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㉗インフラ・メンテナンスの地方の状況

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監
植野 芳彦 氏

1. はじめに 

 先月・今月は、富山でも結構雪が降り、気温も低かった。富山は天候が悪い日が1年を通して多い。「弁当を忘れても、傘は忘れるな」と地元の人が言う。これだけでも生産性が落ち、気分も暗くなる。政府も「働き方改革」と「生産性改革」を声高に言っている。しかし生産性をどう上げるかという、具体案は示されない。

 実は、生産性の向上は昔から取り組まれているはず。私自身、「建設コストの内外価格差」「施工新技術総合プロジェクト」「新標準設計」「各種構造物設計ガイドライン」等で検討してきた。一言で言って、日本の生産性は全般的に非常に悪い。その中でも建設事業の生産性は悪い。これが、地方に行くとさまざまな条件によりさらに悪化するのではないだろうか?

 いわゆる、橋梁の「法定点検」というものが、30年度でひととおり終了し、31年度からは2順目に移行していくはずである。道路メンテナンス会議などでも、「点検率」を非常に気にしている。

 まあ、これは理解できる。日本の役所の悪いところは、上から指示されないとやらない、考えないことだ。しかし、指示されれば、馬鹿みたいに実行する。第二次世界大戦時の日本軍の失敗の本質だ。

 ここに、「働き方改革」であるが、結局は個人の裁量だと思う。技術者としてどうするかである。技術者というのは、たとえば設計の分野においても、職人的なところがある。納得するまで突き詰めたい、という性質がある。これをどうするかである? ここをいい加減にしていくと、「技術立国日本」はなくなる。世の中、机上論が多すぎる。机上論で、飯を食っている連中が多すぎるのである。

 これが生産性を悪くする最大の要因だろう。


2. 橋梁トリアージ再度

 私が「橋梁トリアージ」と言って久しい。富山市でも、もう3年以上言い続けやっと最近様々な方々が言い出した。しかし、正直、「もうその時期はすでに遅し」なのである。

 なぜ「橋梁トリアージ」かというと、役所内をはじめ、議会や市民にも、ことの重大性と緊急性を訴えたかったのだが、理解されなかった。「トリアージの目的は助けることだ」という方がいるが、それは「助かる人は助ける」であり、非常事態に、緊急にそれを判断していくことである。全ては助けられないのが現実である。多くの人々を助けることが目的だが、そこに「全てを助ける」という変な正義感が入ってしまうと、全滅する可能性すらあるので、的確な判断が求められる。この辺も、日本人は下手なところである。この判断を下すのは、緊急時は特に少数でよい。これが、皆の意見や相違を聞いていると手遅れになる。

 よく、私もこれまで言われてきたのは「そんなことをして、誰が責任を取るのか?」なのであるが、これは、最上位の者が取ればよいことである。ただ、この最上位のものに説明しても理解されない場合が非常に多い。民主主義にかこつけて、「皆の理解が得られない」という話になるのだが、基本的に全員の理解というものは、存在せず、ましてや専門的知見を有する判断は、専門家に任せるべきである。その判断が、間違った場合、または、よく言われる「狼が来た」の状況になってしまうのは、仕方が無いと思う。今の世の中は、犯罪的なものに対して鷹揚である。手抜きやミスに対しても肝要だが、判断を伴うものに対する場合に執拗に説明が必要になる。それでは、時機を逸する場合も出てくる。

 本来、トリアージには「決断する」という事が重要である。ある意味、非情さも必要である。後に批判を受ける覚悟も必要である。維持管理には、そういった、悪者になる覚悟が必要であり、これが出来れば、スピードアップが出来ると思う。私は、いつでも悪者になり、責任を取る覚悟はできているので、富山市の若手の職員は、思い切ったことをやっていただきたい。お前の責任とはなんだというのが聞こえてきそうであるが、それは、とりあえずは辞めるということである。その失敗が、後々生かされれば、それは失敗ではなく、教訓になる。そのためにはいつでも喜んで辞める。



セカンドオピニオン(協議)状況と、研究協力メンバーとの協議


 蛇足では有るが、実際に、東日本大震災でトリアージを行った、知り合いの医師と話したときに、「壮絶な覚悟と言うか使命感を感じた」ということを聞いた。イザという時の判断の難しさ。「あきらめてよいのか? 見捨ててよいのか?」という迷い、後悔……。しかし、決断しなければならない辛さ。今これが求められるのである。決断が出来ない者は決断の場に居てはならない。

 それに比べれば、インフラのトリアージは、自分のこれまでの経験と判断によるものであり、罪悪感も少ないはずである。こういうと、また上げ足を取る世の中であるが、そんな暇なことはしないで、生産性を向上しましょう。

 あとはトリアージで決めた優先順位に基づき、適切な処置を施していけば、事後保全よりも有効な管理が期待できる。

 現在、シミュレーションを行っているところであるが、私は傾向がつかめればよいと思っている。現在、毎年20億円ほどの投資が必要だという結果になってきているが、これは、赴任当初に予測した額とほぼ一緒である。シミュレーションは想定項目が多いので、見直していく必要が生じることを忘れてはいけない。24年に策定しそれを今でも、ありがたがっているようでは、将来予測はずれていく。見直しは必須だ。