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現場を巡る詳細

美瑛町、南富良野町、新得町、清水町、芽室町を歩く

台風10号 北海道水害現場を巡る

 2016年8月末に東北地方と北海道を襲った台風10号は、巨大な被災の爪痕を通過した各地に遺した。とりわけ北海道は、未曾有の豪雨水害を齎し、被害総額は約2,786億円に達するとも言われている。当サイトでは9月14、15の両日に美瑛町、南富良野町、新得町、(十勝)清水町、芽室町の被災現場を巡った。その際に収めた写真とその後の取材で判明した橋梁の損傷状況をまとめた。(井手迫瑞樹)

 

美瑛は台風9号で3橋が被災

 水楽橋は橋台背面の盛土が流失、両泉橋は1径間が落橋 

 初日は、札幌から南富良野方面に行くことにした。札幌ICは混んでおり江別から道央道に乗り2時間強、旭川鷹栖ICで降り、道道、国道12号を経由して、国道237号をJR富良野線に並行して延々南下し、美瑛町中心街で道道966号十勝岳温泉美瑛線へ曲がり、観光地として名高い「青い池」方面に向かう。事前の各種取材で、そのもっと上流、白金温泉近くの橋梁が損傷を被っていたと聞いたからだ。美瑛町に聞くと、それは水楽橋と両泉橋である。水楽橋(当初は橋名が分からなった)に近づくと、橋台背面がひどく抉られている。橋台本体や桁は無事のようだが、橋台背面は両側とも抉られているようだ。


水楽橋は両岸および橋台背面が大きく抉られていた/下では何かを測定? していた


両泉橋に行くアプローチ道路も土石流か何かでやられていた。仮橋はインフラ用という


両泉橋は一径間分桁が落ちており施設インフラ用の仮橋を設置していた/落ちてしまった桁

 両泉橋は、アプローチの部分も崩落しており仮設桁を設置していた。橋梁本体も1径間分が流失しており、仮設桁を架けていた。美瑛町によると通行用ではなく、水道などインフラを復旧させるためのものだという。同町ではほかに九線橋が橋梁の崩落を招いており、計3橋が損傷した。これらはいずれも台風9号による損傷である。札幌在住の同僚と一緒に取材したが、「これほどとは……」と呻いていた。佐用水害や会津豪雨、九州北部水害などを歩いた身としては、ある意味、見てきた風景であるのだが、こうした水害が稀な北海道在住の人にとってはショッキングな光景であるのだろう。本州の水害と異なると思えるのは「両岸が損傷していた」ことである。東日大震災の津波後の(橋梁両側の盛土が流された)橋梁のような、巨大カルバートの如きその光景は以後、様々な箇所で見ることになる。


南富良野町 太平橋はすでに復旧

 新栄橋は南岸側の盛土が跡形もない

 次に訪れたのが南富良野町である。南富良野町の動脈である国道38号の空知川渡河部に架かる太平橋は橋台背面が流失する被害があったが、記者が訪れた時は既に復旧していた。しかし堤防は無残な姿をさらしており、損傷は左右両岸を襲っていた。


太平橋の橋台洗掘による損傷状況と復旧までの様子(国土交通省発表資料より抜粋)


記者が訪れた9月14日は各種ケーブルの修繕を行っていた



傷痕は様々な形で残っており、復旧に全力が傾けられている


 空知川を上流に進む。大正橋(おそらくPC橋)は高欄が損傷している。両側がやられているので桁を越流したのだろう。木材は桁を超え街路灯の袂まで達している。桁下では(おそらく下部工の沈下や桁の変状が無いかを)測量するための作業が行われていた。さらに上流へ行くとぽつんと鋼桁がある。南富良野町によると新栄橋。橋脚と思ったら橋台だ。もはやどのように盛土があったのか・・・・・・、想像はできるが痕跡は見えない。跡形もないというのがふさわしい光景だ。さらに上流へ。福寿橋は防護柵がほぼ無くなっている。桁そのものは無事で工事用車両などが通過していた。上流の護岸は広範囲にわたって流失している。さらに上流にある北落合橋は、左岸側のアプローチ道路部付近の護岸が損傷しており、それがアプローチ道路部にも影響を与えていた。また高欄も一部損傷していた。南富良野町管理の橋梁で損傷したのはこの4橋であり、幸いに桁流失などの決定的な損壊は招いておらず地覆・高欄が損傷した3橋はその取替のみで済む模様。新栄橋については北海道に相談中としている。


大正橋/流木が大量に引っ掛かっている。その傍らで測量が行われていた


「たいしょうばし」と記されたひらがなの橋名板/昭和63年10月完成/橋台は直接基礎のようである


幾寅川に架かる新栄橋。桁本体はもっていたが、盛土は全て持っていかれてしまった



空知川に架かる福壽橋は高欄が損傷していた


周りの農地は酷い状況/アプローチ道路も舗装が全てはぎ取られており、応急復旧として砂利が敷かれていた


北落合橋。橋台背面の盛土が一部損傷している


橋面上は越流があったことを推定させるように木片が残っていた/対岸の橋台背面も少し抉られていた

 国道38号を新得町方向に進む。その途中、落合付近で鉄道桁上に流木が大量に載っている光景を目にする。良く流されなかったものだ。跨線橋上から見てもその状況はひどい。


JRの橋桁に大量の流木が引っ掛かっている/跨線橋上から見た状況

 新得町に到着するとまず目に付くのがJRの下新得川橋梁だ。右岸側の橋桁が崩落しており線路がぶら下がっている。橋脚があったのか橋台、護岸があったのか、光景からは伺い知れないが、少なくとも右岸側が水や土砂の影響により大きく抉られているのは分かる。上流側に回ってみると橋脚が崩れているのが分かった。おそらく洗掘だろう。但し橋台も護岸ごとやられている。次に向かったのは神社橋である。パンケ新得川を渡河し新得神社と結ぶ同橋は、右岸側橋台背面のアプローチ部の土砂が流失していたが、記者が訪れた時には既に復旧していた。新得町ではこの他に中新得川に架かる西温泉橋と広内川に架かる西五線橋の橋台が沈下している。またペンケオタソイ川に架かっていた西八線橋、楠橋、奥広内橋、パンケ新得川に架かっていた広内9号橋の4橋は流失した。橋台が沈下している2橋については橋台の補修補強または架け替えを検討しているほか、流失した4橋は河川の補修もあることから北海道庁の対応を見極めたうえで対策を検討していく。




下新得川橋梁の損傷状況

 最後に向かったのが清水町である。日没が近かったため、多くは進めず市街地に近いペケレベツ川上流に向かう。すると間もなく綺麗な鋼アーチ橋が見えてきた。石山橋であるが、目視では少なくとも左岸の橋台アプローチ部が損傷していた。右岸側は暗くて見えないが、桁や橋台は無事のようだ。クリアランスの高さが幸いしたのだろう。その下流に位置するペケレベツ橋は左右両岸の橋台背面アプローチ部が護岸ごと流失しているのに加えて、右岸側の1径間が落橋していた。橋脚は無事なので橋台の流失が落橋の原因だろう。ここで初日の取材を終えて、札幌へ帰った。


石山橋



右岸側の1径間が落ちていたペケレベツ橋