネル

NEXCO東日本の技術を結集し難工事に挑む

東日本高速道路株式会社
東北支社 
山形工事事務所長

安川 義行

公開日:2015.03.01

 橋脚部も杭の長さは最大90㍍
 上部工は鋼桁、手延べにより送り出し

 ――橋脚部については
 安川 鋼管杭による施工を考えています。真空圧密は行いません。地盤改良は(鋼管杭施工時の)重機が載る部分を行う程度です。杭の長さは橋台部同様に最大90㍍近くになると設計しています。
 ――上部工については
 安川 軟弱地盤のため比較的軽量な鋼桁を採用しています。加えて、通常であればトラッククレーン+ベント架設のところですが、クレーンなどの重機や桁の地組ヤードのために深さ約3㍍の地盤改良が必要になることから、手間およびコスト的に縮減できると判断し、A2からA1に向けて手延べ式の送り出し架設を採用することにしました。(架設のための)地盤改良にお金を使うなら本体にお金を使うほうが良いですよね、送り出し架設のため鋼桁の重量は多少増えますが、本体の剛性も上がりますし、(鋼桁のため)橋脚や基礎に対してクリティカルな重量増にもなりませんから。

 下部工を上下線一体化しコンパクトに
 高畠深沼橋で

 ――白竜大橋以外では
 安川 国道13号と国道113号を交差して既供用の南陽高畠ICに接続する個所に計画している橋梁として高畠深沼橋があります。同橋梁はICに近接しているため4車線の高架橋を施工します。建設地は基礎の深い(80~90㍍)特殊な地盤であり、トータルでの基礎形状をコンパクトにするため下部工を上下線の一体構造にしています。桁架設工法はトラッククレーン+ベントを計画しています。国道上を送り出す場合、より長期的な交通規制が必要となり、それを回避するためです。距離も短いことからベントや架設用重機のための地盤改良はやむをえません。

 盛土部は3工法を試す
 20年間で20~30㌢の沈下を想定

 また、路線の多くを占める盛土構造については、当該地区は、表層より高有機質土(Apt層)と有機質粘土(Apc層)が10㍍程度の厚さで堆積しています。下方には砂質土層と粘性土層の互層地盤が形成され沖積層が15㍍続いており、続く洪積層は、有機質土層と粘性土・砂層の互層で深度100㍍以深まで堆積しています。
 盛土部は白竜湖工事で試験施工を実施しました。具体的に3工法を試しました。


                    エリア1施工イメージ

 エリア1では、遮水矢板を併用して、気密シートで改良範囲を覆い、気密性を確保する工法を採用しました。吸い上げた水と空気を途中のタンクで分離することで、安定した高い負圧を作用させ、地盤を安定化させる工法です。


                    エリア2施工イメージ

 エリア2では、表層部に1㍍程度の高さの土砂を載せ、それを負圧シール層として利用することで、気密シートを不要とする工法を用いています。負圧シール層は負圧が作用しないため未改良層は残りますが、一方で中間砂層を介した周辺地盤の間隙水の吸い込みを遮水シールで防止できます。エリア3では、エリア1の遮水矢板を併用しない工法を試しました。
 これらの手法について、真空載荷から盛土開始時期や盛土を施工するスピードや施工時の周辺地盤への影響を確認しました。盛土時ならびに完成後の沈下量を計測し、これを長期残留沈下解析に反映し、沈下量を予測して道路設計に反映していきました。具体的には、長期的に沈下していくと幅員が狭くなっていくので、当初必要な全体幅員をどの程度確保するのかということや、将来沈下量を予想(20年間で20~30㌢を想定)した盛土高の確保(走行性を考慮した縦断線形の確保、10年間でオーバーレイを1回行うぐらいで沈下量が済む程度)です。
 試験施工時における周辺地盤への影響を鑑み、圧密改良範囲を盛土直下のみに見直すこととあわせて先行的に工事用道路として使用する場所を中層混合処理により地盤改良し粘土層にまでくい込む形で壁層を作ることにしました。壁層を本線盛土両側に形作ることで縁を切り、地盤の引き込み抑制効果を期待し周辺の水田への影響を最小限にするためです。


                       設計方針

 なお、このような施工をしても長期的には盛土構造と橋梁やカルバートなどの構造物の境界部で沈下速度差による段差が避けられないことから、沈下計を土中に埋め込んでおき動態観測により設計値と実際の解析値の違いを確認しながら、工事中に議論しつつ施工を進めていきます。段差が生じないようにはできませんので、その値を既知として適切な維持管理により対応していく予定です。

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