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道示波に基づいて耐震性能を把握、対策を立案

大阪府 田尻スカイブリッジの大規模耐震補強が最盛期

 大阪府岸和田土木事務所は、泉南郡田尻町の臨海部に供用している斜張橋である田尻スカイブリッジ(橋長572m)の橋脚、主塔及び主桁の耐震補強を進めている。とりわけ主径間であるP5~P7は田尻漁港と田尻マリーナの船が往来し、かつP5橋脚付近には釣り堀があるため、施工には細心の注意が必要だ。同耐震補強の設計と斜張橋部(P5~P7)の施工についてレポートをまとめた。(井手迫瑞樹)


主塔は途中で横梁一本を用いたH型構造のRC長方形充実断面
 塔頂部の海面高(H.W.L)は112m
 田尻スカイブリッジ(斜張橋部)は、1994年8月に竣工した橋長337m、全幅26.3m、主塔高(RC構造)93.61mのPC2径間連続斜張橋である。平成2年2月の道路橋示方書に基づいて架設されたもので、主塔は途中で横梁一本を用いたH型構造のRC長方形充実断面であり、主桁は斜めウエブを有する3室PC箱桁断面で桁高は2.5m、これをセミハープ型の2面吊り(片側15段)で吊った構造としている。斜材はノングラウトタイプのHiAmケーブルで、斜材長は26~183m、斜材径は120~155mmのものを採用している。支間長は両支間とも168.5mで、主塔部のP6橋脚高さは24mとなっており、塔頂部の海面高(H.W.L)からの高さは112mに達する。


上から見た航路及び釣り堀

田尻スカイブリッジ(斜張橋部)

道示波が南海トラフ波を卓越
 その結果を踏まえて耐震補強設計
地震動解析

 耐震補強における動的解析は、道路橋示方書Ⅴ耐震設計編の定める地震波(道示波)と同橋で予想される南海トラフ地震動による想定地表面波AT3C(南海トラフ波)の両波によって行った。田尻スカイブリッジの予想される主要振動周期は0.6~1.1秒の間である。

 解析の結果、南海トラフ波では、NS波で側径間のP2、P3およびP9で橋脚のせん断耐力や支承反力が僅かに安全率を下回った。EW波では主塔の横梁、P3の段落とし部、P5、P7および側径間のP9橋脚でせん断耐力が安全率を大きく下回った。


 一方、道示波は、まず橋軸加振結果では、タイプⅠ地震動の時点で、主径間のP5とP7を除く橋脚の曲げ耐力が安全率を大きく下回り、段落とし部においてもP3が安全率を著しく下回り、P2、P4、P9も大きく、P8は若干下回った。せん断耐力は曲げ耐力と同様、P5、P7以外はNGとなった。支承反力はA2も含めすべての下部工がNGとなった。主塔部においても、H型主塔の左右中間部がタイプⅠ、Ⅱ両方でNGとなった。

 橋軸直角方向加振でも左塔柱の中間部、右塔柱の中間及び下端部、P2およびP3橋脚で曲げ耐力が不足していることが確認された。また、P3、P4、P5の段落とし部でも安全率を下回り、せん断耐力に至っては、主塔横梁部、P1、P2、P3、P5、P6、P7、P9で不足しており、とりわけP5では著しく不足していた。

 道示波の方がより橋梁の損傷が大きくなることが分かったことから、その結果を踏まえた耐震補強設計を行った。


橋脚は全てRC巻立て補強
 P7はさらにアラミド繊維シート補強を重ねる

耐震補強設計

 橋脚部(P5、P6、P7)は、全てRC巻立てによる補強を行う。P6橋脚は水中にあるため、鋼矢板で締切り、水を抜いてドライにした後に、500mm厚のRC巻立てを施す。他の橋脚は側径間も含めて250mm厚のRC巻立て補強を施している。



 固定支承であるP7橋脚については、さらにアラミド繊維シート700g目付を3層巻立てる。側径間部も含めてすべての橋脚支承部に水平力を分担するためせん断ストッパーを配置する。側径間(A1~P5、P7~A2)は、800kN~1,400kNのせん断ストッパーを桁下に片面当たり6基ずつ配置する。P5、P7橋脚の斜張橋側は、斜張橋の負反力にも対応するため、桁下に5,000kN×5基、桁の左右に3,000kN×2基のせん断ストッパーを配置する。今回、使用するショーボンド建設製のせん断ストッパーのラインナップは、最大3,000kNであり、5,000kNのものは特注品として製作する。

主桁下面は主塔両側88.5mに繊維シート補強
 主塔は最大で炭素繊維シート補強8層+アラミド繊維シート補強2層
 主桁は主塔から両側88.5mの区間について桁下面に繊維シートを貼付けて補強する。曲げに対しては炭素繊維シート200g目付1層~300g目付2層、せん断に対してはアラミド繊維シート235g目付1層~700g目付2層を貼付けた。

 主塔は、まず下端部においては曲げ耐力を向上させるため、基部から7mの高さまで四面に炭素繊維シート200g目付を鉛直に貼り、さらに基部から16mの高さまで350~700g目付のアラミド繊維シートを水平に巻立てた。

主塔下端部の繊維シート補強

 次いで横梁については、せん断対策として、700g目付のアラミド繊維シート4層を縦に巻立てた。さらに横梁と接続する左右の塔柱45m部分については曲げ及びせん断耐力を増やすため、最大で600g目付8層の炭素繊維シートを鉛直方向に貼り、さらに重なるように水平方向には、最大で525g目付2層のアラミド繊維シートを貼付けた。




主塔横梁付近の繊維シート補強施工状況