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③ 橋梁技術移転と草の根外交!≪キルギス共和国≫

高速道路の橋とともに40年

中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社
チーフエンジニア(橋梁担当)
宮内 秀敏 氏

【橋梁の維持管理技術移転】

 技術移転は、まず本省道路管理局と地方局から総勢30人ほどを“マスター・トレーナ”として指名し、我々は彼らを指導して橋梁の維持管理技術を習得してもらったうえで、彼管理事務所の職員を指導してもらうというものであった。技術移転にあたっては、我が国の技術・基準をそのままではなく、キルギス国の実情に合った(継続可能な)橋梁の点検、健全度評価、補修方法となるよう留意し、現場での指導、橋梁維持管理マニュアル作成の指導や維持管理の基本などの講演を行った。(写真-18)


写真‐18  技術指導状況(右端が筆者)

 とくにマニュアルの作成は、我々が作るのではなく、あくまで指導・支援という立場をとることが重要であったと考えている。とって彼らの原落ち本邦主な成果品は、①橋梁台帳、②橋梁点検マニュアル、③橋梁健全度評価マニュアル、④橋梁保守・補強マニュアルである。

 橋梁台帳は、フォーマットを作成し、国際道路および国道に架かるすべての橋梁、およそ860橋について既存資料や現地調査によりそれを埋めていき完成させた。また、維持管理用の各種マニュアルで重要視したのは、実情に合った使いやすいものとすることである。我が国の基準・マニュアル類をそのまま持ってきても使われず埃を被るだけである。自然環境条件、構造物の構造、管理体制、技術水準、入手可能な補修材料等に合わせたマニュアルとなるように気を使った。前にも述べたが、自然環境条件を例にとると、年間降雨量は日本の1/4、気温が高い夏場の最高湿度が40%であり、鋼材がなかなか錆びない。あるいは冬場は氷点下20℃~30℃になるが、日本のように凍結防止剤をあまり使わないで、すべり止めの砂を撒くため、塩害がない、あるいは交通量が少ないなど橋梁への外力がマイルドであるなどが挙げられる。

 この業務では、マニュアルの作成を、ワークショップで指導をしながらマスター・トレーナと協働で行い、自分たちが作ったマニュアルだという認識を持ってもらったことが一番の成果であったと思っている。マスター・トレーナからは、熱心に技術を吸収しようという意気込みが感じられた。プロジェクトは終了したが、引き続き我々の技術移転が実を結び、橋梁維持管理のレベルアップにつながることを期待している。


【おわりに】

 いろいろ、他国のことを述べたが、我が国の場合も、キルギスとそんなには変わらないのではないかと思うようになってきた。あまり偉そうなことは言えないのではないかということである。キルギスほどではないが、点検や補修も十分に実施されているとは言い難く、その技術力にも疑問を感じるときがある。さらに予算の制約や技術者の不足から、最適な時期に補修などがなされていない場合も散見される。構造物の維持管理の重要性については、最近の議論の高まりから異論はないと思うが、実行動がまだまだついて行っていない。この状況を何とかしなければ、手遅れになったり、無駄なお金を使うことになる。


 最後に一言。仕事を離れて、キルギスと日本、お互いを理解しあえるように、キルギスに2軒しかない日本食レストランで一緒にカツ丼やカレーライスを食べたり、キルギスレストランでは、ヒツジの肉を中心としたキルギス料理を食べたりして、いわゆる“草の根外交”に努めた。中でも印象深いのが、馬入酒(クムス)である。名前は酒だが、発酵して1%ほどアルコールがあるだけで、ちょっとチーズ風の匂いのある酸っぱい馬の乳である、キルギスは発酵飲料の宝庫であり、ほかにも粟や稗で作った発酵飲料もある。一緒に行っていた日本人メンバーのほとんどは、この手のものが苦手のようであったが、私がスーパーで買ってきて、うまいうまいと飲んでいたところ、道路管理局の人から、休日に自家製のものをアパートまで差し入れてもらったことがある。お互いの文化の違いを尊重して相互理解を深めるには、相手の国の料理を、うまいうまいと食べるのが一番の近道である。

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