道路構造物ジャーナルNET

⑮インフラ・メンテナンスの地方の状況

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術管理監

植野 芳彦

公開日:2017.02.16

3. モノ

 ここでいう「モノ」とは、委託したコンサルさんも含めた、官としての活用すべき道具のことである。機械やソフト、モニタリングシステムなどであるが、まだまだ見えない部分が多い。開発の速度が遅すぎる。実証もできていない。何でそうなってしまっているのか?現実を見ていない人たちが議論しているからである。
 モニタリングシステムに関しては、「安価で有効で」あることが重要であると思っている。さまざまなところで、シンクタンクやIT企業、コンサルさんが、モニタリングシステムの重要性を説き、導入を勧める。ここまでは良い。しかし、私が判断するところは、それらの方々が自分で、お金を出して実際に着けてみて実証しているか? である。申し訳ないが、私は20年ほど前からモニタリングシステムに関しては検討している。数年前から数箇所に試験的に導入し富山市内でも設置している。これは自分だけでなく、協力してくれる企業があるからであるが、皆さん会議等でありがたがられる企業の方々はそうでは無い。こういう、新規開発案件は汗をかいて初めて認められると言うことを、理解されていない。技術者の魂が無いとしか言いようが無い。
 富山市でも、モニタリングシステムに関しては現在、数社で実証してもらっている。これらの有効性を確認し、有効であれば実際に活用していきたい。しかし、官側としてはこのような「実」の部分と、言葉だけの「虚」の部分(これは企業もしくは個人)の匂いを嗅ぎ取り虚を排除していかねばならないが、実際には虚にだまされるケースが多い。虚はいらないのである。
 維持管理は非常に難しい。私は、さまざまな失敗をしてもよいと思っている。それが次の糧になるならば。判断を間違っても、しかたがないこれまで経験が無いのだから。相談していけばよい。 
 それができないのが人間かもしれないが。課題を一緒に解決できる同志が必要だ。「全数近接目視」という指導の下点検を実施しているわけであるが、点検者も使えず、足場は組みたくないという場合に、特殊高所技術による点検を行ってみている。この先どうしていくか思案のしどころだ。


どのような点検技術が、どこまで必要なのか模索している(写真は特殊高所技術)

 最近、今年度発注した業務内容を、写真を見ながら検証しているが、目に付き、あきれているのは「施工不良」と「計画、設計上の不都合」である。ジャンカやかぶり不足も多々あるし、示方書を守っていない。ディテールの不備・・・・・と枚挙に暇が無い。これも、これまでは「言うな」と言われてきた。しかし、今後のためにしっかり言うべきである。また市民に対しても言うべきである。「混乱する」とか「過去のことを言っても仕方が無い」と言うが、今後のためなのである。
 同じ間違いを繰り返さないために。これらは、不良品を受け取ってしまったために、そのリスクを今後も背負い続けることを意味する。過去の人たちが、どういう意志でそういうモノを作っていたのか知りたいところである。維持管理の時代には、管理者責任が発生していく。管理者として不明確なものやいい加減なものは、まずは受け取ってはならないのである。設計施工精度の確保は非情に重要になってくる。

4.カネ

 自治体の最大の課題は、財政である。十分な管理費用が捻出できない。まあ、ただカネを増やせばよいかと言うとそうでもない、事業執行のための職員の数も少ないと言われる。
 橋が落ちれば、だれでも危険だったとわかる。トンネルが崩れれば同様である。しかし、これを事前に対処するのが官の役割であるわけであるが、財政上対応できない場合が出てくる。その時どうするのか? 簡単に言えば通行止めである。しかし、通行止めをすると、住民から、「早く通れるようにしろ。」と言ってくる。ここで、なぜ橋は傷むのか? であるが、まあ経年劣化というものもある。しかし、それ以上に、まず計画・設計の不備である。時効であろうから言うと、示方書違反もある。その他設計で重要なディールの配慮不足もある。さらに、施工不良。そして過積載車両と、さまざまな理由が重なっている場合が見受けられる。いうなれば、先人から負の遺産を受け継いでしまっているのである。無駄金も使っているが、これは今後の反省材料とできれば決して高くは無いと考えるが、今後も同じことをやっていく余裕は無い。


施工不良による劣化の進行。見ているだけで嫌になる

 以前、現場に行き、見ていて「ああ、これは原因は施工不良だ。」と言うと、「それは言うな」と言われた。「なぜ?」かというと「自分たちの先輩が担当し、地元業者が施工したから」なのである。これでは、間違いは繰り返される。失敗は失敗で後輩や、後から続く者に示すことによって有効になる。私自身、散々失敗してきた。失敗を隠す体質が今後直らなければ、メンテナンスはできないであろう。それが判断を間違わせる。
 現在、点検だけで、四苦八苦しているが、維持管理はその後からお金が掛かる。補修になれば点検に比して一桁二桁、違った額が掛かっていく。今後、本格的に補修費が掛かってくる時代に突入するとどうなってしまうのか?其れが「長寿命化」の落とし穴である。
 きちんと、マネジメントできないと破綻していくことになる。事故も起きる。

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