道路構造物ジャーナルNET

大規模更新・大規模修繕工事の際の交通規制作業、利用者負担を軽減

NEXCO東日本 移動式防護柵「 Road Zipper® System(ロードジッパーシステム)」を報道陣に公開

公開日:2016.03.29

 東日本高速道路は、大規模更新・大規模修繕事業工事の本格化を念頭において、米国で広く使われている移動式防護柵「 Road Zipper® System」(以下、ロードジッパー)の試行導入を谷和原管理事務所管内のコンクリート片剥落防止工事で開始する。それに先立ち3月29日に谷和原管理事務所内で報道陣に同システムおよび稼働状況を公開した。ロードジッパーの導入は、規制の際の作業者の安全性向上、コンクリート防護柵導入による工事の安全性向上、規制変更作業時間短縮による利用者負担の軽減に大きく寄与しそうだ。

 ロードジッパーは、コンクリート製防護柵の位置を専用の防護柵切替用車両「BTM(Barrier Transfer Machine)」を用いて移動させることができるシステムで米国では1986年以来広く採用実績を有する。


米国での運用例

BTM構造概念図

 同社が現在リースしている車両は、20㍍の範囲のブロック(14ブロック程度、1ブロック当たり重量は約680㌔、形状は高さ810×幅460×延長1,000㍉)を1回で最大5.5㍍の幅シフトすることが可能。これはコンベア・システムという108個のローラー(片側54個)がブロックの上端を把持して持ち上げ、曲線型になっているガイドレーンによりスムーズに移動させ、再配置することができるためだ。従来の交通規制はそもそも人力でカラーコーンをおくため、安全性の面で課題があったほか、人数も4~5人程度、時間は2㌔の規制に20分程度かかっていた。ロードジッパーを採用することにより、人数は車両前後のオペレーター(運転手2人)にできるほか、規制作業も車両の中で行うため安全で、規制に要する時間も「試行の結果によるが、大きく縮減できると見込んでいる」(同社)。また、車輌を支えるタイヤもエアではなくウレタンを充填した特殊なもので運用中のパンクを防いでいる。車両の運転にはコツが必要で、同社では車両を製作している米国・リンゼイ社の指導のもと、既に8名のオペレーターの教育を行っており、今後に備えている。


運転室から見た作業風景

BTM、右端写真はブロック把持部の拡大写真

ガイドレーンの曲線形状がよく分かる

 防護柵ブロックも特殊な形状をしているが、これはコンベア・システムのローラーの把持のし易さを考慮して製作しているため。そのため同ブロックの型枠はリンゼイ社が保持しており、国内で導入が本格化すればその型枠を用いてRCブロックを製作することになる。防護柵の連結部分には、ピンを打ち込んで連続化しており、途中に、車両が出入りできる開口部を作ることも可能。防護柵には一定間隔で鋼製の伸縮可能部分(エクステンション)を連結、伸縮可能幅は±35㌢となっている。衝突荷重は約45㌧で設計しており米国の衝突試験基準「NCHRP350」をクリアしているなど安全性も高い。また車両の激突事故の際の衝撃を和らげるため先端5ブロックは同形状のプラスチック製の水タンクブロックを配置する。


防護柵ブロック/接続部(ピン構造)/エクステンション部分

安全性を考慮し、先端はプラスチック製の水タンクブロックを配置

 東日本高速道路はロードジッパーを半年間リース契約しており、試行の結果を経て本格導入を判断する。将来的には保全工事の際の規制だけでなく、渋滞対策としてリバーシブルレーン的な運用も考慮している。また、NEXCO各社に対しても紹介していく方針。加えて「直轄管理の4車線以上の路線などでも十分活用できるのではないか」(同社)としている。
井手迫瑞樹、2016年3月30日掲載

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