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リパッシブで腐食抑制およびグラウト充填不良対策、外ケーブル補強でロス量を補う

滋賀県本庄橋 設計値より最大37%プレストレス量が低下したPC橋を補修補強

 滋賀県高島土木事務所は、平成26年度から高島市安曇川町北船木の安曇川渡河部に架かる本庄橋の補修補強を進めている。昭和45年8月に供用した橋長130㍍(幅員6.8㍍)のPC4径間単純ポステンT桁橋で、橋梁補修工事中に主桁のたわみ(逆キャンバー)を確認し、プレストレスが抜けている可能性があることが推定できた。そのため、非破壊、微破壊検査を行ったところ、グラウト充填の不良や橋軸方向のPC鋼線の腐食、橋軸直角方向(床版横締め)のPC鋼線の腐食、破断(4本)が見つかった。その上で、コア切込みによる残存プレストレス推定手法を用いて、プレストレス量を測定した結果、設計値の3~4割不足していることが推定できたため、アウトケーブル補強などを行うものだ。その現場ルポをお届けする。(井手迫瑞樹)


本庄橋一般図


視認できるほど下がっている桁のキャンバー

 コア切りこみ法で全桁を測定

 現場は、確かに記者が視認できるほど桁のキャンバーが下がっている。そのため現在は通過重量を5㌧に規制している(規制前はTL-14)。橋梁の現状プレストレス量を測定するため、一部の桁(4本)について、25㌧クレーンを使って実荷重載荷試験をし、プレストレスの損失率は10~20%程度という結果が出た。しかし全桁について同様の試験をするにはコスト的に難しかったことから、改めてコア切込み法を用いて全桁を測定した結果、損失率は最大37%に達することが推定された。


視認できるほどキャンバーが下がっている


25㌧クレーンを用いた載荷試験/コア切りこみ法による調査


原因はグラウト充填不良と塩分浸透による腐食および破断か

 上縁定着部近傍だけでなく下フランジ部でも充填不良を確認

 プレストレス損失の原因は、主に施工時のグラウト充填不良と同部分への塩分を含んだ水の侵入によるPCケーブルの腐食および破断が疑われる。凍結防止剤は今でこそ散布されていないが、供用からしばらくは散布していたことが確認されている。また、床版防水は今回の橋梁補修まで敷設されていなかった。PC鋼線の定着は、典型的な上縁定着であることから、構造的に損傷が助長された可能性がある。なお、橋軸方向のPC鋼線のグラウト充填不良は、定着部近傍だけでなく下フランジ部でも確認されている。


床版横締めPCの削孔箇所(左)と同シース内の状況(判定:未充填)


横桁横締めPCの削孔箇所(左)と同シース内の状況(判定:充填不良)


リパッシブ工法で腐食抑制対策&再注入

 対策工は3期に分けて施工されている。1期目は平成26年8月~27年3月にかけて、高欄取替、床版防水、伸縮装置取替え、ひび割れ注入、断面修復、下面増厚などが行われた。こうして床版防水や補修を確実に行った上で、2期目は27年10月~28年7月にかけてリパッシブ工法(劣化、損傷したPC鋼材に対し、亜硝酸リチウム水溶液注入と亜硝酸リチウム添加補修材充てんを行う工法)により、腐食抑制対策及びグラウトの再注入を行い、これ以上残存プレストレス量が低下しないように補修している。


リパッシブ工法の施工① 亜硝酸リチウム水溶液の注入/電位測定


リパッシブ工法の施工② グラウトの注入/充填確認


外ケーブルで全桁を補強

 過剰緊張が生じないように配慮

 現在は8~12月にかけてプレストレスのロス分を補うための外ケーブル補強を行っている。具体的にはSWPR7AL(7×φ15.2)のPCケーブルを各主桁の両側に配置して補強するもの。設置に当たっては、「図面を参考にしつつも現実の鉄筋やシースの位置について、電磁波レーダー法を用いてスクリーニングし、その上で最小限必要な回数、X線撮影した」(ショーボンド建設)上でブラケット用の横締めPC鋼棒を設置するための穿孔を行っている。穿孔についても、当初設計を修正して小径化し、その分アンカーボルトの本数を増やすことで所定の設計荷重をクリアしつつ、内部の鉄筋やPC鋼材をかわせるよう工夫している。


電磁波レーダーによる鉄筋探査/X線による詳細調査


設計に比べてアンカーボルトの径を小さくし、本数を増やすことで設計荷重をクリアしつつ鉄筋などをかわす


 外ケーブルのプレストレス導入に当たっては過緊張によるコンクリートへの悪影響が出ないように設計段階から配慮しているが、実施工に当たっても、桁のたわみ状況などを精密に測定し、過緊張(によるコンクリートの損傷)が生じないよう確実な施工を目指している。


外ケーブル補強図


 ポステンT桁の上縁定着タイプは、全国的に損傷事例が報告されている。プレストレスが大きく抜けている今回のような事例も増加することが予想され、その備えのためPC工学会では9月末に「既設ポストテンション橋のPC鋼材調査および補修・補強指針」を発刊した。本庄橋のケースは、同様の損傷が生じている橋梁の点検・診断・補修補強のテストケースとして参考になりそうだ。

 設計は東洋技研コンサルタント(第1期)、大日本コンサルタント(第2期)、日本構造橋梁研究所オリエンタル白石(第3期)、元請は大栄土木(第1期)、ショーボンド建設(第2期、第3期)。

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