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累積変位を確認できる記録計を備えた二重鋼管座屈拘束ブレースを採用

鋼方杖ラーメンを擁する 横浜横須賀道路 第二田浦高架橋の制震・免震的補強

公開日:2020.09.16

足場は全て桁上から部材を運んで設置
 軌条レールを通し天井クレーンを付けて資材を撤去及び設置

実施工
 施工手順はまず、上部工の免震支承への取替え、その後に横支材の取替、ブレース材の設置を行い、最後にPCケーブルによる方杖ラーメン橋脚基部への負反力対策ケーブルの設置と落橋防止装置(ケーブル)を設置して完了させた。その後に塗替えを施し、検査路を設置した。作業員は最大で1日50人が働いた。
 まず、足場だが、桁下が谷間であるため下からの施工は難しい。桁だけでなく、橋脚も含めて全て桁上から部材を運んでの設置となった。特に方杖ラーメン橋脚の足場は、立体的に斜めであり、横支材もあることから複雑な形状となっている。
 免震支承は、ジャッキを設置した上で、ワイヤーソーとWJ(ハンドガン)を使って既設モルタルを撤去し、新たなSPR-Sを設置した。


支承取替①ジャッキアップしてワイヤーソーで既設支承モルタルを切断

支承取替②既設支承を撤去

支承取替③WJによる箱抜き施工

支承取替④支承の据え付け

支承取替⑤溶接を完了し新しく取替えた状況

 桁への落橋防止装置取付後、横支材を撤去、再設置しつつ隔間に二重鋼管座屈補剛ブレースを設置していく。資材の撤去および設置は、箱桁と箱桁のど真ん中に横桁で把持する形で軌条レールを通し、そこに天井クレーンを付けて、部材の運搬・架設を行った。クレーンの吊能力は2.8tであるため、撤去も新設も1部材2.5tになる様に設計した。


箱桁と箱桁のど真ん中に横桁で把持する形で軌条レールを通し、そこに天井クレーンを付けて、部材の運搬・架設を行った

既設塗膜を剥離剤で除去し、既設横支材は上下水平に半分に切断
 上から横支材を設置し、ブレース材を二、四股設置していく

 既設横支材は、上下水平に半分に切断した。吊り点が桁間中央しかなく、左右に垂直切断すると吊り点が斜めになってしまうので不安定になるため、真ん中でクレーンの位置を変えずに吊り上げることができる水平切断を採用した。4点支持で天秤などは使用していない。切断は一般的なガス切断で行っている。切断前には切断面の塗料を剥離剤で事前に除去した上で施工した。塗装については、外面に鉛を含有した塗料、内面もタールエポキシを含んだ塗料を使っており、溶接による熱が入る前に剥がす必要があった。また、塗膜除去時には必要な防護服などを着て施工した。切断は吊った状態でボルトを緩めて施工し、最後にボルトを完全に撤去して吊りこんだ。最下部は他の横支材と異なり、脚と横支材が溶接構造であるため、同じように吊った状態で最初に水平切断し、次に縦方向に半分ずつ切るような形で切断、吊撤去した。


撤去前の横支材/橋脚に足場を付けるのも大変だ

まずボルト及び添接部を撤去し

切断面の塗装を塗膜剥離剤で除去後、切断:撤去していく

 新設横支材も同じように吊って設置する。箱桁ほど重くないため、上下切断することなく一括架設が可能。長さは最大4mほどしかなく、不安定にはならない。
 切断・撤去すると一時的に横支材が少ない状態になるが、仮補強材などは設置しなかった。常時荷重やL1程度であれば、1本撤去したくらいでは、影響がほとんどないことを事前解析で確かめた。
 撤去・架設は上から順に1本ずつ施工した。部材はその都度本締めを行い固めた上で、次の横支材の撤去・架設作業に入るフローとした。二重鋼管座屈補剛ブレースも上から設置していく。最初に二股付けて、その次は上下に二股ずつ、四股つける手順だ(下ステップ図)。二重鋼管座屈補剛ブレースは横支材および脚にガセットを新しく設けて、そこに高力ボルトで添接した。


切断・架設の手順

横支材仕口架設状況

横支材架設状況




二重鋼管座屈補剛ブレースの設置状況(一番下の写真のみ井手迫瑞樹撮影)

 それが完了した後に、基部のPCケーブルを取り付けた。


PCケーブルのためのブラケット設置前に鋼材表面の既設塗膜を除去する。鉛を含んでいるため、
塗膜剥離剤とブリストルブラスターを用いた

橋脚部へのブラケット設置状況


下部工側へのブラケット設置状況

PCケーブル取付状況

同設置完了状況

 その後、方杖ラーメン橋脚4基約1,000㎡を塗り替えた。塗膜剥離剤で既存塗膜除去後、ブラストにより素地調整し、塗り替えた(Rc-Ⅰ相当、NEXCO仕様のc-3,g-3)。

鈑桁部の耐震補強・検査路
 鈑桁部については、遊間が狭く、L2地震時には桁と橋台が衝突する可能性があるため、鋼桁を僅かに切断(100mm)して、遊間を広げ、その間に2,000kN×4基の油圧ダンパー(川金コアテック製)を設置した。
 方杖ラーメンは、図のように橋脚部及び下部支承や橋脚中間部に検査路を新たに設けている。

 元請はJFEエンジニアリング。一次下請は丸和工業(撤去・架設)、協立メンテナンス(足場)、日塗(塗装)、東洋機械(はつり)。工期は2021年6月末。


現在の進捗状況(井手迫瑞樹撮影)
(2020年9月16日掲載)

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